シナリオ 7月1日(日曜日)・その6
やらないか
先ほどの場所から歩く事数分。[lr]
寮がみつけられない。[plc]
広大な寮の敷地内を当てもなく歩く。[lr]
どうやら迷子になってしまったようだ。[plc]
とにかく広い。でかすぎる。[plc]
敷地内にはいくつもの建物が存在していて、[lr]
遠めに見えるそれらの内どれが寮なのかさっぱり分からない。[plc]
今、ぼくがいる所は中庭のような所だろうか。[lr]
下手に動かず、ここで誰かを待っていた方がいいかもしれない。[plc]
真緒
「ぬっ!?」[plc]
そうしようと決めたとたん、
急にトイレがしたくなった。[plc]
な、なんでこういう時に限って……[lr]
も、漏れそう。[lr]
寮よりトイレを先に……[plc]
真緒
「う~トイレトイレ」[plc]
今、トイレを求めて全力疾走しているぼくは[r]
大学を出たばかりのごく一般的な男の子だ。[plc]
強いて違う所をあげるとすれば、教師だって所かな?[plc]
名前は、要真緒。[plc]
なぜ改めて自己紹介をしているのか自分でもわからないが、[l]
とにかく、トイレを求め寮の敷地内をさ迷っていたのだ。[plc]
ふと見ると、中庭のベンチに一人の若い少女が座っていた。[plc]
真緒
「やった、人がいた……」[plc]
そう思っていると突然その少女は[lr]
ぼくの見ている前で服のボタンを
はずしはじめたのだ……![plc]
真緒「な、なにしてんの君!!」[plc]
??「お?[l] 熱いからよ、脱ごうと思ってさ」[plc]
真緒「だ、駄目だよ! 女の子が外で脱いだりしちゃ」[plc]
??「なんだいキミは? 失礼な人だな。[lr]
俺は男だぜ?」[plc]
真緒「え? 男? でも……」[plc]
??「所でだ、キミはいったい何者なんだ?[lr]
不審者なのか?」[plc]
真緒「あっと、ぼくは要真緒。[lr]
今日から学園の教師と寮の監督でここへ来たんだけど、
ちょっと迷っちゃってね」[plc]
??「ああ、キミがそうだったのか」[plc]
真緒「そうなんだよ、それで今、トイレがしたくなって探し回ってたんだ」[plc]
??「なるほど……トイレか」[plc]
真緒「君、ど、どこか近くにないかな?」[plc]
??「阿部高和(あべたか・なごみ)だ。[lr]
そうか、キミだったのか……」[plc]
真緒「阿部高和ね。よ、よろしく……」[plc]
和「苦しそうだな。よし! ついて来い!」[plc]
真緒「あ、ありがとう」[plc]
自分の事を俺と呼んでいる少女に連れられ、
ぼくはトイレへと向かう。[lr]
たぶんこの阿部高和も寮の生徒だろう。[plc]
寮の生徒だけあって、普通じゃない気がするが今はそれよりも……
トイレを終えたら、ちゃんと話をしてみることにしよう。[plc]
和「ここだ」[plc]
真緒「ありがとう、ちゃんと男女別になってるね」[plc]
和「ああ、こっちだ」[plc]
真緒「助かったよ……」[plc]
促され、男子用へと歩き出した。[plc]
……のだが、ぴったりと後ろをついてくる阿部高。[plc]
なぜついてくるんだろう?[lr]
ぼくの考えすぎか?[lr]
いや、でも普通は外で待ってるよな……[plc]
そんな事を考えている間に、トイレの中へ足を踏み入れていた。[plc]
真緒「わっ、暗いな。ええと、電気は……」[plc]
和「相変わらず壊れたままだな。[lr]
ま、普段使わないし仕方ないか」[plc]
真緒「ああ、そうなんだ。[l]点かない……って、ええ!?」[plc]
和「どうしたい?」[plc]
真緒「どうしたじゃないよ!! な、なんで中まで入ってきてるの!?」[plc]
和「ん? なにを騒いでるんだ。俺は男だぜ」[plc]
真緒「君は女の子でしょうが!」[plc]
和「おいおいおい、どこをどう見ても良い男だぜ」[plc]
真緒
「と、とにかく側にいられると出来ないから、外に出てて!」[plc]
和「ん。恥ずかしいのか?[l] なに、暗いから心配してるだけさ。俺の事ことは気にしないで出したまえ」[plc]
真緒「心配しなくても大丈夫だから!」[plc]
和「そうかい? だが、そんなに震えてるじゃないか。
暗いのが怖いんだろう? もっと力抜けよ」[plc]
真緒「これは我慢してるからで……[lr]
