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Einen Kleine Universmusik -The Trajectorie of “Spur”- #1冒進

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眠っていた私の意識を、電子的な木琴のチャイムとそれに続く音が現実へ引きずり出した。
「乗客の皆様にお知らせします。間もなく、第7番コロニー『ケープホープ』へと到着します。コロニーに接舷が済み次第再びご案内します…」
顔に被っていた布を取り払い、窓の外を覗いてみると、大きなコロニーが見えた。
SSS社の運用するコロニー間貨客船の三等客室…要するに、「貨物扱い」の私たちは、身の丈に合わない大きなテクルシュミアの「ほしぞら号」の座席でうたた寝をしていた。
お世辞にも良い環境とは言えず、事故時に真っ先に死ぬ場所だがこの大きなビジネスチャンスのは換えられない。
「…チオ、おはよう。見張り代わるよ。」
「ありがとう…おやすみ…」
不寝番をしていたもう1人の乗員に声をかけ、拳銃を受け取り周りに目を光らせる。
一見静かな三等客室だが、よくみると周りの様子をチラチラと窺っている人がいる。
同情する訳でも無いし許す訳でもないが、気持ちは理解できる。私たちに、兄の遺品のほしぞら号がなければ私たちも物盗りになるしかなかっただろう。
そうしなければ、我々は生きていけないのだ。
…チオが沸かしてくれていた温かいコーヒーが身に染みる。そういえばほしぞら号に給湯ポットを乗せようと言い出したのもチオだったか。あの時は数世紀前の戦車じゃないんだから要らないと言ったが、こういうのもアリかもしれない。

「…ワルター・ファルダイシュパージェさん、と、チオグラチ・香椎・ヴェールさんで間違い無いですね?」
「はい。」
「大丈夫です!」
入境審査を特に苦労することなく通過して、ほしぞら号を停めてきた宙港がある中央区にほど近い安い空き家(事故物件らしい)を見つけて買い、近くの店でご飯を食べているところだ。
明日から働いて、お金を稼ぐ予定なのだ。今日くらい少し贅沢してもいいだろう。
「…ラー、メン?…ファル、食べたことあるの?」
「インスタントのなら…ちゃんとしたのは初めてだよ。」
そんなわけで、コロニー中央区一番街に来ている。
「…この、『ラーメン』を一つ、お願いします。」
「あいよ!」
メニューを指さしながら恐る恐る言うと、店主のおじさんの威勢のいい声が聞こえてくる。
私たちはまだ体も小さいから、2人で一人前くらいで十分なのだ。
「ラーメン一丁お待ち!」
「あ、ありがとうございます。」
因みに、初めて食べたラーメンはとても美味しかった。
これは今までの脳内美食番付で一位を独占していたチーズケーキを降格させるしかないかもしれない。

ベルネクレチオード語で「星空」は「Takhtalt(タヒタルト)」と言う。…兄から受け継いだ時点でこの船の登録名もタヒタルトだったので、「ほしぞら号」は非正式名称ということになる。でも、「ほしぞら号」の方が可愛いので私たちはそっちで呼んでいる。
「こちらタヒタルト、出航許可願います。」
「こちら管制。タヒタルト号、貴艇の航行目的はデブリ回収業務。同乗者は二名、間違いないですか?」
「こちらタヒタルト、問題ないです。」
「こちら管制、貴艇の発進を許可します。航宙の安全を祈っています。」
「こちらタヒタルト、ありがとうございます。発進します!」
…毎度毎度面倒だが、この儀式を済ませないと宇宙に出られないのだから仕方ない。
このように登録されていない船は密航船ということになり、オリゴ宙軍に見つかり次第拿捕されてしまう。
「…チオ、レーダーちゃんと見といてよ?」
「はいよ〜。」
…なぜ元々地球の低軌道上でちまちまとデブリを拾っていた私たちがこんなに遠くまでやってきたのかと言うと…
「ねぇ、ファル。これレーダー見る必要あるかなぁ?」
「無い、ねぇ…これは…宝の山だ…!」
ここ、l1とl4のちょうど中間。ここは先のスラヴァ戦役で大規模な戦闘の舞台になり、大量の、比較的大型のデブリが舞っている。その証拠に、レーダーは円状の画面の前半分全てが煌々と輝いていた。
元が兵器だから貴重な素材が多いし、売ろうと思えばいくらでも高値で売れるだろう。
「よーし!手当たり次第拾ってくよ。早速取り掛かろう!」
という私の掛け声に対して、
「おー!」
と元気な声が通信越しで返ってくる。
これだけあれば、もうもやしを食べなくて済むとか、私はもやし結構好きだったとか。そんなことを言いながら、ちょうど「ほしぞら号」の手すりに命綱をかけた時だった。
ふと、視界の端に光が見えたと思ったのもつかの間、私たちの目の前で、ほしぞら号のエンジンが強い揺れと衝撃と、閃光と共に消滅した。
「……は?」
何が起きたのか最初は理解できなかった。
「ファル!?無事!?」
「…あ、…うん。ごめん、ビックリしてて…」
チオのお陰で脳は一応理性を取り戻して思考を再開する。
壊れ方的にセンチ単位の高速デブリか、あるいは石片かその辺だろうか。
とにかくマズい。エンジンが壊れて
電源が失われてしまって長距離通信もできないし、何より帰れなくなってしまった。
「…とりあえず救難信号を出そう。二人だけじゃどうにも動けないし、あとは体力と物資を消耗しないように…」
「…ねぇ見て、アレ。」
「こんな時にどうしたの…」
チオが指さす方向を見てみると、白と赤で塗装されたOA…の、胸部と頭の部分が漂流していた。
「…アレのリアクター、使えないかな?」
「ナイスアイデア!」

