シナリオ 岸岡ルート 7月25日(水曜日)・その1
ためにならない
芽衣子「………」
真緒「ん……美味しいか?」
芽衣子「………」
夏休み二日目。
岸岡は相変らずで、朝食も一人で食べようとしない。
そう、ぼくの補助がなければ食事をしないという困った状況。
真緒「ほら、米粒ついてるぞ」
芽衣子「……ん」
和「やぁおはよう」
莉緒「また二人で……」
芽衣子「………」
莉緒たちが来るとぼくに抱きついてくる。
というのが、一つの行動パターンになりつつあった。
真緒「おはよう二人とも」
和「まだ岸岡さんは治らないのかい」
真緒「まぁ、一日やそこらではな」
莉緒「ちょっと甘いんじゃないの?」
真緒「岸岡にか?」
莉緒「そうよ。よく分からないけど岸岡芽衣子がそうなったのはさ、別に真緒くんのせいじゃないんでしょ?」
真緒「まぁ、そうだと思うけど」
莉緒「ならそこまでベタベタする必要はないわ!
むしろだめよ!」
真緒「そうは言っても、ほっとけないだろ?」
和「いや、寺井さんの言うとおりかもしれないぜ」
真緒「阿部高まで……」
和「時には突き放す事も大事だ」
真緒「………」
莉緒「そうよ! 岸岡芽衣子のためにならないじゃない!」
真緒「莉緒」
和「ふふ、色々言ってはいるが心配してるんだな」
莉緒「ち、違うわよ! あたしはこんな状態で勝ったって嬉しくないだけなんだから」
真緒「………」
たしかに……二人の言うとおりかもしれない。
ほっとけないけど、少し距離を置いて様子を見る事も必要だ。
先の研修の事もあるし、慣らすという意味でもここは──
真緒「そうだな、そうかもしれないな」
莉緒「ふん、そうよ! あたしのいうとおりよ」
和「まぁ、俺たちに任せたまえよ」
真緒「ああ、ちょうど今日は学園に行かなきゃいけないから、
その間を頼めるか?」
和「ああ」
莉緒「ええ」
真緒「岸岡、ちょっと学園に行ってくるからその間留守番してて」
芽衣子「………」
真緒「………」
強くシャツを握り締めてくるのは、嫌だからだろう。
真緒「……岸岡、すぐ帰るから」
芽衣子「………」
莉緒「………」
和「困ったものだな」
莉緒「真緒くん、いつまでもそうしてちゃ踏ん切りがつかないわよ」
真緒「わ、分かってるけどさ」
芽衣子「………」
真緒(ぐう……)
可愛そうで引き剥がせない……
でも、それじゃいけない。
ここは心を鬼にして──
真緒「岸岡、すまん!」
芽衣子「あ……」
力ずくでその手を引き離すと、ぼくは走って食堂を出た。
後は頼むぞ莉緒、阿部高──
最終更新:2010年07月17日 00:08