D-8/6-3

シナリオ 8月6日(日曜日)・その3

 二度目の映画館


※映画館

そして映画館。
以前皆で来たあの映画館だ。

岸岡がここに来たいと言ったのは静かにできるからだろうか。
たぶんそうだとぼくは思う。
岸岡の事だ、映画を見るよりもそっちの理由が大きいと思う。

莉緒「意外に空いてるわね」

真緒「そうだな、夏休みなのにな」

莉緒「この映画が人気ないのかしら」

真緒「というより、上映してから時間経ってるからじゃないか。
ずいぶん前に宣伝してたしさ」

莉緒「そうなんだ」

真緒「ああ、たぶんな」

芽衣子「………」

真緒「それじゃそろそろ入ろうか」

莉緒「うん! 一緒にすわろ!」

真緒「あ、ああ、岸岡もな」

芽衣子「………」


※中、黒背景


中も人の姿はなく、席も座り放題だった。

莉緒「真緒くん、ここに座ろうよ」

真緒「いいよ、座ろうか」

莉緒「うん」

莉緒が座り、その横にぼくも座った。

芽衣子「………」

真緒「岸岡も座ろうよ」

芽衣子「………」

真緒「………」

莉緒とぼく、そして空いた席を交互に見てる。
どこに座ろうか考えているって所か。

莉緒の隣か、全然違う場所か。
ぼくの隣ってのはないだろうな……

※めきえ

と思った瞬間、岸岡が隣に座る。
予想外の出来事で驚いたけど、これは喜んで良いんだよな。

莉緒「………」

真緒「………」

芽衣子「………」

前に来た時を思い出す。
あの時も両隣がこの二人で、それで岸岡が手を握ってきて騒ぎになって……

今にしてみれば、あの時は楽しかった。
岸岡とこんなになるなんてまったく思わなかったから、
変に意識する事もなかったわけで。

ごく自然に会話も出来て、岸岡もなついてくれてて……

芽衣子「………」

チラと岸岡を見る。
おそらくぼくの視線に気がついているだろうけど、
素知らぬ顔をしてCMが流れているスクリーンを見ていた。

この子は今、何を考えているんだろう。


※映画終わって 


莉緒「はぁ~よく寝たわ」

真緒「まったく……」

芽衣子「………」

映画も終わった。
普通なら見終わった映画の感想を話したりする所だろうけど、
始まってそうそうスースーと寝息を立てていた莉緒と、
相変らずな岸岡が相手じゃそれは出来ない。

真緒「さてと、もう結構時間経ってるだろ。映画長かったしな」

莉緒「そう?」

真緒「ああ、そろそろ日も暮れてくるし帰るか?」

芽衣子「………」

莉緒「なに言ってるのよ、まだ早いわよ」

真緒「いや、あんまり遅くまではさ」

莉緒「ね、最後はあそこに行こうよ」

真緒「あそこってどこだ?」

莉緒「ん、公園よ」

※新背景 道路に面した綺麗な公園とか

真緒「公園って、そこもこないだ行った所?」

莉緒「ええ、そうよ」

真緒「まぁいいけど、岸岡は?」

芽衣子「………」

莉緒「いいみたいよ。それいこ」

真緒「……ま、行こうか」

芽衣子「………」


もうだいぶ経つのに、今だ無口な岸岡。
莉緒がいるおかげでなんとか場は保ててるけど、
根本的な解決……どころか、ただ一緒にいるってだけだ。

芽衣子「………」

無口は変わらない。
でも、ずっと見ていたぼくは気がついた事がある。
岸岡の表情だ。

寮を出た時の嫌悪に満ちた顔が、次第に変わっていってる。
怒りになって冷めた顔になって……
そして今、どこか悲しそうな寂しそうなそんな顔だった。

たぶん岸岡の気持ちがそのまま出てるんじゃないだろうか。
だとしたら今岸岡は。

莉緒「ちょっと! 行くわよ!」

真緒「あ、ああ」

芽衣子「………」



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最終更新:2010年09月12日 23:05
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