7◆◆◆◆◆◆◆
――――その頃ジローは、学校の屋上で明けていく空を眺めていた。
頭を冷やすための場所としてここを選んだ理由は、やはり自分でも分からない。
しいて言えば、何となく、だろうか。気が付けばここへ足を運んでいたのだ。
まあそれでも、ここなら風にも当たれるし、時間を置けば冷静になれるだろう。
(それで? 冷静になってどうするんだ?)
そう考えていると、またあの声が唐突に聞こえてきた。
正体のわからない、自分を『オレ』だと名乗る『何か』。
「……………………」
その『オレ』が投げかけてきた疑問。
――――冷静になってどうするのか。
…………どれだけ考えても、答えは出てこなかった。
レオに謝るのか? ……謝ってどうする。形だけの謝罪に、なんの意味がある?
それにそもそも、なんで俺は、レオの言葉に反感を覚えたんだ?
……そうだ。それが解らなければ、きっとまた同じことを繰り返す。
だから答えを出すには、まずレオに反感を覚えた、その理由を見つけないといけない。
けどそのためには、一体どうすれば………。
(おいおい。人が質問しているのに、だんまりはないんじゃないか?)
「……うるさいな。ならお前だったらどうするんだよ」
(ケケケ。今まで散々人のアドバイスを無視しておいて、判断に迷ったらオレに頼るのかよ。いい根性してるな)
「ッ…………」
『オレ』の言葉に、強い苛立ちを覚える。
唐突に出てきては、毎回ろくでもないアドバイスをしに来るこいつは、一体何が目的なのか。
(けどまあ、訊かれたなら答えてやろうじゃないか。
オレならそうだな、やっぱり殺し合いに乗るぜ。どうにかして武器を取り戻せば、何とかなるだろ。
お前のHPは半分以下に減ってるが、あのDG-0とかいう銃なら、その減った分威力も上がってるはずだろ。
それでもあのガウェインとかいう騎士には敵わないだろうが、そこはほら、あのガキを人質にすればいいんじゃないか?)
「っ……! ふざけるな、そんなことできるか!
ほんとなんだよお前、結局そんな事しか言わねぇじゃんか。訊いた俺がバカだった。
言ったはずだぞ、俺は絶対に殺し合いには乗らないって!」
(あの妖精の女と同じで、これがデスゲームだと実感できてなかったくせにか?)
「ぐっ………!」
その言葉に反論できず、思わず言葉に詰まる。
―――デスゲームだと実感できていない。
『オレ』の言ったことは、まぎれもない事実だったからだ。
メールが来るまで遠坂が死んだことを実感できていなかった以上、それを否定することはできない。
………それにしても、どうしてこいつは、こう俺の弱いところを狙ったように突いてくるのか。
本当に嫌になるくらい、こいつの言葉は的確だ。
(お前はいつもそうだ。状況も理解していないくせに首を突っ込んで、それで結局危険な目にあっている。
オレはちゃんと言ったぞ? とんでもないことに巻き込まれて後悔するぞって。それを無視したのはお前だろ)
「っ………………」
それは……確かにその通りだ。
呪いのゲームを解決しようとして、その結果、デウエスやドラゴンと戦う羽目になったことは間違いない。
こいつの言った通りに逃げ出していれば、きっとそんな事には巻き込まれなかっただろう。
(なあ、もういいんじゃないか? お前は十分に頑張ったじゃないか。
それなのに、なんで今度はこんな事に巻き込まれなきゃいけないんだ? もういい加減、うんざりだろ)
「……………………」
………ああ、そうだ。
本当に、なんでこんな事に巻き込まれているのか。
俺はただのフリーターだぞ。将来の事を考えるのなら、とっとと仕事を見つけないといけない。
それなのにどうして、あんな非現実的なモノと戦ったり、こんなデスゲームに巻き込まれたりしなくちゃいけない。
(楽になれよ。メンドクサイことは全部忘れて、好きにやっちまえばいいじゃねえか。
ここで死んだら現実でも死ぬ? それがなんだよ。それが本当か確かめる方法はないだろ)
「…………楽に」
(第一、これはゲームなんだ。ただそういう
ルールってだけのさ。だったら好きなように楽しむのが一番じゃねぇか。
――ああ、そうだ。このゲームの報酬、覚えてるか?
