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シナリオ 7月1日(日曜日)・その4

 ギター神


寮長「着きましたよ。ここが私たちが住んでいる寮です」[plc]

真緒「こ、ここ?」[plc]

とても寮だと思えない。[lr]
一般的な寮とはかけ離れてる。[plc]

お洒落な洋館、外国の家。[lr]
それもお金持ちの家って感じだ。[lr]
さすがお嬢様学園……[plc]

寮長「それでは案内します」[plc]

真緒「うん、お願いするよ」[plc]

真緒「ん?」[plc]

寮長「どうしました?」[plc]

真緒「今なにか聞こえたんだ」[plc]

真緒「何だろ? ギターの音かな?」[plc]

寮長「ふふ、きっと北上さんですね」[plc]

寮長「屋上にいると思いますから、そこへ先に行きましょうか?」[plc]

真緒「じゃ、お願いするよ」[plc]

聞こえてきたギターの音。[lr]
あの音色は間違いなくエレキギター。[plc]

すぐに分かるのは、ぼくもギターを弾いているからだ。[plc]

だけど、女の子でエレキか。[lr]
ロックが好きなら仲良くなれそうだな。[plc]

さてさて、どんな子なんだろう。[lr]
イメージ的には、背が高くてクールな子とか?[lr]
それともワイルドな感じかな?[plc]

とにかく、カッコイイ感じだろうな。[lr]
楽しみだけどやっぱり不安でもある。[lr]
とっつきにくい子じゃなければいいけど……[plc]


中に入ってまた驚いてしまう。[lr]
見るからに質の良さそうなインテリアや家具。[lr]
たぶん、高いんだろうな。[plc]

寮というより……高級ホテルだ。[plc]

寮長「先生?」[plc]

見とれてしまって、足が止まっていたようだ。[plc]

真緒「あ、ああ、ごめんごめん」[plc]

寮長「では、行きましょうか」[plc]



寮長
「ここが屋上です。北上さんは……」[plc]

真緒「あれ? いないのかな? なんか喋ってる声も聞こえてたけど」[plc]

寮長「あ! いました」[plc]

寮長「北上さーん! 北上さーん!」[plc]

隅の方でゴソゴソと動いている人がいる。[lr]
あの子が北上って子か。[plc]

寮長「北上さーん!」[plc]

寮長「………」[plc]

真緒「聞こえてないのかな」[plc]

寮長「ええ、聞こえてないみたいですね。[lr]
ヘッドフォンでもしているのかもしれません」[plc]

寮長「先生、私呼んできますから待ってて下さい」[plc]

真緒「すぐそこだからぼくも──」[plc]

言い終わる前に寮長は背中を見せていた。[plc]
ついて行こうと思ったけど、せっかく呼んできてくれてるわけだから、
大人しく待ってよう。[plc]

真緒「………」[plc]

寮長が話しているのが見える。[lr]
北上って子は寮長と重なっているせいで、ここからだとよく見えない。[plc]

背はそんなに高そうじゃないな……[lr]
でもまぁ、ロックな子だろう。[plc]

そう思うのはあのギターの音色だ。[plc]
本格的な音っていうか、良いエフェクターとアンプを使ってるのは間違いない。[plc]
それに一人屋上で練習するって所が、なんというかロックだ。[plc]

真緒「お、来たみたいだ」[plc]

寮長「お待たせしました。こちらが北上奏[r](きたがみ かなで)さんです」[plc]

真緒「え? この子?」[plc]

寮長「はい、そうですけど?」[plc]

真緒(あっれ……)[plc]

寮長「あら? 北上さんも知り合いでした?」[plc]

真緒「い、いや、知り合いじゃないけど……」[plc]

奏「寮長、この人が新しいセンセなんだ?」[plc]

寮長「そうですよ北上さん」[plc]

真緒(ちっちゃい子だな……)[plc]

背が低くて子どもっぽい。[lr]
ぼくの第一印象だ。[lr]
想像してたのとだいぶ違う。[plc]