頼むよ、ほ、ほんと漏らしちゃいそうなんだ」[plc]
和「……そうか、それなら仕方ないな」[plc]
和「外で待ってるぜ」[plc]
真緒「………」[plc]
トイレから出て行くのを確認した後、無事に用を済ませた。[plc]
しかし、中に入ってこようとするなんて……[lr]
とんでもない子だ。[lr]
物騒な世の中だと言うのに。[plc]
和「終わったかい?」[plc]
真緒「あ、うん。とにかくありがとう」[plc]
和「いいってことよ」[plc]
真緒「君は寮の子だよね?」[plc]
和「ああ」[plc]
真緒「そっか。さっきはバタバタしてたし、あらためて挨拶するよ」[plc]
真緒「今日から寮の監督になった要真緒。よろしくな」[plc]
和「ほう、礼儀正しいんだな」[plc]
和「なかなかキミは……良い男だな」[plc]
真緒「え?」[plc]
和「言葉どおりだ……」[plc]
阿部高がじっとみつめてくる。[lr]
妙な眼差しなのは気のせいか?[lr]
全身なめ回すように見てくるっていうか……[plc]
真緒「あのさ、ついでに寮にも案内してもらえないかな?[l]
敷地が広くってさ、分かんないんだよね」[plc]
和「あ…ああ、お安い御用だぜ」[plc]
真緒「良かった。じゃあ、案内してもらおうかな」[plc]
和「その前にだな……」[plc]
真緒「君もトイレかな? 今度はぼくが待ってるよ」[plc]
和「いや、違うんだ」[plc]
真緒「じゃ、どうしたの?」[plc]
阿部高「やらないか」[plc]
真緒「……えと?」[plc]
和「どうやら俺は……キミを気に入ったらしい。
しかし、こんなに良い男だとはな」[plc]
真緒「な、何をいってるの?」[plc]
和「恥ずかしがらなくていいんだぜ。[l]さぁ、もう一度トイレに入ろうか」[plc]
真緒「あ、あのね。女の子が変な事いっちゃ駄目だって。[l]
それにキミじゃなくてぼくの事は先生って呼ばないと駄目だから」
和「さぁ、暗くなる前にやらないか」[plc]
真緒「あのね、聞いてる?」[plc]
和「男は度胸だぜ」[plc]
駄目だ……聞いちゃいない。[lr]
ぼくをトイレに引っ張り込もうと躍起になってる。[plc]
大体何をするつもりだ?[lr]
やっぱり……[plc]
真緒「だめだだめだ! 何馬鹿な事を言ってんの!?」[plc]
和「男は馬鹿な位でちょうどいいんだぜ」[plc]
真緒「あのね、もっと自分を大事にしないと」[plc]
和「大事にしてるさ。[l]それより、いい加減キミも素直にな──」[plc]
真緒「ん?」[plc]
和「おっと、残念ながら今日は無理なようだ」[plc]
真緒「え?」[plc]
寮長「先生、こんな所にいたんですか。ずいぶん探しましたよ」[plc]
真緒「あ、寮長」[plc]
寮長「見つかって良かった……」[plc]
真緒「こっちも色々と助かったよ……」[plc]
和「チッ。まったく良い所で」[plc]
寮長「こんな所にいるなんて思いませんでしたよ。あまり人が来ない所ですから」[plc]
真緒「そ、そうなんだ」[plc]
寮長「あら? 阿部高さんと一緒だったんですね」[plc]
真緒「あ、偶然会っちゃってね」[plc]
寮長「こんな所で何かしていたんですか?」[plc]
トイレに引きずり込まれそうになりました。[lr]
なんて言えるわけない……[plc]
真緒「い、いや。ただトイレに連れてきて貰っただけだよ」[plc]
和「なーに、ナニをしようと誘っていたのさ」[plc]
真緒「いぃっ!?」[plc]
寮長「先生……」[plc]
真緒「違う、違う! ぼくはそんな!」[plc]
寮長「……ふふっ。分かっていますよ。心配なさらずに」[plc]
ほっと胸をなで下ろす。[lr]
妙な噂が流れる心配は無さそうだ。[plc]
阿部高も急に何を言い出すのやら……[lr]
これから先この子には気をつけないとな。[plc]
寮長「それでは、寮に戻りましょうか」[plc]
真緒「ああ、お願いするよ」[plc]
阿部高「ああ」[plc]
莉緒たちもこんな感じだったらいいのに……[lr]
と、寮長を見ながらつい思う。
さて、これで寮生六人と対面したわけだけど、
まだ寮にもいるかもしれないんだよな。[plc]
ふぅ……憂鬱だ。[plc]
最終更新:2010年07月12日 23:48