ネットを支配できるんだろ? そうしたら好き放題できるぜ。もう仕事を探す必要もない。きっとあのツナミだって目じゃないだろ)
「楽しむ…………」
………そう言えば、ミーナが言ってたっけ。ツナミはネットを支配しているって。
ならばこのデスゲームで優勝してその支配を奪えば、実質的には世界を支配したことになるのだろうか。
だとしたら、確かに働く必要はなくなるだろう。あるいは、パカの目標であるツナミへの復讐も可能になるかもしれない。
……そうしたら、パカは喜んでくれるだろうか。
もしそうなら、あるいは――――
「……ああ、そうだな。それもいいかもな」
(だろう? なら悩むことはないって。テキトーにいこうぜ、デキトーに。
安心しろって。仮に死んだとしても、その時に考えればいいさ。―――本当に死んじまうんなら、もう何も悩むことはないしな)
実際に死ぬのだとしても、所詮はゲーム。楽しめばいい。
優勝したら、一生遊んで暮せて、もし死んでも、もう何も悩まなくて済む。
―――ああ、それはなんて「楽」な選択だろう。
ただ現状を楽しむだけで、考えることをやめるだけで、こんなにも気分が軽くなる。
……………………けれど。
「……それじゃあ、あの子はどうすんだよ」
(あの子?)
「トモコちゃんだよ。お前はあの子も、殺すっていうのか?」
パカと同じように、王子様の格好をした少女。
デスゲームのルールでは、生き残れるのは一人だけ。
もし優勝を目指すのだとすれば、当然あの少女も殺さなくてはいけない。
「それにパカは? もしパカも巻き込まれていたら、お前はパカも殺すのか?」
(……………………)
「ふざけるな! そうやって優勝して自分だけ生き残って、一体なんになるんだよ!」
恋人を殺してでも生き延びる? まったく笑えない。それでは何のために優勝するのだか分かったもんじゃない。
確かにネットを支配すれば、働く必要はなくなるだろう。死んだ後のことだって、極論すれば自分には関係ないことだ。
けれどパカのいない世界で、一人自堕落に生きてどうする。あるいは俺が死んだ後、一体誰がパカを守るというのか。
………ああ、そうか。ようやく解った。
こいつの言う通りにすれば、きっと俺は「楽」になっただろう。
デウエスと関わることもなく、ドラゴンに襲われることもなくいられた。
けれど代わりに、開田を助けることも、パカに会うこともできなかったはずだ。
そう。こいつのアドバイスには、『俺』以外に関することが全く抜け落ちている。
つまりこいつは、『俺』が楽になる事しか考えていないのだ。
そこまで考えて、ようやく理解した。こいつの正体はおそらく―――
「………そうか、わかったぞ。お前は、俺のエス(深層意識)だな」
認めがたい真実を、しっかりと前を見据えて口にする。
(――――――――)
ニヤリと、姿が見えているわけでもないのに、『オレ』が笑ったような気がした。
それで確信を得る。こいつはカオルのエス(深層)だったデウエスと似た、俺の深層意識が表面化した存在なのだ。
詳しい理由は分からないが、こいつが表面化するようになったのは多分、エスが実体化した存在であるデウエスと接触したからだろう。
事実、こいつの声が聞こえるようになったのは、開田がデウエスに消されてからの事だ。
こいつは俺のエス(深層)。だから俺の気付いていない本心や弱音を、アドバイスという形で示してくる。
デウエスが多くの人間を取り込んでまで「しあわせ」になろうとしたように。――こいつは『オレ=俺(自分)』が「楽」になりたいために現れるのだ。
「……ああ、そうか」
そうしてようやく気付いた。
自分がなぜ、レオの言葉に反感を覚えたかを。
きっと俺は、無意識のうちに「楽」に逃げようとしていたのだ。
決してデスゲームを認めようとしなかった、あの妖精の少女のように。
だから心のどこかで、あの少女に共感を覚えていたのだろう。そして………。
“―――長い間眠ったままだったお兄ちゃんが、ようやく帰ってきたのに―――”
あの時、妖精の少女はそう言って取り乱した。
きっと以前にもあったのだ。少女の世界で、デスゲームが。
そしておそらく、少女の兄がそのデスゲームに巻き込まれたのだろう。
