シナリオ 8月5日(日曜日)・その7
ドアの隙間から
ぼくにはお金持ちの家の事なんて、
違う世界の話でまったく分からない。
人が羨む様な事も多い反面、
色々と苦労があるんだろうな。
真緒「さて、八十記に謝ってきます」
真緒「変な事して泣かせちゃってごめんって」
メイド長「私も一緒に行きます」
真緒「二人で謝りますか」
メイド長「ええ、そうですね」
真緒「許してくれると良いんですけどね」
メイド長「大丈夫ですよ」
真緒「とにかく行きましょうか」
メイド長「ええ」
※ドア音
突然開いたドア。
反射的に振り向くと、そこに八十記が立っていた。
せえら「………」
真緒「や、八十記」
メイド長「お、お嬢様」
まさか…ドア越しに話を聞いていたんだろうか。
その顔は──
せえら「………」
怒りに身を震わせ、厳しい視線を送る。
なぜかぼくよりもメイド長に対して──
真緒「八十記、今行こうと思ってたんだ」
メイド長「お嬢様、あの、話を聞いていたのですか?」
せえら「………」
何も答えないのは聞いていたという事だ。
真緒「八十記、今から謝りに行こうと思ってたんだ」
メイド長「お嬢様! 申し訳ありません!
私が要先生にお願いをしたんです」
せえら「だからセンコーが突然あんな事をしたんですのね!」
本気で怒った八十記の声は、メイド長に投げつけられた。
二人の間に流れる緊迫した空気。
メイド長「お嬢様! 私が悪いんです! この償いは必ずします!」
せえら「ワタクシのメイドなのに、どうしてセンコーと二人でいますの!!」
真緒「や、八十記! 落ち着けって!
メイド長だけが悪いんじゃない、ぼくも悪いんだ!」
せえら「センコーもセンコーですわ!!
メイド長と二人でなにをしてましたの!!」
メイド長「お、お嬢様、私たちはお嬢様の事を話していただけです」
せえら「嘘つくんじゃにゃーですわ!!
楽しそうに話してたじゃにゃーですか!!」
メイド長「た、楽しそうになんて」
真緒「そうだぞ八十記、ぼくとメイド長は真剣にだな」
せえら「もういいですわ!! メイド長なんか大ッ嫌い!!」
そう言って、部屋を飛び出した八十記。
そしてメイド長は言葉を失い放心している。
ぼくは、仲の良い二人の喧嘩に呆然としていた。
でも、どうして八十記はぼくじゃなくてメイド長に対して怒ったんだ。
いつもなら絶対ぼくに怒るだろうし、ぼくもその方がずっと良かった。
こんなにメイド長に怒るなんて、まったく想像もしてなかった。
メイド長「……お嬢、様」
真緒「メイド長……気を落とさないで下さい。
ぼくが話をしてきますから」
メイド長「……お嬢様」
真緒「メイド長……」
最終更新:2010年08月13日 20:38