シナリオ 7月4日(水曜日)・その3
一限目・二限目
今日の一限目は日本史だ。[plc]
授業内容は戦国時代。
天下統一を目指して武士たちが戦に明け暮れた時代だ。[plc]
名だたる合戦、計略。[lr]
一騎当千の猛将、知略の優れた軍師。[lr]
うーん、かっこいい![plc]
男なら大抵憧れる時代だと思うけど、目の前のお嬢様方は興味なさそうだ。[plc]
真緒「さて、今日はあの有名な織田信長についてだな。[l]知ってる人も多いだろうが彼は幼少時代、凄くヤンチャだったんだ」[plc]
せえら「ヤンチャと言いますと?」[plc]
真緒「今風に言うと……そうだな、不良って所か」[plc]
せえら「ヤンキーですの!?」[plc]
真緒「そ、そうだな。今でいう所のな」[plc]
せえら「もっと詳しく教えろですわ」[plc]
まずい事言っちゃったなぁと思うけれど、
どんなきっかけからでも歴史に興味を持つのは良い事だ。[plc]
真緒「うん、信長の子ども時代に彼のお父さんが無くなった時の話が有名だな。[l]位牌に抹香を投げた話な」[plc]
せえら「……なんてワイルドな方ですの」[plc]
真緒「うん。だけど、その荒っぽい性格のせいで明知光秀に殺されたわけだ」[plc]
せえら「部下ですわよね」[plc]
そうだ、と答える。[lr]
なんだか良い雰囲気。[lr]
授業をしてるっていうかさ。[plc]
莉緒「せえら駄目よ!!」[plc]
そんな雰囲気を一瞬で壊した莉緒の叫び声。[lr]
教室の空気が変わっていく。[plc]
何事かと驚いている生徒。[lr]
名指しされた八十記も目が点だ。[plc]
真緒「寺井、どうしたんだ?」[plc]
せえら「どうしたんですの?」[plc]
莉緒「私には分かるわ。[l]ううん、感じるの。[lr]そう、この気配……」[plc]
莉緒「騙されないわよ!」[plc]
真緒「何を言ってるんだ?」[plc]
莉緒「あなたと同じってことよ!!」[plc]
ぼくと同じ? なんの事だ?[plc]
真緒「どういう事だ?」[plc]
せえら「寺井、ワタクシにも分かるように仰って下さらないかしら?」[plc]
莉緒「ふふん、危ない所だったわねせえら。[lr]
この信長はね……」[plc]
真緒「信長がどうしたんだ?」[plc]
せえら「なんなんですの?」[plc]
莉緒「魔王なのよ!!」[plc]
真緒「………」[plc]
せえら「そうなんですの? ヤンキーではなくて?」[plc]
莉緒「ええ、違うわ、魔王なのよ」[plc]
莉緒「だからね、いい? 尊敬なんてしちゃ駄目よせえら」[plc]
せえら「………」[plc]
真緒「り、莉緒、お前なぁ……」[plc]
信長が魔王……[plc]
たしかにそう呼ばれていたらしいし、信長自身も言っていたとは聞くけど……[plc]
莉緒「ここだけ力の入り方がおかしいと気づいたわ。みんなも思うでしょ?」[plc]
莉緒がクラスメイトを煽る。[lr]
おかげで教室が一気に騒がしくなった。[plc]
莉緒「あぶなかったわ、もう少しでみんな洗脳される所だった」[plc]
真緒「莉緒、いいから座れ」[plc]
莉緒「気安く名前を呼ばないで!!」[plc]
……はぁ、いい雰囲気の授業だったのにな。[plc]
痴話喧嘩が始まったのなんだのとまた言われてるしさ……[plc]
莉緒の一言から崩壊した一限目。[lr]
結局修復できないままで終わってしまった。[plc]
気をとりなおして、今度はちゃんとした授業を![plc]
その二限目の授業は音楽だ。[plc]
音楽は担当じゃないけど、受け持っている音河先生が
教育委員会だかに行っているらしく、代理を頼まれた。[plc]
と言ってもぼくには知識はないので、
クラシックのビデオを流して感想文を書かせる。[lr]
授業内容はこれだけだ。[plc]