だから少女は、デスゲームを否定した。現実から目を逸らし、大切な人を失う恐怖から逃げたのだ。
けれどレオは、その恐怖を些細なことのように口にした。
死んでしまった十二人の中に、誰かにとっての大切な人がいたかもしれないのに、「残念だ」「仕方がない」と、そんな言葉で終わらせた。
―――それが理由。
少女に共感を覚えていた俺は、だからレオの態度に反感を覚えたのだ。
「まったく、本当に情けないな、『俺』は」
そう言って自嘲する。
こんな調子で、このデスゲームを生き残れるとは思えない。ましてや呉の代わりにパカを守るなど、とうてい不可能だろう。
レオの様な冷静さを持ちたいとは思わないが、生き残る気があるなら、パカを守るつもりならもっとしっかりしなければ。
「……あれ? そう言えばあいつ、さっきから何も言ってこないな。
……まあいっか。今はまず先に、レオに謝らないとな」
そう口にして気合を入れる。
自分と向き合ったからか、いつの間にか『オレ』の声も聞こえなくなっている。
だがどうせ、心が弱った時にでも出てくるだろう。その時はまた『自分』と向き合えばいいだけだ。
『オレ』の正体も判った。反感を覚えた理由も分かった。今度はちゃんと、レオの話を聞けるだろう。
だが何を話すにしても、まずそれからだ。そうすることで、もう一度レオと向き合えるのだから。
そう思いながら屋上から校舎へと戻ろうとして、ジローが開けるより早く、屋上の扉が開かれた。
「あ、ジローお兄ちゃん、ここにいたんだ。
………その様子だと、もう大丈夫みたいだね」
屋上へと姿を現した少女は、ジローの様子を見てそう口にする。
どうやらまた心配をかけたようだ。
「トモコちゃん、どうしてここに?」
「レオお兄ちゃんからジローお兄ちゃんを励ましてって頼まれたの」
「そっか。俺もレオに謝りに行こうと思ってたんだ」
「そうなんだ。でもレオお兄ちゃん、今はダンジョンにいるから、それはまた後でかな」
「ダンジョン?」
「うん。それは後で説明するね。
それより、桜さんが呼んでたよ。お兄ちゃんに回復アイテムを渡したいんだって」
「そうなのか? なら急いで保健室に戻らないとな」
今は持っていないが、DG-0の効果を考えれば、急いで回復する必要はない。だが安全のためにも、回復アイテムは貰っておくべきだ。
レオの方はダンジョンとやらにいるらしいが、まあ保健室で待っていれば大丈夫だろう。
「それじゃあ行こうか、トモコちゃん」
そう少女に声をかける。
……ああ、そうだ。パカの代わりとは言わないが、可能な限り、この少女の事も守ろう。
彼女とパカは全くの別人だが、やはり似た格好の女の子が死ぬところは見たくない。
そう思いながら、ジローと少女は屋上を後にした。
その心に小さな、だが確かな決意を秘めながら。
やる気が 5上がった
こころが 10上がった
信用度が 1あった
†
――――そうして、エネミーを倒し迷宮を踏破し、その場所へと辿り着く。
七の月想海・下層の最奥。その先にある闘技場へと繋がるゲートへと。
「……………………」
魔力の消耗は、そろそろ無視できない段階に至っている。
闘技場のボスを倒したら、本格的に休息をとるべきだろう。
モラトリアムに入った学園内ならば、それは十分に可能なはずだ。
その間にでも生徒会室を改竄すれば、有意義な時間にもなるだろう。
「ボスを倒した後、一度学園へと帰還します。
油断せずいきましょう、ガウェイン」
生徒会室の改竄プランを練りつつ、レオはゲートへと足を進める。
……が、その足はほんの数歩で止められた。
自身に追従するはずの足音が、聞こえなかったからだ。
「ガウェイン、どうしました?」
「……………………」
背後へと振り返り、声をかける。
ガウェインは何かを迷うような、どこか難しい表情をしていた。
「…………王を補佐する騎士としては、このまま黙しているべきなのでしょう。
ですがそれを承知の上で、一つだけお聞きさせて下さい」
「……なんでしょう」
珍しく自分から質問を投げかけてきたガウェインを、レオは少し不思議に思いながらも応じる。
それによってガウェインは、意を決したようにレオへと視線を向けた。
「迷いは決断を躊躇わせ、その剣を鈍らせる。
レオ、この探索における貴方の指示は完璧ではありましたが、しかしどこか精彩を欠いていました。
