D-7/31-2

シナリオ 7月31日(月曜日)・その2

 表裏一体


そして、あっというまに寮敷地。
この研修も、後数分で終わるわけだ。

芽衣子「帰ってきましたね」

真緒「ああ、早かったな」

芽衣子「はい……真緒様との旅行もこれで終わりかと思うと……」

真緒「ああそうだ岸岡、たぶん莉緒やら八十記が色々聞いてくると思うけど、
誤解を招くような事は言うんじゃないぞ?」

芽衣子「誤解…ですか?」

真緒「ああ、そうだ」

芽衣子「たしかに肉体の交わりはありませんでしたけど……」

真緒「だ、だからそういう事をさらっと言っちゃ駄目だって!」

芽衣子「心の奥深くで私と真緒様は精神的に結ばれたと思います。
それは、私だけがそう思っているのでしょうか?」

真緒「それは……」

どこか中二病言葉だけど、とても真剣な岸岡。
退行が治ったのは、ぼくとそんな風になれたからだと言っているように思えた。

ならぼくも真剣に答えようと思う。
ここで適当にあしらったらまた、戻ってしまうかもしれない。

真緒「いや、ぼくも思ってるよ。岸岡と凄く近くなれたよね」

芽衣子「真緒様……」

真緒「はは……照れるな」

芽衣子「もう真緒様は私のものです。絶対に他の小娘どもには渡しません」

真緒「お、おい、変な事を」

芽衣子「私のことがお嫌いですか?」

真緒「そ、そうじゃないけどさ」

芽衣子「嫌いか好きかで答えて下さいまし」

真緒「いや、それはさ、言えないというか」

芽衣子「真緒様……どうか、どうか言って下さい」

真緒「う……」

芽衣子「真緒様のお気持ちは分かってはいますが、それでも時々不安になるのです」

真緒「不安に?」

芽衣子「真緒様のお心が変わっていないのかと確かめたくなるのです」

真緒「そんな、変わらないよ」

芽衣子「真緒様、残念ながらこの世に不変のものはありません。
特に、人の気持ち程移りやすいものはないのです」

真緒「まぁ、たしかにそうだろうけどさ」

芽衣子「だから私も怖いのです」

真緒「岸岡も怖い? どういう事?」

芽衣子「いつか、いつか真緒様へのこの気持ちが冷めたりする時があるのではと、
そう考えるだけで恐ろしいのです」

真緒「あぁ、そういう事か」

芽衣子「そんなことなど絶対にないと私は思っています。思ってはいるのですが……」

真緒(うーん)

真緒(分からなくはないけど、岸岡は考えすぎだ)

真緒(そもそも彼女でも恋人でもないわけだし)

真緒「なぁ岸岡」

芽衣子「は、はい」

真緒「ぼくは恋愛経験ないから気の利いた事言えないけどさ、
好きも嫌いも一緒……じゃないけど似たようなものじゃないのかな」

芽衣子「似たような……」

真緒「うんほら、好きだから嫌いになるとか、嫌いだったけど好きになるって話よくあるでしょ?」

芽衣子「たしかに」

真緒「好きも嫌いも相手に対して感情があるから思う事だよね。
だから嫌いになってもさ、また変わる事も十分あると思う」

芽衣子「……なるほど」

芽衣子「例えば、私が真緒様を嫌うようなことがあったとしても、
それは真緒様を思っているからこそというわけですか?」

真緒「ま、まぁそんな感じかな? 正直言って、自分でも何言ってるか分からないけど」

芽衣子「いえ、安心致しました。やはりあの時の私のお気持ちは愛ゆえだったのですね」

真緒「あ、あの時?」

芽衣子「はい、正直に申しあげます」

真緒「な、なんだ」

芽衣子「あの小娘だけを名前で呼ぶ真緒様に少し怒りや、嫌悪感を持ったこともあるのです」

真緒「………」

芽衣子「再三申し上げているにも関わらずいっこうに直らない。
そればかりか、私のことは名字で……と、そんな風に思っていました」

真緒「それは本当に悪いな、別に莉緒がどうこうだからってわけじゃないんだけど、
岸岡だけじゃなくて他の子からすれば何だって事になるしさ」

芽衣子「いえ、分かっています。ただ旧知の仲ゆえの呼称だと言うことも私は分かっております」

真緒「そっか、でも出来るだけ直していくよ」

芽衣子「はい……そうして頂けると芽衣子はとても嬉しいです」

真緒「うん、それじゃ行こうか」

芽衣子「真緒様? まだ聞いていないです」

真緒「え? 何が?」

芽衣子「ですから……私が好きか嫌いかという……」

真緒「も、もう言ったみたいなもんじゃないか?」

芽衣子「いえ、ちゃんと聞きたいのです! どうか!」

真緒「ぐ……」

芽衣子「仰ってくれるまで芽衣子はここをどきませぬ」

真緒(ぬぅ……)

あの旅館でほとんど同じ事を言っているから、別に言っても……
よくないな。
ハッキリ言ってしまうのは駄目だ。

真緒「岸岡、今ハッキリと口には出せない」

芽衣子「な、なぜです?」

真緒「それは教師と生徒で……ほら、あの夜言っただろ。
ハッキリと出したらいけないんだ」

芽衣子「真緒様……」

真緒「でも、ぼくは特別に思ってって言った事に変わりはないし、
ちゃんと卒業まで側で見ていてあげたいって思ってるから」

芽衣子「………」

真緒「今はこれが精一杯の言葉かな」

芽衣子「分かりました。真緒様の悩まれてるお気持ち、それは芽衣子を深く思ってるからこそ
なのですよね?」

真緒「あ、ああ、そうだな」

芽衣子「ふふ……私としたことが真緒様を困らせてしまうなんて。
僕としてあるまじき行為でした」

真緒「いや、そんな」

芽衣子
「真緒様のお気持ち、芽衣子はしかと受け取りました。
でもいつか、いつかはハッキリと言って下さいまし」

芽衣子「その日まで芽衣子はずっと真緒様のお側に、いえ、それからもずっといますから」

真緒「わ、分かった」

芽衣子「真緒様ぁ……」

真緒「と、とにかく戻ろうか。いつまでもここじゃな」

芽衣子「はぁい♪」

真緒「………」


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最終更新:2010年08月19日 21:32
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