シナリオ 8月6日(月曜日)・その1
お嬢様として…
※八月 六日
※寮中庭
ぼくは寮の中庭へ来ていた。
ここにもうすぐ、
メイド長が来る事になっているからだ。
昨日、寮に戻ってからメイド長の姿を見ていない。
心配したまま眠りについたが、朝ドアの隙間にメモが挟まれていて、
内容はここに来て欲しいとの事だった。
書いていたのはそれだけだったけど、たぶん昨日の事を話したいんだろうと思う。
二人一緒の姿を見ていないから何とも言えないが、
八十記との関係がギクシャクしているんじゃないだろうか。
メイド長「………」
真緒「メイド長」
メイド長「……お呼び出しして申し訳ありません」
真緒「いえ、そんな事……心配していたんです」
真緒「八十記とは、どうですか?」
メイド長「……お嬢様は」
真緒「どうしたんですか?」
メイド長「………」
メイド長の元気がない。
やはり、八十記と上手くいってないんだろう。
メイド長「私はお嬢様に嫌われてしまったようです」
真緒「そんな事」
メイド長「残念ながら、そのようです」
真緒「………」
メイド長「辛いですが……私は自分のした事を後悔はしていません」
メイド長「お嬢様の幸せを考え、私はこれからもお嬢様に働きかけます」
メイド長「お嬢様は、お嬢様としての道を進んで貰いたいと思ってますから」
真緒「………」
こんな時、何て言えばいいんだろう。
口に出す言葉が思いつかない。
メイド長「先生にはご心配おかけしました。
この通り私は大丈夫なので」
真緒「……こんな喧嘩したままで良いんですか?」
メイド長「良くはないですが、それは私個人の気持ちの問題です」
メイド長「今まで……あまりにもお嬢様と仲が良すぎたのかもしれません」
メイド長「ですから、これからは距離を置いてメイドとしての役割をまっとうしようかと……」
真緒「そんな……仲直りして、今までどおり仲良くすれば良いじゃないですか」
メイド長「……そうしたいのですが、おそらくこの先そうはならないと思います」
真緒「そんな事ないですよ、よく話せば良いだけじゃないですか?」
メイド長「私はお嬢様の気持ちを知っています」
真緒「え?」
メイド長「応援してあげたいのですが、私はお嬢様……
いえ、八十記家のメイド長なんです」
真緒「な、何を言っているのか分からないですよ?」
メイド長「近い内に、きちんとお話致します」
真緒「はぁ」
メイド長「要先生、また色々と協力して欲しいのですが」
真緒「協力って……八十記をお嬢様に戻すアレですか?」
メイド長「はい」
真緒「それは、できないです」
メイド長「やはり無理ですか」
真緒「メイド長……」
虚ろな目に沈んだ声。
こんなメイド長は今まで見た事がない。
何とかしてやりたいと思う。
二人の間を取り持てるのは、ぼくしかいない気がするから。
真緒「その…協力はできませんが、
八十記と仲直りする橋渡しはぼくがやります」
メイド長「橋渡し?」
真緒「はい、ですから元気出して下さい」
メイド長「……お気持ちだけ受け取っておきます」
真緒「え?」
メイド長「それでは先生、私はこれで失礼致します」
真緒「ちょ、ちょっとメイド長!」
制止の言葉も聞かず、メイド長は行ってしまった。
八十記とメイド長──
この二人の喧嘩に、ぼくはどうするべきだろう。
ただ言えるのは、静観してちゃ駄目だって事だけだ。
最終更新:2010年08月13日 20:46