故にお聞かせいただきたい、我が王よ。貴方は今、何を悩んでおいでですか?」
「――――――――!」
ガウェインの問いかけに、レオは思わず目を見開く。
自分では隠し通せているつもりだったが、どうやら彼には見抜かれていたらしい。
そして自らを剣に徹しているガウェインが、自分から意を投げかけてくるのは余程のことだ。
……ならば、彼の王として、その問いに答えなければなるまい。
そう判断し、レオは自らの内心を口にした。
「…………人が死んで、なんで冷静でいられるのか。
ジローさんにそう問われた時、僕は言うべき言葉が見つけられませんでした。
いえ。理由を理解させる言葉は思い付いても、感情を納得させる言葉がわからなかった」
それは、彼が王として育てられ、そう生きてきたが故の未知だった。
決勝戦にて敗北するまで、絶望を、そこから這い上がろうとする強い意志を知らなかったように、
人が他者の死に対して懐く恐怖を、理不尽な離別を恐れる感情を、正しく理解できていなかったのだ。
「西欧財閥の次期当主である僕にとって、人の死は、その人物が生まれた時より定められたものでした。
そう。多少の誤差はあれど、その死は初めから決まっていた。何故ならそのようにデザインされた人生を、その人物は生きてきたのだから。
故に恐れる必要も、悲しむ必要もないと。そう教育を受けてきた僕は、きっと、誰かの死を本当に悲しんだことはないんです。
兄さんの時がそうだったように、おそらくは、母の時も………」
「レオ…………」
「そんな僕の言葉が、彼に届くとは思えなかったんです。
情けない話です。人を総べる王であるはずの僕が、その実、人の感情を理解していなかったとは。
……そうか。これが弱音、というヤツなんですね。本当に非生産的だ。
すみません、忘れてください。これは王が口にするべき言葉ではありませんでした」
そう言って薄く笑うレオにかける言葉を、ガウェインは思いつかなかった。
単純な悩みであれば、誰かに話すだけで少しは軽くなるだろうと思っての問い掛けだった。
だがまさか、完全性から欠落したがゆえに現れた、王ではなく人としての悩みだとは思わなかったのだ。
……けれど、王としての自分に戻ろうとするレオの横顔を見て、一つ思い出したことがあった。
だから、問いを投げかけた者の、せめてもの責任として、それを話すことにした。
「――――“アーサー王は、人の気持ちが分からない”。
かつてそう残して、王城(キャメロット)から去っていった騎士がいました」
「ガウェイン?」
それは、もう終わってしまった、決して変えられない過去。
騎士王の率いるブリテン軍が、何度目かの戦いを勝利で収めた後の事だった。
「彼の君は完璧な王でした。
政務においては公平無私であり、一寸の狂いもなく国を計り、その選択は常に正しかった。
戦場では失われていた騎馬形式(カラフラクティ)を再構成し、常に先陣に立って敵を駆逐し、ブリテンに勝利を齎した。
その王聖に疑う余地はありませんでしたし、そもそも、王は正しかったのですから疑う意味などないでしょう」
何しろ国は完璧に守られていたのだ。
そして王が完璧である以上、どのような不満があろうとも、騎士は王を認めざるを得なかった。
そう。アーサー王はあらゆる外敵から国を守り、国内のあらゆる問題を解決していった。
ただ一つ。騎士たちの中にある、王への不信だけを除いて。
「そんな王の立てた政策の一つが、戦いの前に自国の村を干上がらせ、軍備を整えることでより多くの村を守る、というものでした。
それが彼の君がブリテンを守るために出した結論であり、事実、当時においてはそれが最善の政策であったことに間違いはありません。
ですが、戦いの前から犠牲を出してしまうその政策は、犠牲を出さずに勝利するのが常道である騎士たちには不満だったのでしょう。
彼の騎士が城を去ってからというもの、王がいくら勝利を重ね、国を安定させようと、騎士たちは王に対する反感を強めていきました」
その結果が、カムランの丘だ。
王のいぬ間に造反を起こしたモードレッドと、それに呼応した多くの騎士たちとの戦い。
その戦いで、多くの騎士が散っていった。その中には、アーサー王とガウェイン自身も含まれた。
