D-8/4-1

シナリオ 8月4日(金曜日)・その1

 いてもたっても


※食堂

翌日。

早起きしたぼくは食堂へ来ていた。
時計は七時を少し回っている。

まだ誰も来ていないけど、そろそろ寮長が来てもいい時間だ。

真緒「………」

岸岡との事。
時間を置いて様子を見た方が良い。

昨日そう言われたけど、果たしてそれで良いんだろうか。
莉緒や北上ならそれでほっとけば自然と機嫌も治まりそうだけど、
岸岡の場合は余計かたくなになるような気がしないでもない。

だからやっぱり、なんとか早く岸岡と話をして解決させたい。

寮長「先生? 早いですね」

真緒「あ、寮長おはよう」

寮長「朝はもう?」

真緒「いや、まだだよ」

寮長「それなら今から作りますね。といってもパンですけど」

真緒「いや悪いよ、それくらい自分で」

寮長「良いんですよ。先生は待ってて下さい」

そう笑顔でぼくに言うと、寮長は奥へ消えていった。
ほんと、なんていうか良い子だよな。

大人びてて綺麗だし、性格も文句ないしな……


莉緒「ちょっと、誰を見てんのよ」

真緒「り、莉緒!?」

莉緒「……寮長? 寮長なのね?」

真緒「ち、違うって、何言ってんだよ」

莉緒「寮長を取り込もうたって、そうはいかないわよ!」

真緒「………」

莉緒「岸岡芽衣子の代わりに寮長が魔王の部下になんてなったら……
あたしだけじゃ太刀打ちできないわ」

真緒「だ、だからそうじゃなくて」

和「やあ、おはよう」

せえら「ですわ」

真緒「お前ら、今日は早いんだな」

和「ああ、休みだからと言って寝てばかりじゃ良い男がすたるしな」

真緒「そうか」

せえら「なんですの? また考えてますの?」

真緒「昨日の今日だしな、考えないようにってのも無理だよ」

莉緒
「あの女の変わりに寮長を取り込もうとしてるのよ」

せえら「ほんと馬鹿センコーは寮長がお好きですわね」

和「まったくキミという男は……」

真緒「お、お前らも莉緒の言う事をそんな簡単に信じるなって」

莉緒「あら? 奏がいないじゃない」

せえら「寝てますわ」

和「起こしに行ったんだけどな」

莉緒「起きなかったの?」

和「ああ、机に座ったまま寝てたぜ」

真緒「何してたんだ?」

せえら「どうせ詩かなにかを夜中まで書いてたに決まってますわよ」

真緒「北上も相変らずだな」

和「で、岸岡さんはまだ部屋かい?」

真緒「いや、ぼくに聞かれても」

和「なんだ、行ってないのか」

せえら「昨日ほとんど食べてませんし、今朝は来ますわよ」

莉緒「そうね、お腹が空いてちゃ本来の力を出せないわ」

真緒「そうだな」

和「キミ」

真緒「なんだ?」

和「噂をすればってやつだ、来たぜ」



芽衣子「………」

真緒「岸岡」

芽衣子「………」

真緒「お、おはよう岸岡、お腹空いてるだろ? 
なんならぼくが作ってあげようか?」

芽衣子「結構です」

真緒「そうか……」

芽衣子「………」

真緒「でも今日は無理してでも食べないと」

芽衣子「指図……いえ、話しかけないで下さい」


冷たくぼくに言い放つと、岸岡は奥へと消えていった。

真緒「……はぁ」

莉緒「……真緒くん」

せえら「岸岡も本気で怒ってますわね」

和「あんな岸岡さん初めてだな」

せえら「ですわね」

真緒「なぁ」

和「なんだ?」

真緒「時間を置けば、それで大丈夫なのかな?」

和「むぅ」

せえら「分かりませんわね……」

莉緒「………」

真緒「思ったんだけど、岸岡の場合はさ、時間が経てば経つほど難しくなる気がするんだ」

和「ふむ」

真緒「単純に考える子だったらそうしても良いだろうけど、
ほらあいつ、小難しく考える癖があるだろ?」

せえら「ま、誰かさんだったらほっといても大丈夫でしょうけど」

莉緒「奏のことね」

せえら「ま、まぁそうですわね」

和「つまりキミは、すぐにでもなにかした方がいいと」

真緒「そうだ、今すぐにでもなんとかしないと」

莉緒「でも、どうするの? 無視されてるのに」

真緒「それだよな……」

和「一緒に考えるか。俺たちにも責任があるしな」

せえら「まぁ……そうですわね」

真緒「ありがとう、助かるよ」

莉緒「でも、どうするのよ?」

せえら「ですわねぇ」

和「なぁキミ、岸岡さんに魔王じゃないって言われたんだよな」

真緒「ああ」

和「ふ、なら簡単だ」

真緒「どういう事だ?」

せえら「なんですの?」

和「もう一度魔王に戻ればいいだけだろ?」

莉緒「ちょ、ちょっと和」

和「それには寺井さんの協力が必要不可欠だがな」

せえら「もっと分かるように言えですわ」

和「つまりこうだ」

和「岸岡さんの前で、寺井さんとキミが決闘してキミが勝つ。
そしてキミが魔王だとアピールすれば良いってことだ」

莉緒「け、決闘ですって!?」

せえら「うまくいきますの?」

和「分からないが、やってみる価値はあるんじゃないか?」

真緒「………」

莉緒「あ、あたしは嫌よ! まだ力も完全じゃないし……」

せえら「良いかもしれませんわね」

莉緒「せえらまで!」

和「なぁキミ、どうだ?」

阿部高の提案。
それで岸岡が元に戻るかは分からない。
けど、何もしないよりはずっと──

真緒「……莉緒が良いなら頼む」

莉緒「な!?」

和「そうだ、もちろん決闘は八百長だぜ?」

真緒「ああ」

莉緒「い、いくら嘘の決闘でもあたしは……」

せえら「乗り気じゃにゃーですわね」

莉緒「だって……」

和「寺井さん、俺たちにも責任があるわけだし助けてやろうぜ」

莉緒「………」

和「こんな暗い顔をいつまでも見ていたくないだろ?」

莉緒「……そうね、分かったわ」

真緒「莉緒」

莉緒「で、でもあれよ! 岸岡芽衣子が元に戻ったら、嘘だって言うからね!」

和「ああ、良いんじゃないか」

せえら「それじゃ決まりですわね」

真緒「ああ、ありがとう」



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最終更新:2010年09月12日 18:42
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