シナリオ 8月6日(日曜日)・その4
ダイジョウブ、ダイジョウブ
※公園
莉緒「久々ねー」
真緒「そうだな」
莉緒「和にここへ来たって言ったら怒るわね」
真緒「ああ、あいつ公園というか、公園のトイレが好きだよな」
莉緒「そうよね、わけが分かんないけど」
芽衣子「………」
夏休みの公園は人で溢れていた。
公園の中にある噴水では、服を脱いだ子どもたちが楽しそうに水遊びをしていて、
その笑い声が蝉の声に負けないくらい聞こえてくる。
莉緒「元気よねぇ」
真緒「だな。でも気持ち良さそうでうらやましいよ」
莉緒「……ふーん、あたしには分からないけど」
真緒「ぼくも脱いで水浴びしたいよ」
莉緒「止めてよね」
真緒「冗談だって」
芽衣子「………」
ふと岸岡を見ると、遊ぶ子どもたちとそれを木陰から見守っている両親の姿を
ジッと見ていた。
真緒「岸岡」
莉緒「なによ?」
芽衣子「………」
ぼく等の声が耳に届いていないのか、まだ見続けている。
芽衣子「………」
岸岡に釣られるようにぼくと莉緒もそんな子どもたちと両親の様子を眺める。
すると、噴水から飛び出した一人の男の子が手をふる両親の元へと走り出した。
莉緒「あ、あの子」
勢いよく走り出した直後、濡れた足で滑ったのか、何かにつまずいたのか
男の子は転んでしまった。
すぐに母親が駆け寄って来る。
そして何か声をかけているようだ。
※立ち絵消え
母親「まーくん大丈夫? 一人で立てる?」
まーくん「うん……」
男の子は立ち上がると、母親にそう言った。
その言葉に母親は踵を返していくが、男の子はまだ立ち尽くしたままだ。
莉緒「あの子、足怪我したんじゃない。ほら、血が出てる」
芽衣子「………」
莉緒の言うとおり、その子の左足の膝に赤い血が見える。
でも本人は泣くのを堪えてるのか、痛さを堪えてるのか、とにかくジッとしていた。
母親「まーくん?」
まーくん「………」
後ろをついてこない子どもに気がついた母親が振り返る。
そしてそこで初めて、我が子の怪我に気がついたようだった。
母親「あ、血が出ちゃってたの」
まーくん「………」
母親「そっかー痛かったねー」
まーくん「………」
母親「よしよし、もう大丈夫。ちゃんと消毒しようねー」
母親が優しく声をかけ頭を撫でると、男の子はポロポロと泣き始めた。
堪えていたものが一気に溢れたような、そんな涙で。
※立ち絵
莉緒「あー泣いちゃったわね。もうちょっとだったのに」
真緒「………」
芽衣子「………」
莉緒「なによ? 二人ともどうしたのよ?」
真緒「あ、いや、でもなんか心温まる光景だったな」
莉緒「そうね」
芽衣子「………」
あの母子を見て、岸岡は何を思ったんだろう。
以前寮長が言っていた事を思い出す。
岸岡は親に捨てられた、と……
最終更新:2010年09月12日 23:06