「私とランスロット卿との確執は別として、時折ふと思うことがあります。なぜ彼らは、アーサー王を理解してくれなかったのか、と。
もし騎士たちが夢物語など見ず、国の現状を正しく認識し、王の政策を正しく理解していれば、あの結末は違ったものとなっていたのではないかと。
…………ですが、先ほどのレオを見て、今にして思ってしまったのです」
そう言って言葉尻を弱めるガウェインは、いつもの彼らしくない様子だった。
それは、ある種の後悔ゆえか。白騎士は変えられない過去を振り返り、暗い面持ちで言葉を続けた。
「
岸波白野のサーヴァントの言った言葉を覚えていますか? 彼の騎士王は人のまま王となった。だからこそ尊いのだと。
そう。彼の君は王であると同時に人であった。ならば、人の気持ちが分からないはずがない。
……しかし、だとすれば、彼の騎士が人の気持ちが分からないと残して城を去っていった時、彼の君は一体何を思ったのでしょうか、と」
人のまま王となったアーサー王。
彼の懐いていた苦悩を、ガウェインは想像できなかった。いや、苦悩を懐いていたかもしれないことにさえ、思い至らなかった。
なぜならば、ガウェインが崇拝したのは王としてのアーサー王であり、人としてのアーサー王ではなかったからだ。
そして戦場を駆ける王の姿に迷いはなく、玉座に身を預けた王の眼に憂いはなかった。
人としてのアーサー王など、どこにも存在しなかった。王はいついかなる時でも王であり続けたからだ。
故に、王としてのアーサー王を善しとしていた自分に、王の人としての感情を、その心を見出せるはずがなかった。
……ならば己も、あの騎士たちと同じように、アーサー王の事を正しく理解できていなかったのではないか?
と、ついそんな事を思ってしまったのだ。
「ガウェイン………」
「申し訳ありません。騎士としてあるまじき弱音でした。お忘れください」
そう言って騎士の礼を取るガウェインを、レオは驚きの表情で見つめた。
己の騎士がそのような煩悶を抱えていたこともそうだが、それをわざわざ打ち明けてくれたことに驚いたのだ。
それは、彼なりの励まし方だったのだろう。でなければ、わざわざ己が悔いを口にする必要はない。
そして同時に、これは訓戒でもある。人の感情がないものに、人を治めることはできないという逸話。
感情なき統治では、王に疑念を懐き、反感を覚える者もいるということだ。その代表例が遠坂凛だろう。
「………どうやら、敗北以外にもまだまだ学ぶべきことは多そうですね。僕も、貴方も」
「レオ……」
「あとこのことは、お互いに聞かなかったことにしましょう。ノーカンですよ、ノーカン」
「御意」
調子を取り戻し、敢えてふざけた様に口にするレオに、ガウェインは小さく微笑んで応えた。
そう。これはお互いの胸の内に秘めておくべき事柄だ。故に、これ以上の会話は不要だろう。
だがレオには一つだけ、ガウェインへと伝えておきたいことがあった。
「ですが、これだけは言わせて下さい。
――――ありがとうございます」
「……………………。
そのお言葉、ありがたく頂戴いたします」
レオは騎士へと感謝を述べ、ガウェインは主君へとより深く頭を垂れる。
それを見届けて、レオは改めてゲートへと向き直った。
「いきましょう、ガウェイン。
僕たちには、まだやるべきことが残っています」
「はっ!」
白騎士を従えるその姿に迷いはなく、先を見据えるその眼に憂いはない。
常勝の王は決意を新たにし、今度こそ、王と騎士は第一の闘技場へと赴いた。
――――【第一層/七の月想海・闘技場】
そうして。
そこに待ちうけていたのは、赤と白の二体のドールだった。
白いドールは右手の剣を腰だめに構え、赤いドールはその背後で悠然と佇んでいる。
その様子はまるで、いやまさしく、マスター(レオ)とサーヴァント(ガウェイン)の在り様そのままだった。
「……ドール、ですか。
それもただのドールではなく、おそらく僕たちのステータスをコピーしているようですね。
どうやら最初のボスは、僕たち自身のようです。己を超えられぬものに、先へ進む資格なし、ということでしょうか」
「そのようですね。
ですが脅威ではありません。見たところスキルはコピーできても、宝具の複製までは不可能のようですし。
