シナリオ 8月2日(水曜日)・その4
誤解
※食堂
芽衣子「寮長!!」
寮長「岸岡さん」
芽衣子「部屋にもいない! 寮中探しても真緒様がいないぞ!」
寮長「……きっと学園でお仕事を」
芽衣子「違う……真緒様のシャツやネクタイはそのままだった」
寮長「………」
芽衣子「それにおかしいのだ。あの小娘どももいないのだ」
寮長「寺井さんたちですか」
芽衣子「ああ、まさかこれは──真緒様をさらって!?」
寮長「………」
芽衣子「寮長は知っているのか!」
寮長「岸岡さん、先生は寺井さんたちと一緒にいます」
芽衣子「な……」
寮長「おそらく街に」
芽衣子「街……あの小娘どもに連れ去られたということか?」
寮長「ええ……」
芽衣子「寮長、このことを知っていたのか?」
寮長「………」
芽衣子「寮長……なぜ黙る」
寮長「………」
芽衣子「……こうはしておられぬ。今すぐ真緒様の元へ行かねば」
寮長「でも岸岡さん、街は広いですし。
それにもうすぐ帰ってくると思いますから」
芽衣子「しかし……」
寮長「どうしても行かれるなら先生に電話してそれから、ね?」
芽衣子「むぅ……」
寮長「黙っていてごめんなさい。でも、寺井さんたちも凄い怒ってて」
芽衣子「怒っている? あの小娘どもがか?」
寮長「はい」
芽衣子「なにゆえだ?」
寮長「それは……」
芽衣子「ふ、真緒様と私が結ばれたせいか?」
寮長「は、はい」
芽衣子「なるほど、言うなればこういうことか」
寮長「え?」
芽衣子「あの小娘どもの暴走を事前に抑えるべく、
寮長は真緒様にあの小娘どもと戯れるよう仕組んだと」
寮長「はぁ……」
芽衣子「私に言わなかったのは反対するからだろう? ふふ、いや言わずともよい」
寮長「………」
芽衣子「良い作戦だが、やはり真緒様の側にいるのは私だ。
これからは知らせてもらうぞ?」
寮長「はい……」
芽衣子「よし、真緒様に連絡を」
寮長「………」
※街中心部
※電話音
真緒「お、電話だ」
莉緒「誰よ?」
真緒「ん、ちょっと待って」
莉緒「………」
真緒「寮からだ」
莉緒「寮から……」
岸岡からだろうか?
とにかく出てみよう。
真緒「はいもしもし」
芽衣子「真緒様! ご無事ですか??」
真緒「あ、やっぱり岸岡か」
芽衣子「はい、今しがた寮長から聞きました。小娘どもに連れ去られたと」
真緒「あ、ああ。いきなりだけど、街へ来てるよ」
芽衣子「なにもされてはいませんね?」
真緒「ああ」
真緒(心配してたけど……大丈夫そうだな)
芽衣子「ですか、安心致しました」
真緒「ああ、もうすぐ帰ると思うからさ」
芽衣子「え? 今から芽衣子が参りますのに」
真緒「いや、すぐ帰ると思うし。それにさ、結構ウロウロしてるから探すのも大変だぞ」
芽衣子「そんな……芽衣子はすぐにでも真緒様の元に」
真緒「……うーん、でも行き違いになるかもしれないしな」
芽衣子「それでしたら駅まで行って、そこでお待ちしております」
真緒「いやでも、駅まで来させといて遊ばないってのは悪いしさ」
芽衣子「悪いなど、そんなことはありません!」
真緒「うーん、岸岡がそう言ってくれても悪い気がするんだよね。
だから寮で待っててくれるかな? なんかお土産でも買って帰るしさ」
芽衣子「お土産などより芽衣子は今すぐ真緒様に会いたいのです」
真緒「………」
真緒(……なんてストレート)
真緒(こっちが恥ずかしくなるな……)
芽衣子「真緒様?」
真緒「あ、いや、どうしようか」
芽衣子「悩む必要などありません。芽衣子に一言言って下さいまし。
今すぐここに来い、と」
真緒「でもなぁ」
芽衣子「真緒様? 先ほどからいったいどうしたのです?
私がそこに行くのを嫌がっておられるのですか??」
真緒「ち、違うって。そうじゃなくて、ここまで来てそのまま帰るだけなんて
そんなの悪いってだけで」
芽衣子「ですから、そのようなことは気になさらくてもいいのですよ。
私は真緒様に会いたいのですから」
真緒「……岸岡」
芽衣子「はい、言って下さいまし」
置き去りにしてきた岸岡からの電話。
口調の明るさからもう大丈夫だろうと思ったけど、
やっぱりまだどこか不安にさせる言葉がちらほらある。
ここはやっぱり……
真緒「あの、岸岡、ここへ」
莉緒「来なくていいわ」
真緒「え?」
ぼくの携帯をひったくる莉緒。
そしてすぐに岸岡にそう言った。
真緒「おい、莉緒」
莉緒「せえら、奏、和、抑えといて」
せえら「命令は気に入らにゃーですけど、押さえておきますわ」
奏「センセ、動かない欲しいし」
和「ふ、この時を待っていたぜ。みっちり押さえつけてやる」
真緒「お、お前ら……」
三人にガッチリ体をロックされた。
まったくこいつらはこっちの心配も知らないで……
真緒「おい莉緒、変な事言うなよ」
莉緒「真緒くんは黙ってて」
真緒「駅まで来るなら連絡しろってだけ言ってくれ」
奏「駅までくるんだ」
せえら「まったく……」
和「やれやれ」
莉緒「……もう一度言うわ岸岡芽衣子」
芽衣子「貴様、早く真緒様に代われ!」
莉緒「ここへは来なくていいわ。真緒くんもそう言ってるしね」
芽衣子「……なんだと」
莉緒「あなたがいなくても楽しくやってるもの」
芽衣子「私がいないのに真緒様が楽しいなど……そんなことは」
莉緒「あるわよ。あなたには聞こえない?
真緒くんが後ろでせえらたちとはしゃいでる声が?」
芽衣子「ぐ……」
莉緒「だから来なくていいわよ。分かったわね?」
芽衣子「認められない……きっと真緒様は貴様等に」
莉緒「残念だけど違うわよ。さっき真緒くんも言ってたでしょ?
あなたはここに来なくていいって」
芽衣子「貴様……なぜそれを」
莉緒「なぜって、聞いてたからよ」
芽衣子「……あ、あれは私を心配して」
莉緒「まぁそうかもしれないわね。でも、私もみんなも真緒くんもあなたはいらないって思ってるから」
芽衣子「え……」
莉緒「なによ? 聞こえなかったの?
あなたはいらないの」
芽衣子「私が…必要じゃない……真緒様が?」
莉緒「そ、そうよ。だから来なくていいわ」
芽衣子「そんな……そんなこと……でも真緒様は……」
莉緒「………」
莉緒「とにかくそういうことだから。もう切るわよ!」
※つーつー
最終更新:2010年09月12日 18:17