シナリオ 8月1日(火曜日)・その3
一人になりたくて
※コテージ前
真緒「ふぅ……」
どうしても一人になりたくて、着替えをわざとずらした。
あの研修…いや、その前から岸岡と常に一緒だったせいだ。
終わったら終わったで、こうしてここへ来たわけで少し疲れた。
少しゆっくりと一人になりたい。
みんなには悪いけど、着替え終わったら浜には行かず、
どこか一人で海でも眺めようと思う。
真緒「よし、着替えてくるか」
※コテージ前
真緒「着替え終了。さて」
人がいない場所……か。
とりあえず浜と反対に歩いてみるかな。
※浜
和「ふふ、いい泳ぎだったぜ寮長」
せえら「なかなかやりますわね寮長」
寮長「そ、そうですか?」
奏「寮長凄いし。ねぇリオ?」
莉緒「そうね。信じられないわ」
和「寺井さんも見てないで泳いだらどうだい?」
莉緒「あ、あたしはその」
せえら「雷の使い手だからだめ、でしたわよね?」
莉緒「そうよ! あたしが泳いだらだめよ……
この力がうっかり漏れちゃったら、そしたらみんなが!?」
和「ふむ、たしかに危険だな」
奏「じゃー今度は浜で遊ぼうよ」
せえら「ですわね」
寮長「ええ、もちろん」
莉緒「………」
和「岸岡さんもいいかい?」
芽衣子「……遅い」
せえら「遅い?」
奏「センセのことかな」
芽衣子「あまりにも遅すぎる……」
和「言われてみればそうだが、そのうち来るだろ」
奏「そだね」
せえら「どーせ迷子になったとかそんなとこですわ」
莉緒「ほんと馬鹿なんだから」
芽衣子「真緒様……芽衣子が、芽衣子が今行きます!」
莉緒「ちょ、ちょっと!」
奏「行っちゃった」
せえら「ですわね」
寮長「………」
和「元に戻ったのはいいが、なんだかな」
莉緒「そうよ、和の言うとおりよ。みんなもそう思うでしょ?」
奏「うん、センセを独り占めだし」
せえら「ワタクシの舎弟ということを忘れてますわね」
和「困ったもんだぜ」
寮長「うーん」
※別浜
ふらふらと歩いていると、八十記たちがいる浜とは別の浜に辿り着いた。
当然ここには誰もいない。
カモメの鳴き声と波の音しか聞こえない静かな場所。
少しここで、のんびりするとしよう。
真緒「よいしょ」
浜に腰を下ろし、目の前の海を眺める。
真緒「………」
ほんの少し前、こうしてぼくが一人になると岸岡が取り乱した。
だからとても一人にはなれなくて、いつも一緒にいて。
そして研修も二人で行った。
生徒と二人で何泊もするなんて、常識的にありえない研修旅行。
そして研修の夜、ぼくは岸岡に特別だと言ってしまった。
岸岡はそれを告白だと受け取っているようだけど、
ぼくは、ぼく自身はどうなんだろう。
たしかに莉緒たちよりも一番気にかかってるし、好きだ。
でもそれは、恋愛感情かと言えばそうじゃない気がする。
教師として大人として、そういう目で好きというか……
もちろん男として見てしまった時もあるけど。
でもやっぱりぼくの好きは岸岡の好きとは違うと、そう思う。
ま、岸岡も言っていたように、いつか中二病も治った時、
ぼくへの気持ちも一緒に消えるかもしれない。
年も離れてるし教師と生徒だしな。
このままのらりくらりと接していくのが一番のような気がする。
……うん、それがいいな。
今のままでやっていけば、もうあんな風になる事もないだろう。
ただ、帰ってきてからの岸岡の態度に莉緒たちが怒ってるのが心配だ。
揉めなきゃいいんだけど……
最終更新:2010年09月12日 18:03