第一、このような写し身程度で、今の我々を止めることは不可能でしょう」
そう口にするどちらの声にも、恐れも気負いも感じられない。
二人はすでに、この敵を障害とさえ見做していないのだ。
「レオ、勅令を。
貴方の前に立ち塞がるモノは、全て我が剣で切り伏せましょう」
「もちろんです。貴方に力を、ガウェイン」
そうして王は命を出し、騎士は剣を構える。
それに呼応し写し身の人形も同様に剣を構えるが、しかし。
「この身、この心、この剣―――全て我が王のために。
いざ燃え尽きるがいい、空ろなる者たちよ!」
迷いの消えた二人にただの鏡像が敵うべくもなく、
十数合の剣戟の後、二つの人形を太陽の聖剣が粉砕し、
王と騎士は当然のように学園へと凱旋したのだった――――。
【B-3/日本エリア・月海原学園/一日目・朝】
【チーム:対主催生徒会】
[役員]
会長 :レオ・B・ハーウェイ
副会長:サイトウトモコ(スカーレット・レイン)
書記 :空席
会計 :空席(予定:ダークリパルサーの持ち主)
庶務 :空席(予定:岸波白野)
雑用係:ハセヲ(外出中)
雑用係:ジロー
[チームの目的・行動予定]
基本:バトルロワイアルの打破。
1:(レオの)理想の生徒会の結成。
【ジロー@パワプロクンポケット12】
[ステータス]:HP35%、小さな決意/リアルアバター
[装備]:なし
[アイテム]:基本支給品一式、不明支給品0~2(本人確認済み)
[ポイント]:0ポイント/0kill
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:まずはレオに謝る。他の事はそれから。
2:保健室で桜からアイテムをもらい、レオが戻ってくるのを待つ。
3:トモコちゃんの事も、可能な限り守る。
4:『オレ』の事は、もうあまり気にならない。
[備考]
※主人公@パワプロクンポケット12です。
※「
逃げるげるげる!」直前からの参加です。
※パカーディ恋人ルートです。
※使用アバターを、ゲーム内のものと現実世界のものとの二つに切り替えることができます。
【スカーレット・レイン@アクセル・ワールド】
[ステータス]:HP100%、(Sゲージ0%)、健康/通常アバター
[装備]:緋ニ染マル翼@.hack//G.U.
[アイテム]:インビンシブル@アクセル・ワールド、DG-0@.hack//G.U.(4/4、一丁のみ)、赤の紋章@Fate/EXTRA、桜の特製弁当@Fate/EXTRA、基本支給品一式
[ポイント]:0ポイント/0kill
[思考]
基本:情報収集。
1:一先ず猫被ってハセヲやレオに着いていく。
2:ジローに話し合いで決まったことを伝え、レオの帰還を待つ。
3:レオに対しては油断ができない。
4:自力で立ち直ったジローにちょっと関心。
[備考]
※通常アバターの外見はアニメ版のもの(昔話の王子様に似た格好をしたリアルの上月由仁子)。
※S(必殺技)ゲージはデュエルアバター時のみ表示されます。またゲージのチャージも、表示されている状態でのみ有効です。
【レオナルド・ビスタリオ・ハーウェイ@Fate/EXTRA】
[ステータス]:HP100%、MP25%、令呪:三画
[装備]:ダークリパルサー@ソードアート・オンライン、
[アイテム]:桜の特製弁当@Fate/EXTRA、トリガーコード(アルファ)@Fate/EXTRA、基本支給品一式
[ポイント]:853ポイント/0kill
[思考・状況]
基本行動方針:会長としてバトルロワイアルを潰す。
1:本格的に休息を取り、同時に理想の生徒会室を作り上げる。
2:モラトリアムの開始によって集まってくるであろうプレイヤーへの対策をする。
3:他の生徒会役員となり得る人材を探す。
4:状況に余裕ができ次第、ダンジョン攻略を再開する。
5:ダークリパルサーの持ち主さんには会計あたりが似合うかもしれない。
6:もう一度岸波白野に会ってみたい。会えたら庶務にしたい。
7:当面は学園から離れるつもりはない。
[サーヴァント]:セイバー(ガウェイン)
[ステータス]:HP130%(+50%)、MP85%、健康、じいや
[装備] 神龍帝の覇紋鎧@.hack//G.U.
