シナリオ 8月2日(水曜日)・その6
call
※夕方寮
芽衣子「寮長……真緒様はいつ戻ってくるのだ?」
寮長「それは、もうそろそろだと思いますよ」
芽衣子「本当なのか? さっきからずっとそう言っているぞ」
寮長「心配しなくても夕食までには戻ってきますよ。
連絡もありませんしね」
芽衣子「連絡……」
寮長「先生から何か連絡ありました?」
芽衣子「ない……」
寮長「そうですか」
芽衣子「なぜ真緒様は連絡をしてこないのだ。
芽衣子との話も途中だったというのに……」
寮長「うーん」
芽衣子「やはり今からでも遅くはない。すぐに街にむかう」
寮長「駄目です。暗くなりますし、今からだと行き違いになりますよ」
芽衣子「だが……」
寮長「岸岡さんから電話してみました?」
芽衣子「私から電話出来るはずもなかろう……」
寮長「どうして?」
芽衣子「真緒様は私に来るなと言っていたのかもしれないんだぞ。
なのに電話などしたら私は疎まれるに決まってる」
寮長「先生はそんな人じゃありませんよ。
来なくて良いっていうのも、先生の考えがあってなんじゃないですか?」
芽衣子「そうかもしれないが……なぜ私を置いて……
お側に置いて下さると言って下さいましたのに……」
寮長「……それじゃ、私が電話してみますね」
芽衣子「なんだと」
寮長「先生が出たら、岸岡さんに代わりますから」
芽衣子「し、しかし寮長」
寮長「これならほら、私が電話したんですから、岸岡さんを疎ましく思うなんてありませんよ」
芽衣子「寮長……すまない」
寮長「いいえ、私にも責任がありますから。
それじゃ電話しますね」
芽衣子「頼む」
寮長「………」
芽衣子「………」
芽衣子「どうだ?」
寮長「……え、ええ」
寮長「……電波の届かない場所にって」
芽衣子「なん…だと」
寮長「ちょうどそんな所にいるだけだと思いますけど」
芽衣子「もう一度もう一度頼む」
寮長「はい、それじゃもう一度」
芽衣子「………」
寮長「………」
寮長「あ、出たのかな」
芽衣子「ほんとか?」
寮長「あ、先生ですか? 寮長です」
芽衣子「真緒様」
寮長「夕飯は…ええ、はい、それじゃ作っておきますね。
あ、ちょっと待って下さい、岸岡さんに、ええ」
芽衣子「………」
寮長「ふふ、岸岡さんどうぞ」
芽衣子「あ、ああ……」
芽衣子「………」
芽衣子「真緒様、芽衣子です」
真緒「ああ、岸岡か。さっきはごめんな」
芽衣子「いえ……」
真緒「もう帰ろうかって所だからさ」
芽衣子「そうですか、それでは今から」
真緒「ああ、待っててくれ。それじゃ」
芽衣子「え?」
真緒「え、どうした?」
芽衣子「それだけなのですか? たったそれだけで切るのですか?」
真緒「え、ああ」
芽衣子「真緒様? いったいどうしたのですか?」
真緒「ど、どうしたってなにが?」
芽衣子「今日の真緒様は……どこかその」
真緒「いや、別にどうもしないぞ?」
芽衣子「ですが、私に来なくてもいいと……」
真緒「いや、それは来るなって意味じゃなくてさ、
岸岡に悪いからいいよって事で」
芽衣子「ですが、私はそんなことは」
真緒「ま、帰ってから話そうよ」
芽衣子「………」
真緒「それじゃ岸岡、切るぞ?」
芽衣子「あ、真緒様、お迎えを、お迎えを致します」
真緒「お迎え? ああ、寮で待っててくれるのか」
芽衣子「いえ、駅に今から行きますから」
真緒「あ、だからそれはいいよ」
芽衣子「え、なぜ」
真緒「もう暗くなるだろうしさ、寮で待っててよ」
芽衣子「来なくてもいい、と?」
真緒「………」
芽衣子「真緒様?」
真緒「……うん、迎えはいらないかな」
芽衣子「いら…ない?」
真緒「あ、ああ」
芽衣子「で、でしたらその、せめて寮の敷地門で」
真緒「あ、いや、それもいいよ」
芽衣子「え……」
真緒「ごめん、ちょっとな」
芽衣子「ど、どうして突然そんなに私を避けるのです??
私が、私がなにか無礼をしましたでしょうか??」
真緒「お、落ち着けって。そんな事はしてないよ」
芽衣子「なら、ならどうして!?」
真緒「それはその……」
芽衣子「言って下さいまし」
真緒「……最近岸岡とずっと一緒だっただろ?」
芽衣子「はい」
真緒「そういう事や、ぼくが特別扱いしてること、莉緒たち皆分かってて怒ってるんだ」
芽衣子「あの小娘のことなど……」
真緒「それだけじゃないんだ。これからも寮と学園で顔を合わせなきゃいけないからさ、
今までみたいにするのはどうかなって思って」
芽衣子「ど、どういうことなのですか……
真緒様がなにを仰りたいのか芽衣子にはサッパリで……」
真緒「いや、どういう事と言われても」
芽衣子「芽衣子との関係を、あの時の言葉をなかったことにするというのですか??」
芽衣子「それともまさか……」
真緒「いや、なかった事にするわけじゃないけど、表に出しちゃいけないなってだけで」
芽衣子「私だけを特別に見てくれてると言ったのに、どうしてそんな……」
真緒「それはほら、やっぱり教師と生徒だからだしさ」
芽衣子「違います! 芽衣子と真緒様は、芽衣子にとって真緒様は……」
真緒「岸岡、とにかく帰ってから話そうか」
芽衣子「な、なにを話すのですか……」
真緒「だからほら、色々とさ」
芽衣子「………」
真緒「岸岡?」
芽衣子「真緒様……もう一度お聞きします。どうか真剣に答えて下さいまし」
真緒「なんだ?」
芽衣子「今から真緒様の所に迎えに行きます。よろしいですね?」
真緒「………」
芽衣子「真緒様……」
真緒「……ごめん、駄目だ。寮で待っててくれ」
芽衣子「………」
真緒「岸岡、切る」
※つーつー
最終更新:2010年09月12日 18:20