見た感じ、ロックなんてまったく聞かないって感じだよな。[plc]
そんな子がさっきのあの音を本当に出していたんだろうか。[plc]

真緒「えっと、初めまして。[l]今日から寮の監督と学園の教師になりました要真緒です。よろしくね」[plc]

真緒(でもまぁ)[plc]

真緒(ちっちゃいから可愛いな。子犬みたいでさ)[plc]

奏「初めましてセンセ!」[plc]

奏「アタシは北上・アナーキー・イン・ザ・奏。[lr]
未来の世界的大ロック歌手さ!」[plc]


真緒「……え?」[plc]

奏「え? じゃないよ」[plc]

奏「アタシは北上・アナーキー・イン・ザ・奏。[lr]
センセ、覚えた?」[plc]

……こ、これは笑うとこ?[lr]
ギャグで言ってる?[lr]
いや、でもこの子も中二病らしいし……[plc]

北上からは、恥ずかしげな様子は微塵も感じられない。[plc]
それどころか……自信満々だ。[plc]

真緒「北上……、アナーキー、インザ奏……」[plc]

奏「そ。[l]アタシのミドルネームだし」[plc]

真緒「え、ええと……」[plc]

寮長「………」[plc]

寮長に助けを求めるが、無言のまま。[lr]
頑張れと目で言われてる気がする。[plc]

そうだな……[lr]
ぼくはこれからこの子たちを指導していかなきゃならないわけだ。[plc]

まずは……成立する会話をしてみるべきか。[plc]

真緒「えっと、もしかしてハーフだったりするのかな?」[plc]

奏「違うよ。でもアタシの故郷はイギリスと日本だよ」[plc]

どうみてもハーフには見えない。[lr]
って事は──[plc]

真緒「第二の故郷って感じかな?」[plc]

奏「センセなにいってるの?」[plc]

奏「故郷に一番も二番もないし。
ふたつともアタシの故郷だよ」[plc]

真緒「あ、そうなんだ。それはごめん」[plc]

奏「でも将来ビッグになった時どうしよう。[lr]
プロフィールに書かないといけないし」[plc]

奏「う~ん……」[plc]

真緒(……気を取り直して)[plc]

真緒「そっか、じゃあイギリスが好きなんだね」[plc]

奏「うん! だって、アタシの尊敬するバンドがイギリス出身だしね」

真緒「へぇ~やっぱり音楽好きなんだ」[plc]

奏「え? センセ、どうして分かったの?」[plc]

真緒「ギターの音が聞こえてきたからここへ連れてきてもらったんだ。[l]で、音楽やってる子なんだろうなぁって思って」[plc]

奏「センセ、もしかして音楽好き?」[plc]

真緒「好きだよ。イギリスの音楽もよく聞いてるかな」[plc]

奏「へぇ~。見所あるねセンセ![lr]
ね、寮長もそう思うでしょ?」[plc]

寮長「男の先生ですからね。ロックに理解があるかもしれませんね」[plc]

真緒「うん、ロックは好きだな」[plc]l

奏「ねね、センセ」[plc]

真緒「ん?」[plc]

奏「あのさ、やっぱりブリティッシュロックやパンクは最高だよね!」[plc]

奏「センセもさ、そう思うでしょ?」[plc]

真緒「そうだな……」[plc]


「ああ、最高だね」 ・思うへ
「全然思わない」 ・下へ↓





思わない



真緒「う~ん、先生はロックと言えばアメリカかな? 
イギリスはポップな感じがするんだよね~」[plc]

奏「………」[plc]

北上の顔が一変した。[lr]
敵意剥き出しの表情を隠そうともせず、ぼくをにらみつけている。[plc]

真緒「あ、いや、イギリスロックも素晴らしいよ。[l]
ただ、先生はアメリカのロックがいいってだけでさ」[plc]

奏「………」[plc]

真緒「あ、あのね。別にイギリスの音楽を否定してるわけじゃないんだよ?」[plc]

にらみつけてくる北上に慌てて言葉を付け足すが、
それでもまだ無言のままだ。[plc]