[備考]
※参戦時期は決勝戦で敗北し、消滅した後からです。
※レオのサーヴァント持続可能時間は不明です。
※レオの改竄により、【神龍帝の覇紋鎧】をガウェインが装備しています。
【インビンシブル@アクセル・ワールド】
スカーレット・レインの強化外装。
主砲、ミサイルポッド、機銃つきコクピット、背面スラスター、脚部の5つのパーツで構成されている。
彼女のレベルアップボーナスが全て注ぎ込まれており、通常攻撃でさえ直撃すれば対戦相手を一撃で倒し得る程の火力を誇る。
【緋ニ染マル翼@.hack//G.U.】
糸切バサミのような形状の、トゲの付いた赤い拳当。
第七相の碑文使いのロストウェポン。条件を満たせば、パワーアップする(条件の詳細は不明)。
・無垢ノ報復 :通常攻撃時にバッドステータス・マヒを与え、かつクリティカル発生確率が25%アップする
【赤の紋章@Fate/EXTRA】
撃墜王の証となる赤の紋章。更なる記録更新を狙え。
・boost_mp(150); :装備者のMPが150上昇
【桜の特製弁当@Fate/EXTRA】
桜の愛情がたっぷりこめられた手作り弁当。味はそれなり。
・使用者のHPを中回復&不利状態解除
【トリガーコード(アルファ)@Fate/EXTRA】
本来は聖杯戦争の一回戦用トリガーキーの一つ。
このバトルロワイアルにおいては【第二層/六の月想海】へと入場するために使用される。
[全体の備考]
※月見原学園にてモラトリアムが開始されました。
※今回のモラトリアム期間中に保健室へ訪れると、NPCの間桐桜から一度だけ【桜の特製弁当@Fate/EXTRA】が支給されます。
※月見原学園・用具倉庫にて、ダンジョン【月想海】が解放されました。ただし、不正規な手段による解放であるため、修正される可能性があります。
ダンジョン【月想海】のルールは、下記の通りになります。
1.ダンジョン【月想海】は【七の月想海】を最上層とし、【六の月想海】【五の月想海】と段階的に深くなっていく。
またダンジョンの階層は月想海ごとに上層、下層、闘技場の三階層に別れており、各ゲートから直接校舎に帰還することも可能。
2.ダンジョンの下層フロアではミッションが課せられ、闘技場へ赴くにはこれをクリアする必要がある。
ただし、ダンジョンから脱出した場合、進行中のミッションはリセットされる。
3.ダンジョンのフロア内にはエネミーと呼ばれる敵性プログラムが徘徊しており、これは倒すことで階層に応じたポイント(25×n)を獲得することができる。
4.闘技場では各層ごとに設定されたフロアボスと戦闘になり、これを倒すとより多くのポイント(125×n)とともに、トリガーコードが入手できる。
5.トリガーコードは所有していると、校舎の一階用具室から入手した階層の次の階層へと移動できる。
※例.【七の月想海】のトリガーコードを所有している場合は、【六の月想海】から探索を再開できる。
6.ダンジョン内でHPがゼロになった場合は当然死亡とみなされ、外と同じようにDeleteされる。
【第一層・七の月想海】
ミッション:ダンジョンの踏破
ボス:ドッペルドール
月の聖杯戦争で使用されたドールの亜種で、対戦プレイヤーのステータス、スキルやアビリティ、装備品をコピーしてくる。
ただし、あくまでも数値上での複製であり、一部を除く宝具、憑神や心意技などのシステム外スキルは使用できない。
最終更新:2014年02月03日 17:42