シナリオ 8月2日(水曜日)・その2
男らしさって?
※街
そして街。
ここももう三度目か。
そう、岸岡と二人きりで過ごしたのもここが初めてで……
莉緒「ちょっと真緒くん」
真緒「あ、どうした?」
莉緒「さっきからずっと上の空じゃない」
真緒「そんな事はないぞ」
莉緒「どうだか。どうせ考えてるんでしょ?」
真緒「な、なにをだよ」
莉緒「……知らないわよ」
和「まぁ寺井さん、その辺にしたまえよ」
莉緒「べ、別に私は怒ってるわけじゃ」
せえら「分かってますわよ、でも面白くにゃーですわ」
和「そうだぜキミぃ、今目の前にいるのは俺たちなんだぜ?」
岸岡の事を言ってる……んだよな。
たしかにここに来るまで、そして来てからもたしかに岸岡の事を考えていたけど。
なぜ分かったんだろう。
真緒「あ、ああ悪かった」
奏「それより遊ぼうよ」
莉緒「奏、これは遊びじゃないのよ。真緒くんの洗脳を解くためなんだから」
せえら「どこへ行きますの?」
和「どうするキミぃ?」
真緒「え? ぼくが決めるの?」
奏「うん、センセが決めて」
真緒「いや、決めてと言われても」
せえら「ないんですの?」
真緒「まぁ、そうだな……」
真緒「ていうか、八十記たちがどこかあるから遊びに来たんじゃないのか?」
和「ふ、具体的な場所は決めてなかったな」
奏「そだね。センセを連れ出す計画だけで終わったし」
せえら「寺井はどこかありますの?」
莉緒「そうね……」
真緒「あるなら頼むぞ莉緒、ここ詳しくないしな」
莉緒「あそこ……はでも、みんながいるし……」
真緒「なんだ? ハッキリ言っていいぞ」
莉緒「……や、やっぱりあそこは二人で」
真緒「ないのか?」
莉緒「う、うん。そうね、ないわ」
真緒「でも行きたい所あるんじゃないのか?」
莉緒「な、ないわよ」
真緒「あるなら頼むぞ、ほんと」
莉緒「な、ないって言ってるでしょ!」
真緒「お、怒るなよ」
莉緒「怒ってなんか……とにかく真緒くんが決めてよね」
真緒「そう言われてもなぁ……」
和「やれやれ、ここは適当にでも引っ張るのが良い男だぜ?」
真緒「まぁ、そうなんだろうけどさ」
せえら「まーったく、煮えきりませんわね。男らしくにゃーですわよ。
そんなのでワタクシの舎弟が務まりますの?」
真緒「……うーん、男らしく引っ張るねぇ」
和「ああ、ぐいぐいとな」
せえら「ですわ」
真緒「………」
莉緒「真緒くん、なに暗い顔してんのよ」
奏「どしたの?」
真緒「いや、ぼくってやっぱり男らしくないのか?」
莉緒「そ、そんなことは別に」
奏「アタシはもっとロックになってほしいし」
せえら「ま、男らしくにゃーですわね」
和「キミはまだまだ良い男になる。だから俺は言ってるんだぜ」
真緒「莉緒だけか……ありがとうな」
莉緒「ちょ、ちょっと変な勘違いしないでよね!」
奏「センセ、それで落ち込んでるの?」
真緒「うーん、落ち込んでるというか、男らしさってなんだろうなって」
和「ふむ」
真緒「男だけどよく分からないんだよな。一般的なそういうらしさも、
人によって違ったり、男女で大きく違ったりするしさ」
せえら「まぁ、そうかもしれませんわね」
真緒「男らしいっていったいどういう事なんだろうなぁって、
ちょっとね」
奏「ふーん」
莉緒「考えすぎなのよ真緒くんは」
莉緒「ハッ!? まさか、岸岡芽衣子の影響を受けて!?」
真緒「……うーん」
和「たしかに難しいな。俺も日々悩んでいるぜ」
真緒「難しいよな」
せえら「まぁセンコーのような真面目な方が男らしさを見せるとしたら、
かなり思い切った事をしなくちゃいけにゃーですわね」
真緒「思い切った」
せえら「ええ、例えばそうですわね」
真緒「なんだ」
せえら「……ま、例えばですけど?」
真緒「なんだ?」
せえら「その、夜中にワタクシの部屋に忍び込んで、夜の街へ連れ出すとか……ですわね」
真緒「………」
奏「せえらちゃんがして欲しいことだし」
せえら「ち、違いますわよ! ワタクシは舎弟の癖に真面目だからそう言ってるだけですわ!」
莉緒「……思い切ったこと。真緒くんがそんなこと」
真緒「出来るわけないよな」
莉緒「………」なぜか照れ
真緒「な、なんだよ?」
莉緒「べ、別になにもないわよ」
和「そういえ北上さん、こないだ一緒にみた古いドラマの主人公はなかなかだったな」
奏「えー!? たしかに面白かったけどさぁ」
真緒「なんだ阿部高」
和「いや、さえない主人公の恋愛ドラマなんだがな」
真緒「さえない主人公、ね」
和「ああ、その主人公が愛の告白をする時にだな」
奏「あれはロックじゃないよ。ただの馬鹿だし」
真緒「愛の告白でなんかしたのか?」
和「ああ、トラックの前に出て叫んだんだ」
真緒「な、なにそれ? それで好きだーとか言ったの?」
和「ぼくは死にませんだったかな。なかなか熱かったぜ」
真緒「……それは、北上の言う通りただ馬鹿なんじゃ?」
和「いやいや違うぜ、告白をしたヒロインは過去に恋人を亡くしていてな」
真緒「へぇ」
和「だから新しい恋に怯えていたのさ。今度もまた…とね」
真緒「なるほど、ドラマだとよくある話だ」
和「ま、そんな不安を消すためにその男はそんな馬鹿なことをしたんだ。
あれはほんと、良い馬鹿だぜ」
奏「やだよ。ひかれたら死んじゃうし」
和「まぁ、それはドラマだしな」
真緒「そうか……そういう流れなら良いかもな」
和「さすがキミだ。そうだ、良かったら今度一緒に見るかい?」
真緒「あ、ああ。時間があればな」
せえら「ま、センコーはそのままでいいですわ」
莉緒「そうね。変わらなくてもいいわ」
真緒「ああ、ありがとう」
真緒「っと、ここで話だけしててもあれだな。どこか行こう」
せえら「だからどこへ行くかーって話ですわよ」
真緒「ああ、まぁとにかく歩きながら探そうよ」
和「ふ、そうだな」
奏「それじゃいこっ!」
最終更新:2010年09月12日 18:16