真緒(う、にらまれてるよ……)[plc]

頭をかきながら次の言葉を必死で考える。[plc]

でも、出てこない。[lr]
……困ったな。[plc]

奏「アメリカって悪い国だし……」[plc]

真緒「悪い国? 音楽の話だよね?」[plc]

奏「そんなことはもーいいのっ!![lr]それよりセンセ、これからアタシがロックについて教えてあげるから」[plc]

真緒「ロックについて?」[plc]

奏「そ。いっぱい教えたげる。[lr]未来のスターから教えて貰えるなんて、センセは超ラッキーだよ」[plc]

真緒「そ、そうだね。じゃあ時間ある時にでも教えて貰おうかな、はは」

何を教えてくれるのか分からないが、捕まったら長そうだ。[plc]
ここは、適当に返事しておくのが正解だよな。[plc]

奏「今からでもいいよ」[plc]

真緒「ええっ!? 今から?」[plc]

奏「そ。今から」[plc]

真緒「今からは無理だよ……ロックとかの勉強よりする事あるからさ。
また今度でいいかな」[plc]

奏「センセ今、ロックなんかって言った…?」[plc]

笑顔に戻ったかと思うと、またすぐ怒りだす。
ほんと、子どもっぽいというか……[plc]

真緒「え、い、いや言ってないよ」[plc]

奏「嘘つき! ぜったい言ったよ!![lr]寮長も聞いてたよね?」[plc]

寮長「え、どうでしょう……」[plc]

奏「……やっぱり汚れてしまった大人にはロックの良さが分からないんだね」[plc]

奏「でも安心してねセンセ、アタシがちゃんと教えてあげるから」[plc]

奏「前のセンセには無理だったから、今度のセンセはちゃんと教えてあげる気だったし」[plc]

真緒「何かとは言ってないってば、落ち着こうな」[plc]

奏「また嘘つくの?」[plc]

真緒「いや、嘘じゃ……」[plc]

奏「………」[plc]

真緒(またにらまれてるよ……)[plc]

真緒「………」[plc]

奏「………」[plc]

奏「嘘つくなんてロックじゃないし……」[plc]

真緒「そ、そうだね。そうだよね、悪かったよ」[plc]

奏「………」[plc]


@jump target="*合流地点"へ





思う



真緒「そうだね。歴史に残るアーティストもたくさんいるしね」[plc]

奏「センセは話が分かるね!」[plc]

真緒「はは、ありがとう」[plc]

奏「それでさー、センセはどのバンドが好きなの?」[plc]

真緒「ええっ?」[plc]

奏「当然あるよね?」[plc]

英国バンドですぐに思いつくのが一つあるんだけど、[l]
それはこの子のいうロックやパンクとは違う気がする。[plc]

ぼくはロックだと思ってるけど……[lr]
まぁいいや、言ってみるか。[plc]

真緒「うん、ビービルズが好きだな。教科書にも載る位だしね」[plc]

真緒「何より、音楽性が多彩で……」[plc]

真緒「って、あれ? どうかした?」[plc]

奏「ビービル……ズって……」[plc]

あっれ? そんなに落胆する程の事?[plc]

真緒「ほ、ほら、その後の音楽シーンにも多大な影響を与えたって点でもさ」[plc]

奏「………」[plc]

真緒「あ、あのね。別にイギリスの音楽を否定してるわけじゃないんだよ?」[plc]

無言でにらみつけてくる北上に慌てて言葉を付け足すが、
それでもまだ納得していないようだ。[plc]

奏「………」[plc]

真緒(う、にらまれてるよ……)[plc]

頭をかきながら次の言葉を必死で考える。[plc]

でも、出てこない。[lr]
……困ったな。[plc]

真緒「……あのさ」[plc]

奏「………」[plc]

奏「教科書に載るってロックじゃないし……」[plc]

真緒「そ、そうだね。そうだよね」[plc]

奏「………」[plc]

奏「でも、見込みあるし」[plc]

真緒「え?」[plc]