手抜きな気がするが、代理なわけだし仕方ない。[plc]
ま、音楽鑑賞だけならさっきの授業のようになる事もないだろうしな。[plc]
真緒「えー、音河先生は用事で外に出てるので、ぼくがこの時間みんなを見ます」[plc]
莉緒「……また魔王だなんて」[plc]
芽衣子「……真緒様」[plc]
先生が変わる。[lr]
たたそれだけで生徒が騒がしくなる。[plc]
「音河先生が良かった」[lr]
「ぼくの方が楽でいい」[lr]
なんて言葉が嫌でも耳に入ってくる。[plc]
真緒「いいから静かに。私語はやめなさい」[plc]
奏「セーンセ」[plc]
真緒「なんだ北上?」[plc]
奏「ティーチャー音河の代わりらしいけど、なにをするの?」[plc]
真緒「ティーチャー音河って音河先生の事か」[plc]
奏「そうだよセンセ。それでなにするの?」[plc]
音楽の授業だからか、ご機嫌な様子。[plc]
それに、ティーチャー音河なんて呼び方からして、音河先生と仲が良いんだろう。[plc]
和「ふふ、奏さん。相変わらず音楽が好きだな」[plc]
奏「うん。この時間と休み時間とお昼ご飯は待ち遠しいよね」[plc]
和「そうか。俺は課外授業が待ち遠しいがな。女ばっかりじゃ退屈だぜ」[plc]
真緒「ほら、北上と阿部高も席に座れ」[plc]
和「ああ」[plc]
奏「うん」[plc]
真緒「え~、今日の授業はクラシック鑑賞だ。
ビデオをみて貰った後、感想文を提出してもらいます」[plc]
沸き起こる不満の声。[lr]
ぼくとしては意外だった。[plc]
お嬢様学園の生徒だから、クラシックはよく聞いてそうなんだけど……[plc]
年頃だから、やっぱり流行曲なんかを聞いてるのだろうか。[plc]
奏「………」[plc]
北上の視線に気づく。[lr]
ぼくをにらんでいるみたいだ。[plc]
真緒「どうした北上?」[plc]
奏「なんでクラシックなの?」[plc]
真緒「なんでって言われても、音河先生からそう頼まれたんだ」[plc]
奏「嘘だよ。ティーチャー音河はクラシックなんて流さないし」[plc]
真緒「うーん、そう言われても先生は知らないからなぁ。
でも、普段やらないからぼくに頼んだんじゃないか?」[plc]
奏「……クラシックとかロックじゃないし」[plc]
真緒「そうは言ってもなぁ……[lr]ま、とにかく今から流すから席に着け」[plc]
奏「………」[plc]
真緒「え~っと、シューベルトか。[l]曲は……」[plc]
真緒「こ、これは……」[plc]
このビデオのタイトルは……[plc]
まずい、これはまずい!![plc]
芽衣子「真緒様? どうされました?」[plc]
せえら「センコーの様子がおかしいですわね」[plc]
莉緒「またなにか企んでるつもりね!?」[plc]
奏「……ロックじゃないし」[plc]
和「どうしたんだキミ?」[plc]
そう、曲のタイトルは『魔王』だった。[plc]
音河先生……恨みますよ。[plc]
この曲名に、必ずや莉緒と岸岡が反応する。[lr]
そしてまたクラスが……[plc]
くそっ、どうすれば!?[plc]
……そうだ。[lr]
タイトル言わなければ良いんだ![lr]
簡単な事じゃないか! はは![plc]
真緒「そ、それじゃ、流しますので……」[plc]
せえら「曲はなんですの?」[plc]
真緒「きょ……曲名は言いません!」[plc]
莉緒「怪しいわね……いったいなにを企んでいるのかしら」[plc]
奏「……ロックじゃないし」[plc]
せえら「シューベルトと言いますと魔王ですわね。もしくはピアノソナタ?」[plc]
莉緒「なんて言ったのせえら!!」[plc]
芽衣子「素晴らしい選択です。さすが魔王様」[plc]
寮長「………」[plc]
真緒「…………終わった」[plc]
最終更新:2010年07月18日 01:06