私たちの「ほしぞら号」は、元より改造機だった。
漂流してたOAから拝借したレールガン二問とロケットアンカー、それと主機もOA用の高出力NEKリアクターに換装してある。
こう言った違法改造は、命を賭けて軌道上を清掃する我々デブリ拾いだからこそ黙認されている、半ば特権のようなものだ。
「…一応、接続できたかな。どう見てもNEKリアクターじゃないけど…」
後部座席ごと後ろ半分を取っ払って、そのOAの機関部とエンジンノズルごと載せ替えて固定する。
あとは制御系統を…と思ったのだが、よくよく考えるとサイズも形状も、どう見てもNEKリアクターじゃない。私だってまともな学校を出ていないが、現場の経験と趣味で読んでいる本からの知識でそのくらいは分かる。その証拠と言わんばかりに、接続したほしぞら号の運転席ディスプレイにはエラーを示す赤色の画面が浮かび上がった。
「…だめだ、根本的に規格が違うんだ…」
「…ねぇ、私バカだから分からないんだけどさ…」
後ろで見ていたチオが声を上げる。彼女は読み書きもできないが、同じく現場の経験と、私なんか比にならない身体能力と、謎のカンの鋭さがある。
「…なにかまた良いアイデアが?」
「うん…いっそのこと制御系もOAから拝借しちゃダメなのかな…って。」
「確かに。」
そんなワケで古くなって傷み始めていた操縦席ともおさらばし、OAの操縦席をくっつけた。
…ついでに、残しておくのも何か違う気がしたのでそのOAの頭を回収した。
「それじゃ…起動!」
軍用のOAのコックピットをそのまま移植したため民間用のテクルシュミアの操縦席よりは流石に窮屈だが、起動には手間取らなかった。
手間取らなかった、のだが。
「…ちょっと…何この出鱈目な出力…」
バカげてる。こんな小型なのでPS式NEKリアクターを上回る出力なんて…
「…チオ、シートベルトをしっかり締めて…それからその頭、持って帰りたいならもうちょっと固定を強めて…」
「はーい。…なになに、もしかしてそんなにすごい出力なの?」
「…わかんない。試しに進んでみる。」
スロットルを前に押し倒した瞬間。爆発的な加速度で進み出した。
…5km/s。宇宙服のヘルメットに表示される計測値はそう示していた。まだ進み出して1分くらいしか経っていないのに。
「重力のっ…大体5倍…!?」
「死ぬ!死んじゃう!一回止めて!」
それだけ声が出てるなら大丈夫…とか言っている場合では無い。明らかに異常な速度だ。…とりあえずスロットルを中央に戻しスラスターで180°回頭、再度スロットルを最大にして急減速し、スラスターで停止する。
…そういえば、前に本で読んだことがある。
NEKリアクターとは根本的に原理が違う、重力エンジンとも呼ばれる…数機の試験機にしか搭載されてない動力。
「…縮退炉…?」
中身を見た訳じゃ無いから分からないが、この小型と高性能はそうとしか考えられない。
…というか、試験機に積んであるエンジンなんか拾ってきて本当に大丈夫だったんだろうか。
「…は、ははは…とんでもないことしちゃったかも…」
「おい!そこのテクルシュミア、停船しろ!」
通信に割り込んでくる若い男の声があった。
「わわ…2時方向に機影、オリゴ宙軍…どうすんの!」
「…とりあえず逃げよう…この速度なら撒ける!」
慌ててスロットルを強く押し込み、私たちはそのまま全速力で、飛び出していった。
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EKU SS
最終更新:2026年01月25日 17:09