奏「センセ、これからアタシがロックについて教えてあげるから!」[plc]

お? いきなり機嫌が良くなったぞ。[plc]

真緒「ロックについて?」[plc]

奏「そ、いっぱい教えたげる」[plc]

奏「未来のスターから教えて貰えるなんて、センセは超ラッキーだよ」[plc]

真緒「そ、そうだね。[l]じゃあ時間ある時にでも教えて貰おうかな、はは」[plc]

何を教えてくれるのか分からないが、捕まったら長そうだ。[plc]
ここは、適当に返事しておくのが正解だよな。[plc]

奏「今からでもいいよ」[plc]

真緒「ええっ!? 今から?」[plc]

奏「そ。今から」[plc]

真緒「今からは無理だよ……まだ他の子とも会ってないしさ」[plc]

奏「いいじゃん。どうせ後で会うんだし」[plc]

真緒
「い、いや、それはそうだけど。[l]とにかくこれから寮に住むわけだしさ、また今度でいいかな?」[plc]

奏「………」[plc]

笑顔に戻ったかと思うと、またにらみだす。[lr]
ほんと、子どもっぽいというか……[plc]

真緒「今じゃないと駄目なの……かな?」[plc]

奏「センセ……ロックが好きって嘘なんでしょ?」[plc]

真緒「そ、そんな事ないよ。好きだって」[plc]

奏「………」[plc]




合流地点





何だか妙な空気になった気がする。[lr]
会話も止まってしまった。[plc]

とにかく話題を変えなきゃ。[l][r]
音楽の話は止めにして、え~と、え~と[plc]

奏「………」[plc]

真緒「えっと」[plc]

寮長「北上さんは屋上で何をしていたんです?」[plc]

見かねた寮長が助けをいれてくれる。[lr]
我ながら情けない。[plc]

奏「ん。ライブん時のMCの練習してた」[plc]

寮長「そうですか」[plc]

奏「それでさー色々考えたんだけど、どれが良いか迷ってた所なんだ。
どれがいいかなぁ」[plc]

真緒「へー、どういう感じのMCなの?」[plc]

奏「んと、『お前ら愛してるぜ』ってのと、[lr]
『ロックしてるかーい?』ってのなんだけど」[plc]

真緒「はは……」[plc]

奏「でも、これじゃアタシのメッセージを伝えてないんだよね」[plc]

奏「だからさ」[plc]

奏「『アタシらのロックで世界を変えてやろうぜ』の方がいいかなって」

真緒「あ、熱いメッセージだね……」[plc]

奏「センセは話が分かるね」[plc]

奏「マジ、アタシの歌でこの腐った世の中を変えたいし」[plc]

真緒「………」[plc]

奏「アタシなら絶対できると思うんだ」[plc]

真緒「……そ、そうなんだ。じゃあ、歌が上手なんだね」[plc]

奏「流行の歌なんかよりずっと魂こもってるよ」[plc]

真緒「へぇ……自信あるんだね。ちょっと聞いてみたいな」[plc]

寮長「先生!」[plc]

奏「へへ、しょうがないなぁ。[lr]
センセがそこまで言うなら歌ったげる」[plc]

真緒「うん、聞かせて」[plc]

奏「オリジナルはまだ作ってないから、アタシの尊敬するバンドの曲でいい?」[plc]

真緒「もちろん」[plc]

奏「じゃ、歌うね」[plc]

目を閉じて大きく深呼吸する北上。[lr]
あそこまで言うからにはそれなりに上手なんだろう。
楽しみだ。[plc]

ふと寮長を見ると、何だか怯えているように見えた。[l]
どうしたんだろ?[plc]

奏「よーし! じゃ、いくよ!」[plc]

真緒「あ、うん」[plc]

北上の口が開いたその時──[plc]

真緒「え?」[plc]

突然視界が闇につつまれ、ぼくは誰かに担ぎ上げられた。[plc]

真緒「ちょ、え? いやぁああああ」[plc]

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最終更新:2010年07月12日 23:25
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