あ……ありのまま、今、起こった事を話すぜ!
いつものようにナーブギアを装着し、ALOにログインしたかと思ったら、
見たこともない場所に飛ばされ、そこに居た変な侍風のおっさんに殺し合いをしろと言われた。
な……何を言ってるのか分からないと思うが、私も何をされたのかわからなかった……。
どこかで聞いた事があるような状況に、桐ヶ谷直葉―――リーファは思わず溜息を漏らす。
『ソードアート・オンライン事件』
開発者、茅場晶彦によりプレイヤー約1万人がSAOの世界に二年以上拘束され、うち約4000人が死亡した歴史的大事件。
ゲーム内での死=現実世界での死という最悪のデスゲーム。
ログアウト不可能、PKを推奨するために仕掛けられた遅効性のウィルス。
異なる点はいくつかあるが、今の状況はSAO事件と酷似としている。
そして榊という男は確かに言ったのだ。
この場でPKされること――それは即ち真の死を意味する、と……。
「いやいやいやいや……ないって、常識的に考えて」
SAO事件を踏まえ、製造メーカーの品質検査や、行政の監査もかなり厳しくなっているのだ。
数十名のプレイヤーを捕らえ、デスゲームを行わせるなど、できるわけがない。
大方、新稼動するVRMMOのテスターとして召集されたというところだろうか。
もしかしたらALOの秘密イベントかもしれない。
「どっちにしたって、参加者に事前連絡がないって不躾にも程があるっての!
……いや、私が連絡のメール見逃してただけだよね」
長く伸びたリノリウムの冷たい床。規則正しく並んだ見慣れた形の扉。そしてそれを皓々と照らす蛍光灯群。
恐らくここは学校なのだろう。シルフというファンタジーの住人(という設定)のリーファには些か不似合いな場所だ。
ひとまずはここを探索してみることにしてみよう。
それに現代を舞台にしたMMOがどういったものか、興味がないと言えば嘘になる。
「えーっと、校舎は三階建てで地下一階に食堂と購買部が併設……校庭の横に弓道場があって……」
一階の掲示板に校舎見取り図があったので、MAPをバージョンアップしておいた。
視聴覚室や保健室などの他にも、敷地内には噴水、教会なども設置してあるらしい。
(教会があるってことは、ミッション系の学校なのかな……?)
などと少しの推測を交えつつ、とりあえず目に付いた『図書室』と書かれたプレートが付く扉を開けてみる。
――――いた。一人いる。
受付に座った、黒い学生服を着た女生徒。
年齢はリアルの自分より一つか二つ上くらいだろうか?
「あっ、いらっしゃい!
あなたもこのゲームのプレイヤーさんだね。
ようこそ、VRバトルロワイアルへ!
私はプレイヤーさんたちをサポートをする生徒会NPC、図書委員の間目 智識(まめ ちしき)だよ。
これから何度か会うことになると思うからよろしくね」
図書室のカウンターに座る女生徒がにこやかに話しかけてくる。
間目 智識……ちょっとあんまりにも安直なNPC名を不憫と思わざるを得ない。
「いいの、分かってるから……。
私も制作者に文句のひとつやふたつ言ってやりたいと常々思ってて…!」
「あははは……それで、ここでは何ができるの?」
「よくぞ聞いてくれました!
ここではプレイヤーさんたちの必要に応じて、データベースから様々な情報を閲覧できるようになってるの。
他プレイヤーの正体や秘密を探る際一つでもキーワードを得られれば、ここにある書物から有益な情報が得られる事もあるから」
と言っても、情報や手掛かりになるようなワードがなきゃデータが膨大すぎて検索できないんだけどね~。
「あはは~」と困り顔をしつつ間目 智識さんが付け加える。
「ふ~ん……。じゃ、ためしに『リーファ』で検索してみてくれない?」
「はいはい只今~」
間目 智識さんがPCに向かい、軽くキーボードを叩くとすぐにディスプレイに文字列が表示される。
《リーファ/Leafa》
登場ゲーム:アルヴヘイム・オンライン(ALfheim Online)
種族はシルフ族。鍛えられた剣の腕と反射神経で種族内五指に入る実力者。
飛ぶことに魅せられており、「スピードホリック」とも呼ばれる。
プレイスタイルは長刀を使った戦闘の他に、補助として風系の攻撃魔法や回復系も使いこなす魔法剣士型。
「ちなみにより詳細な情報さえあれば、さらなるデータ開示も可能になるよ!」
なるほど、単純なバトルロイヤルというわけではなく、情報の探りあいの要素も含まれるということか。
間目 智識さんによると類似した施設はここ以外にも何箇所かあるらしい。
「それと気づいてるとは思うけど、あと5時間ほどでこのエリアは《交戦禁止エリア》になるから。
