シナリオ 岸岡ルート 7月29日(金曜日)・その1
使い魔の行方
芽衣子「……緒様、真緒様」
真緒「……ん」
芽衣子「朝です真緒様」
真緒「あ、もう」
芽衣子「そろそろお仕事なのでは?」
真緒「うん、起こしてくれてありがと」
芽衣子「いえ……」
真緒「ああ、そうだ」
芽衣子「はい」
何事もなく朝を迎えた研修二日目の今日は、午前だけで終わる予定だ。
せっかくだから、お昼からどこか観光でもしたいと考えてる。
真緒「今日さ、午前中で終わるんだよ」
芽衣子「本当ですか?」
真緒「うん、だからどこか観光しようかなって」
芽衣子「はい! 芽衣子は喜んでお供致します」
真緒「うん、それじゃ昼には戻るからさ」
芽衣子「はい、準備して魔王様のお帰りをお待ちしております」
真緒「うん、それじゃ行ってくるよ」
あっという間に研修終了。
様々な問題を議論したり講義を聴いたりして、短い時間ながらも充実した時間だった。
その中でアニマルセラピーの話になった時、
ぼくはすぐに岸岡とオルトロスを思いだした。
動物を飼う事による癒し。
その効果は大きく、様々な場面で取り入れられているという。
そして、ペットというのは小さな家族であるという事。
岸岡にとってのオルトロスはきっとそうだったんだと思う。
だからこそ、あんな風に突然なったんだと。
……結局、色々ばたばたしてオルトロスを探してやれていない。
猫は死の間際にいなくなるというが、オルトロスもそうなんだろうか。
違っていてくれればいいんだけど……
真緒「捜索……莉緒たちに頼んでみるか」
ぼくは携帯を取り出して寮にかけた。
莉緒「はい、私よ」
真緒「お、莉緒か」
莉緒「だ、誰よ?」
真緒「酷いな、ぼくだよ」
莉緒「分かってるわよ」
真緒「なんだ、分かってたのか」
真緒「みんなは元気か?」
莉緒「ええ、元気だと思うわ」
真緒「そうか」
莉緒「なによ? なんか用があるんじゃないの?」
真緒「ああ、ちょっとオルトロスを探して欲しいんだ」
莉緒「………」
真緒「色々あって探せてないんだ、だから莉緒たちにお願いを」
莉緒「あの猫はね、猫じゃないの」
真緒「猫じゃないって?」
莉緒「猫の姿を借りた猛獣なのよ!」
真緒「………」
莉緒「今頃冥界で力をつけているに違いないわ……」
真緒「………」
莉緒「探さなくてもあの猫は必ず戻ってくるわよ。
私には分かるの」
真緒「そう、かな」
莉緒「そうよ。でも、あの猫も真緒くんと同じだから探してあげてもいいわよ」
真緒「ん? ぼくと同じ?」
莉緒「そう、あの猫も乗っ取られてるの。
本当は普通の猫なんだけどね、岸岡芽衣子とあなたの力によって魔獣が住み着いてしまったの」
真緒「……そう」
莉緒「時々感じてたわ。あの猫が私に助けを送っていたのをね。
潤んだ瞳で私をジッと見てね」
真緒「ま、まぁ、とにかく探してくれるんだな?」
莉緒「ええ、みんなに言って一緒に探すわよ」
真緒「そうか、ありがとうな」
莉緒「勘違いしないで、あの猫ちゃんのためよ」
真緒「いや、それでも嬉しいよ」
莉緒「……も、もう切るわよ!」
真緒「あ」
電話が切れた。
相変らずの莉緒だったけど、とにかく探してくれるみたいで良かった。
後は見つかってくれる事を祈るだけだ。
さてと、ぼくは旅館に帰ろう。
最終更新:2010年07月17日 00:39