シナリオ 岸岡ルート 7月25日(水曜日)・その4
夜の訪問者
寮へ帰るやいなや、この寮は魔王と僕の愛の巣じゃないわよ!
と、ぼくや寮長ですら止められない程莉緒たちが怒り狂い不満を爆発させた。
そしてぼくに、一人で部屋にこもってろと言う始末。
夕食も部屋で一人、それ以外もなるべく部屋から出ない事。
もちろん部屋には鍵をかけてじっとしてろ、と。
莉緒たち四人の怒涛の攻撃に成す術なく、
ぼくは一人で部屋で過ごす事になった。
岸岡が気になって出て行こうと何度も考えたが、
たぶん向こうから部屋に来るだろうと思いジッと過ごす。
でも、岸岡はこなかった。
夕食の時間も、それを過ぎても──
ぼくがいなくても落ち着いているんだと思って安心する反面、
どこか寂しい気持ちにもなる。
いや、良い事なんだからこんな事を思っちゃいけない。
これで元に戻ったんなら喜ぶ事だ、寂しいなんて思っちゃいけない……
真緒(今日は……もう寝よう)
ベッドに横になった瞬間だった。
もしや、岸岡だろうか?
真緒「はい」
芽衣子「まおさまぁ」
真緒(やっぱり)
芽衣子「ねたのですか」
真緒「………」
ドアノブを回す音、ドアを叩く音が交互に繰り返され、次第に強引になっていく。
芽衣子「ま、おさま? まおさま! まおさま!」
※効果音,何度か繰り返して異常性を出す
真緒(これは……出るべきなのか)
芽衣子「いっしょ、いっしょ!」
真緒(………)
泣きながらドアを叩いている……
もう駄目だ、ほっとけるわけない。
真緒「岸岡……」
芽衣子「ああ……あぁあああ」
ぼくを見た瞬間飛びついてくる。
子どもをあやすように抱きしめると、泣き声も小さくなっていった。
落ちついてくれた……んだろうな。
やっぱり、ぼくがいないと……
莉緒「あ」
真緒「莉緒」
莉緒「声がしたと思って来てみたらやっぱり」
せえら「やれやれですわ」
奏「メーコ」
和「だめだったのか」
寮長「………」
真緒「うん、すまない。開けてしまった」
芽衣子「………」
せえら「それはしょうがありませんけど、
もう寝る所でしたでしょ?」
真緒「ああ、でも」
莉緒「岸岡芽衣子、行くわよ。
真緒くんじゃ寝れないじゃない」
芽衣子「………」
和「さすがに夜は一緒にはいられないんだぜ」
奏「いこうよメイコ」
寮長「………」
真緒「岸岡、今日は皆とな?」
芽衣子「……いや」
真緒「そう言わずにさ」
和「ん? ちょっと待ちたまえよ」
莉緒「どうしたのよ?」
和「今日は、と言わなかったかい?」
真緒「え? い、言ってないぞ??」
莉緒「ま、まさか真緒くん!」
真緒「違う違う!」
芽衣子「きょうもいっしょ」
せえら「な!?」
芽衣子「まおさまとねる」
奏「え? メーコとセンセ一緒に寝てたの?」
真緒(ば、ばれた……)
莉緒「真緒くん……説明しなさいよ」
せえら「本当なんですの?」
真緒「それは……」
この二日間一緒にいた事を莉緒たちに話した。
神に誓って何もしていない事と、
駄目だと分かっていながらもそうしてしまった事を話す。
岸岡の様子が異常だと分かっているせいか、
特に騒ぐ事もなく聞いてくれた。
和「まぁ、岸岡さんがこれじゃあな」
奏「うん……そこで見捨てるセンセもセンセじゃないし」
和「ああ、良い男じゃないな」
せえら「まぁ……たしかにそうですわね」
莉緒「で、でも、黙ってたのが許せないのよ!」
寮長「そうですよ先生、言ってくれれば私たちも協力したのに」
和「ああ、岸岡さんは大事な仲間だからな」
真緒「そうだな。話しておくべきだったな、ごめん」
奏「ひひ、リオが怖くて話せなかったんでしょ?」
真緒「い、いや、そういうわけじゃない……事もないのかな」
莉緒「なによ? 怒るに決まってるでしょ?」
せえら「まったく……コソコソするなですわ」
真緒「すまない……」
和「まぁ、良かったじゃないか。
早いうちに話せてさ」
真緒「ああ、そうだな、ありがとう」
奏「それで、今日はどうするの?」
真緒「どうするって、今日からは誰かと一緒に」
芽衣子「いや、いや」
寮長「あらあら」
せえら「まったく……」
和「困ったな、どうするんだキミ?」
真緒「どうしよう」
莉緒「簡単よ! みんな真緒くんの部屋で寝ればいいのよ!」
真緒「み、みんなでって」
せえら「あら、良い案ですわね」
奏「アタシも賛成!」
和「ふふ、面白そうじゃないか。寮長はどうだい?」
寮長「ええ、私も賛成ですよ」
和「決まりだな」
奏「それじゃアタシ布団もってくるね!
センセの隣はアタシだからね! 早いもの勝ちだから!」
せえら「ちょ、ちょっとカナちゃん! 待つのですわ!」
莉緒「奏! 馬鹿なことはさせないわよ!」
真緒「………」
芽衣子「………」
和「それじゃ俺も取りにいくかな」
真緒「ああ」
寮長「先生、これからは隠さずに言って下さいね」
真緒「うん、ごめん。ばれたらまずいだろうってのもあったんだと思う」
寮長「みんな先生の事を信じてますから、大丈夫です」
真緒「ああ、もう隠したりしないよ」
寮長「ええ、それでは私も」
真緒「ああ」
寮長の言うとおり、ぼくが莉緒たちをもっと信じて打ち明けていれば良かったな。
あんな奴等だけど、本当は良い子だってよく分かってたはずなのに。
ぼくもまだまだだ……
でもここで秘密が消えて良かった。
岸岡がこんな状態だから何も起きないだろうし起こす気もないけど、
二人の夜が長く続けばどうなるか分からないってのがぼくの本音だ。
何だかんだ言って、美少女だからなぁ……
真緒「岸岡、今日は寝れるかな?」
芽衣子「………」
真緒「ま、先に入っておこ」
全員ぼくの部屋で、か。
とんでもない密度になりそうだ。
最終更新:2010年07月17日 00:16