D-8/5-1

シナリオ 8月5日(土曜日)・その1

 気分を変えて


※廊下、朝
※鳥

朝が来る。
昨日と何も変わらない、変わっていない朝が。

そしてぼくは今、岸岡の部屋の前だ。
どうすればいいのか答えは出てないけど、いてもたってもいられずここへ来た。

呼びかけるか、それとも出てくるまでここにいるかどうするか。

ええい、男ならここは!!

莉緒「やっぱりここにいたわ」

真緒「莉緒?」

莉緒「起こしにいってあげたのに」

真緒「そうか、ありがと」

莉緒「で、部屋にいるわけ?」

真緒「いや、分からないけどたぶん」

莉緒「呼んでみたの?」

真緒「いやまだ……」

莉緒「……まったく」

莉緒「ちょっと出てきなさいよ!」

真緒「お、おい」

莉緒がドアを激しく叩く。
どこか怒っているようにも見えるのは気のせいだろうか。

莉緒「いるんでしょ!」

気のせいじゃないな。
よく分からないけど怒ってるのは間違いない。

真緒「莉緒、もういいってば」

莉緒「だめよ! いるのは分かってるんだから!」

真緒「そうかもしれないけど、こんな強引にはさ」

莉緒「強引くらいでちょうどなのよ。ほら出てきたわ」

真緒「え?」

──岸岡だ。
相変らずの表情。

芽衣子「なにやらうるさいと思えば貴様か」

莉緒「ふん、そうよ」

芽衣子「………」

チラリとぼくを見る岸岡。
でもほんの一瞬だけ。

莉緒「今日こそ決着をつけるわよ」

真緒「おい莉緒、今日もか?」

芽衣子「………」

莉緒「ええ」

芽衣子「……猿芝居はやめてもらおう」

莉緒「芝居? 馬鹿言わないで!」

芽衣子「……失礼する」


莉緒「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」


岸岡の後を莉緒が追って行く。
ぼくも行くべきなんだろう。
でも、足が動かなかった。

行って岸岡を捕まえた所で何を話せばいいのか分からない。
例え何か話したとしても、また拒絶されるのは明らかで……


※食堂

追いかける気も部屋に戻る気にもならず、なんとなく足がここへ着いた。

いるのは寮長だろうか。
奥の方でなにやらゴソゴソと動いてる人がいる。

和「よ!」

真緒「んあ? ああ、阿部高か」

和「元気がないな」

真緒「まぁ、な」

和「岸岡さんか。岸岡さんならさっき寺井さんと廊下で騒いでたぜ」

真緒「そうか」

和「行かなくていいのかい」

真緒「いや、止めとくよ。さっき会ったしさ」

和「なんだい、相変らず無視だったのか?」

真緒「ああ……」

和「困ったもんだぜ」

せえら「ま、昨日の今日で機嫌が直るなら苦労しにゃーですわよ」

奏「おはよセンセ」

真緒「ああ、おはよ」

奏「でさセンセ、今日はなにすんの?」

真緒「なにって?」

奏「だからー、メーコにだよ」

真緒「いや、別に何も」

奏「えー」

和「おいおいおい北上さん、遊びじゃあないんだぜ?」

奏「つまんないし」

せえら「今日はなにもしにゃーですの?」

真緒「……したいけど、なにすれば良いか分からないしな」

奏「うーん」

せえら「まぁ、たしかにそうですわね……」

和「そうだな……良い案でもあれば」

真緒「だなぁ」

和「おっと、閃いたぜ!」

奏「なに?」

せえら「なんですの?」

和「まぁ怒らずに聞きたまえよ」

奏「なに?」

せえら「だからなんですの?」

真緒「なんだ?」

和「今日はあれだ、岸岡さんとデートしてみたらどうだい?」

奏「で、デート!」

せえら「な!?」

真緒「デートってそんなの無理じゃないか」

和「難しいかもしれないが、気分を変えるためにも外に連れ出した方がいいだろって思ってさ」

真緒「まぁ、そうかもしれないけど」

せえら「ちょ、ちょっとデートとかなんですの!」

奏「アタシ反対だし」

和「ま、まぁ怒りを抑えてくれたまえよ。これは二人のためなんだぜ」

せえら「ですけど、デートなどと言いますから」

和「言い方が悪かったかな、二人でちょっと散歩してきたらどうだい?
敷地内じゃなくて、街とかにな」

奏「それならいいし」

和「どうだキミ?」

真緒「………」

気分を変えるために外に連れ出すってのには賛成だ。
でも果たして岸岡がそれに応じてくれるだろうか。
たぶん……無理だな。

真緒「無理だと思うけどな。岸岡は絶対断るよ」

和「その辺は俺たちが頑張るさ、なぁ?」

せえら「しょーがにゃーですわね」

奏「別にいいけど、どうするの?」

和「とりあえず岸岡さんを呼んでくるか。
キミたちは考えておいてくれたまえよ」

真緒「おい阿部た……って行ったか」

せえら「まったく、肝心な所は人任せですわね」

奏「でも、メーコ来てなんて言うの?」

真緒「だよなぁ」

寮長「おはようございます」

せえら「おはようですわ」

奏「あ、寮長! 寮長がいるなら大丈夫だし!」

真緒「おはよう寮長」

寮長「はい。所でなんの話ですか?」

せえら「今日は岸岡とセンコーを街へ送り出しますわよ」

奏「今からメーコ来るからさ、寮長もお願いね」

寮長「二人でですか?」

真緒「ああ……難しいだろうけど、せっかくだし言ってみるよ」

寮長「はい、そういう事なら分かりました。協力させてもらいます」

真緒「ありがとう」



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最終更新:2010年09月12日 22:20
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