交戦禁止中は私たちNPCが見張ってるから、くれぐれも注意してね!」
えっ、なにそれ聞いてない。
《交戦禁止エリア》
6:00~18:00までの時間中、校舎内は交戦禁止エリアとなっています。
期間中、交戦禁止エリア内で攻撃を行っているプレイヤーをNPCが発見した場合、ペナルティが課せられます。
「……一応掲示板と、プレイヤーさん方に配った【rule.txt】にもその旨を記載しておいたんだけど。
MAP画面からでも交戦禁止エリアか否か、残り何時間で交戦可能か、禁止か分かるようにしておいたというのに。
まったくこの子って子は……!」
ごめんなさい、見てませんでした。
そういえばアイテムの確認もよくしてなかった……。
間目 智識さんの小言を聞き流し、改めて【rule.txt】を確認すべく目の前にウィンドウを開く。
開かれたメニューの【ステータス】【装備】【アイテム】【設定】から【アイテム】の文字にタッチしようとして……。
ガラリと、図書室の扉が新たな来客を告げた。
▽
「……こ、こんばんわ……」
「ごきげんよう」
エキゾチックな衣装に身を包んだ、褐色肌の眼鏡っ娘だった。
考えてみれば、このゲームは問答無用のバトルロイヤル
ルールであり今の自分は丸腰。
相手も武器らしきものはもっていないが、それはこちらも同じ。
剣がなくとも魔法を駆使し戦えはするが、リーファが習得しているのは主に防衛と回復に関する魔法だ。
この眼鏡っ娘が手練のメイジならば敗北は必至。
「ちょちょ、ちょっと待って! 今戦うのなし!開始早々いきなりってないでしょ普通!?
私まだアイテムや詳しいルールの確認もしてないしっ!
な、なにも最初に出会った相手と戦うってワケでもないでしょ!?
だ、だから今は……」
「……?」
PK推奨のゲームでなにを言っているのか。
あぁ、この子も首傾げちゃってるよ……。
「つ、つまり、ねっ? まだ貴女もここに慣れたってワケじゃないんでしょ。
なら仲良くした方がいいと私は思うのよ。うんっ」
「つまり―――同盟を結びたいと?」
「そっ、そう!それが言いたかったのよ!」
あぁ―――我ながら、なんて都合のいい。
こんな妄言、誰が信じて……。
「計算通り……ですね」
ボソリと、インド風の女の子が眼鏡を持ち上げ呟く。
えっ。 この子いまなんて……?
「私はラニ。あなたと同様、聖杯を手に入れる使命を負った者。
あなたがここにおり、そして私に盟を持ちかけてくることは、全て分かっていました。
あなたを照らす星を、見ていましたから。
―――星が語るのです、あなたの事を。私は、ただそれを伝えただけ。
我が師が言った者が誰なのか。私は新たに誕生れる鳥を探している。その為に、多くの星を詠むのです。
あなたが、その鳥なのかは分かりませんが……」
Oh...
ア ト ラ ス パ ラ ダ イ マ イ ザ ー
「《蔵書の巨人》の最後の端末として、《最後の平行変革機》が存在したことの意味を証明するため、
私は自身の価値を示す必要がある。私はあなたを利用し、貴女は私を使用する。この盟はそういったもので構いません。
……貴女がそうなのかはわからない。ですが、貴女の星の傍には少し、他のマスターとは違う星が観測できる。
貴女がその星ではないにせよ、それに近しい貴女を観測することは有益だと判断します」
こいつぁヤベェ……!
いくらなんでもこの子、『設定』盛り過ぎ―――!
《蔵書の巨人》って……《最後の平行変革機》って……。
正直言ってることの半分、いや大半の意味が分からなかったし
もうこれ傍から聞くとただの電波じゃ(ry
【B-3/月海原学園・図書室/1日目・深夜】
【リーファ@ソードアート・オンライン】
[ステータス]:健康
[装備]:
[アイテム]:不明支給品1~3、基本支給品一式
[思考]
1:この子ダメだ…早くなんとかしないと。
2:SAO事件の再来なんて……ないよね?
[備考]
※参戦時期は不明です。
【ラニ=Ⅷ@Fate/EXTRA】
[ステータス]:健康/令呪三画
[装備]:
[アイテム]:不明支給品1~3、基本支給品一式
[思考]
1:師の命令通り、聖杯を手に入れる。
そして同様に、自己の中で新たに誕生れる鳥を探す。
2:リーファを利用し、使用してもらう。
[備考]
※参戦時期は不明です。
※交戦禁止エリアについて
6:00~18:00までの時間中、校舎内は交戦禁止エリアとなっています。
期間中、交戦禁止エリア内で攻撃を行っているプレイヤーをNPCが発見した場合、ペナルティが課せられます。
ペナルティ内容は秘密。またNPCに見つかりさえしなければ良いので交戦禁止中にもPKは可能なムーンセル使用。
最終更新:2013年05月28日 00:36