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シナリオ 7月4日(水曜日)・その5

 阿部高の告白



まだ午前中だというのに……[plc]
一日を終えた時の様なこの疲れ……[lr]
精神的疲労が凄まじい。[plc]

負けるな真緒……[lr]
今度こそ、今度こそ……[plc]


この時間は保健体育だ。[lr]
女の子だらけのクラスをぼくが教えられる訳もなく、
この授業も一時的な代理。[plc]

手の空いている女性職員もおらず、
元々は前任の担任が受け持っていた授業なので、
必然的にぼくが受け持つ事となったわけだ。[plc]

問題は、何を教えたらいいのか……[plc]
スポーツのルールとか、そういうのをやってみるか。[plc]

真緒「えー、保健体育もぼくがみることになりました」[plc]

真緒「この時間は静かに受けるようにして下さい。[l]
特に、寺井」[plc]

莉緒「……指図しないで」[plc]

最初から釘をさしておく。[lr]
莉緒相手に効果があるとは思えないが、気休め程度に。[plc]

真緒「それじゃ、今日はサッカーのルールでもやろうか」[plc]

和「キミ!!」[plc]

真緒「どうした阿部高。いきなり大声出して」[plc]

和「スポーツの事はいい」[plc]

真緒「ん? どういう事?」[plc]

和「保健体育ってのは体のことを教えるものだろう?」[plc]

真緒「そうだけど、ぼくは男だしさ。教えるわけにはいかないよ」[plc]

和「俺も男だぜ」[plc]

真緒「………」[plc]

和「男同士ってことでキミに聞きたいことがある」[plc]

真緒「なんだ?」[plc]

和「最近、キミを見てるとだな……」[plc]

真緒「ん?」[plc]

和「む、胸が痛いんだぜ」[plc]

真緒「は?」[plc]

和「これはいったいなんなんだぜ? 病気なのかい?」[plc]

キャーキャーと、
悲鳴に近いような歓声が教室中飛び交う。[plc]

阿部高の言葉を、愛の告白だのなんだのと言ってるのが耳に入ってくる。[plc]

まったく女の子ってのは……[lr]
あの言い方じゃそう聞こえなくはないけどさ。[plc]

真緒「胸が痛い? いつからだ?」[plc]

和「キミが寮に来た日からだな。でも、体は健康だと思うぜ」[plc]

たしかに苦しそうな表情はない。[plc]

真緒「そうか、でも念のため病院で見てもらった方がいいな」[plc]

和「それで治るのか?」[plc]

真緒「うーん、なんとも言えないな」[plc]

奏「ね、ナゴミ。どんな風に痛いの?」[plc]

和「ああ。締め付けられるような痛みと、やたらドキドキしちまって落ちつかないな」[plc]

寮長「阿部高さんそれは……」[plc]

莉緒「………」[plc]

芽衣子「………」[plc]

奏「………」[plc]

せえら「………」[plc]

胸が締めつけられる。[lr]
ドキドキする。[lr]
そんな症状の病気って……[plc]

生徒A「恋よ!! 恋!!」[plc]

生徒B「和君が告白したわー!!」[plc]

生徒C「キャー素敵!!」[plc]

和「こ、恋……? この俺が? キミに?」[plc]

阿部高が聞いてくるが、答えようがない。[lr]
いくらなんでもそれは無いだろうと思いつつ、動揺してしまう。[plc]

会ってからまだ数日、しかも阿部高は自分を男だと言ってるわけで……[plc]

和「し、しかし、俺は男でキミも男だぜ!?」[plc]

生徒A「和君! それは禁断の恋よ!?」[plc]

生徒B「教師と生徒……さらに男同士だなんて禁断すぎるわ!」[plc]

生徒C「キャー素敵!!」[plc]

真緒(……何が素敵なんだか)[plc]

大盛り上がりの教室。[lr]
ここまでの授業で一番かもしれない。[plc]
この時間は莉緒たちじゃなくてこいつらか……[plc]

そういえば、寮の子たちは──[plc]

莉緒「………」[plc]

芽衣子「………」[plc]

奏「………」[plc]

せえら「………」[plc]

寮長「………」[plc]

ぜ、全員無言。[lr]
ぎゃ、逆に怖いな。[lr]
なんで黙ってるんだ?[plc]

和「き、禁断の恋。お、おお男同士の禁断のここ恋……」[plc]

真緒「あ、阿部高あのな、ちょっと落ち着け。皆も静かに」[plc]

和「お、おう。俺らしくないな」[plc]

真緒「いいか阿部高、お前は風邪を引いてるのか引きかけてるのかもしれない」[plc]

真緒「だから、そういう風に胸が痛いんだと思う」[plc]

和「そうか! 俺は風邪をひいているのか!」[plc]

真緒「ああ、そうだ」[plc]

和「いや、待てよ。俺は風邪をひいてなんかいないぜ?[l] 
だとしたら……」[plc]

真緒「なんだ?」[plc]

真剣に考え込む阿部高。[lr]
その様子に、はしゃいでいた子たちも静かになっていく。[plc]
クラス中が阿部高の言葉を待っていた。[plc]

和「俺は……俺はゲイだったのか……」[plc]

真緒「………」[plc]

生徒A「和くーん! 応援するわよー!!」[plc]

生徒B「莉緒と和君の三角関係ね」[plc]

生徒C「キャー素敵!!」[plc]

和「………」[plc]

まったく……こいつらは。[plc]

だが、ふざけてる生徒とは対象的に、阿部高の様子は真剣そのものだ。[plc]
椅子に座る事なくまだ考え込んでいる。[plc]

まさか、本当に自分を男だと思っているのか?[lr]
これって中二病じゃなくて……[plc]

とにかく、後で話をしてみるか。[plc]

真緒「阿部高」[plc]

和「………」[plc]

真緒「後で話そう。とにかく座れ」[plc]

和「あ、ああ。[l]そうするぜ……」[plc]

阿部高が席につく。[lr]
すぐに周りの生徒から声がかかっている。[plc]

そして、いぜん騒がしい教室。[lr]
ぼくの注意をまるで聞きやしない。[plc]

また……学級崩壊だ。[plc]



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最終更新:2010年07月18日 01:17
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