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Einen Kleine Universmusik -The Trajectorie of “Spur”- #2相棒

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「こちらタヒタルト、入港許可を願います。」
「こちら管制、四番ドックへの入港、のち駐機所南棟第四区画での駐機を許可する。」
「感謝します。タヒタルト、四番ドックへ入港します。」
とりあえず一度逃げ切って撒いたのち、スロットルをできるだけ小さく抑えて普段の船速を装って、怪しまれないようにデブリを拾って帰ってきた。
OAや船の外装材など高価なものがたくさん手に入ったが、そんなことはどうでもよくなるくらい、私……私「たち」の頭は困惑と、ある種の興奮でいっぱいだった。
拾ったデブリ——もちろん先ほどのOAの部品以外——を適切な場へ売り払い、低軌道のコロンビア・コロニーに居た頃とは比べものにならないくらいの大金を手に入れた。…でも、食欲が沸かなかったので結局宙港の売店で行動食を買って家へ帰ってきた。
…昨日買ったばかりのアパートの扉を押し開け、それを閉じ、静寂が訪れた後…
「どうしようか。」
「どうしようね。」
2人揃って、そんな言葉が口を突いて出た。
「やっぱり今からでも売った方が…」
「ダメだよ、見る人が見たらアレが縮退炉なことなんかすぐバレる。」
「それじゃあ、明日出た時にあそこに戻してきて…」
「エンジンを降ろしたほしぞら号で、どうやってコロニーまで帰るの?」
……やるべきことは、一つだけだった。
「…隠し通すしかないよ。…うん、それしかない。」
そう言い、電気ケトルで沸かした緑茶を飲みながら行動食を齧る。
「…ねぇ、いっそ隠しちゃうんならさ…」
チオが、口を開いた。
「どうせ私たちが持っとくしかないんなら…あのOA、わたしたちで修理しようよ。」
「…え?」
「ファルのお兄さんもパイロットだったでしょ?」
「…まぁ、骨も帰ってこなかったけど…」
「しかもあのOA、見るからに量産機じゃなかったし…そんな、誰かの相棒があんな風に捨てられてるなんて可哀想だよ。」
…なるほど、チオらしい意見だ。
「いいじゃん、それ。何か楽しそう。」
「やった!…じゃあ早速…」
「隠れ家が必要だね。」
次の日。数日前に来た不動産屋さんから、郊外に倉庫をひとつ借り、そこにOAの頭を移した。

数日後、私たちはいつものようにデブリ探し…兼、OA部品探しのために宇宙を飛んでいた。
「それで、どう探すのさ。闇雲に探しても見つからないよ。」
「…でも、今の所闇雲に探すしか無いでしょ。」
相変わらず画面全体が煌々と光るレーダーを見て、そうつぶやいた。
「…でも、確かにその通りだよね…なんとかして部品を見つける方法を…」
「あ、ファル!前、前見て!」
「え?うわぁ!」
前を見ると、巨大な鉄柱が目の前に迫っていた。
咄嗟に思いっきり左に機体を滑らせると、出力が大きすぎてそのままくるくると大回転してしまった。
…なんとか機体を立て直せたが、危なかった。大気圏に突っ込んで塵も残らないところだった。
「…相当な暴れ馬だね、この子。」
「危なっかしいね…」
『俺もそう思うわ。』
次からは気をつけないといけない。強く運動しすぎないように…というか、そもそも運転の集中を切らさないように…
……待って、今もう1人居た?
『…俺はSPS第4OA小隊長のオードや。とりあえず、聞こえとったら止まってくれんか?』
若い男の人の声が、通信回線に割り込んでいる。
後ろを振り向くと、40mほど後ろにOAが一機、佇んでいる。
アレは有名なキャヴァリエーレというOAだ。……尤も、通常の型と若干違いそうだけど。
「…私たちはここでデブリ拾いをしてるだけなんですけど。」
『今更それは無理があるやろ…大人しくしとけば、面倒なことにはせんで。』
「今すでにメンドーなんだけど…」
そう、チオがぼやく。
「ちょっと、チオ。」
『まぁそう言いなさんなや。縮退炉技術はいま各社が喉から手が出るほど欲しがってるモンやから…堪忍な。』
要するに、何もしないので大人しく船を明け渡せと。そういうことだ。
『その船に関してもSSS社に裏から手を回して融通させるから…な?』
「嫌です。この船は兄の遺品なんです。パイロットが乗機を相棒だと思うように、この船も私の『相棒』なんです。渡せません。」
『せやか、困ったな…まぁ、縮退炉だけ無事ならええか…』
そう言うと、彼は一方的に通信を切った。
「…ファル、回避!」
「えっ!?」
訳もわからぬまま咄嗟に上昇して回避すると、さっきまで「ほしぞら号」が居た宙域、の周りに閃光が閃き…次の瞬間、辺りのデブリが全て両断されていた。
「ちょっ…何これ、斬撃!?にしちゃ射程が…」
「抵抗するよ。シートベルトかけて、舌噛むから黙ってて!」
瞬時にほしぞら号の艦首を敵機に向け、右手側中指のトリガーを押し込んでロケットアンカーを発射すると、敵機は空間に青い半透明な板を出して踏むような仕草で大きく飛び上がって動き、回避される。
「…でも!」
そのまま誘導を続け、直撃でなく敵機の周りをぐるぐると周回させて敵に巻きつけ、拘束した。
…と、思いきや再びあの超長距離斬撃で鎖ごと斬られてしまった。
「…やるしかないか…ビーム砲、撃つよ!」
「あいさ!」
底面に懸架されている二門の20cmビーム砲を、チオが操作し始める。
「…撃って!」
チオがトリガーを引く。
一発でOAや海賊船を撃沈できるほどの威力はないが、威嚇には使えるし当てればそれなりの損害にはなる。
光の束が敵機へ伸びていき、丸い爆炎が見えた。
「命中!敵の左腕をやった!」
『そこまでだ。』
新たに、通信に声が割り込んできた。
『もう十分だ。戻れ。』
その通信ののち、…なにもなかったはずの宇宙から、大きな、真っ黒な船体が姿を表した。
側面には、「IB1001 Phantom」と書かれている。
『はいよ。嬢ちゃんたち、すまんかったな。』
『試して悪いね。君たちがそれを持つに値するか、見極めようと思ってね。君たちも来るといいよ。』
船の上面からの誘導灯がヘルメットに表示される。
「どうする?」
「行ってみよっか。」
…やろうと思えばあの船はいつだってほしぞら号を沈められる。そうしないというだけで私たちに対する最低限の友好の意思はあるのだろう。
「管制、こちらタヒタルト。聞こえますか?」
『こちら『ファントム』発着管制。タヒタルト、感度良好です。』
「こちらタヒタルト、了解。着艦許可を願います。」
『こちら発着管制。許可します。」
スラスターで微調整しつつ真っ直ぐに降りていき…両側から伸びてきたアームでがしっと掴まれて固定される。
隣には、さっきのOAとその操縦士が居た。
「ステルス艦『ファントム』へようこそ。うちの社長があんたらのこと待っとるで。」

そのまま、あれよあれよといううちに応接室に連れて行かれて、フカフカのソファに座って待たされている。こんなソファに座ったのは初めてだ。一体いくらするんだろうか。
部屋の雰囲気は質素で、調度品の類はあまりない。実用性重視の、…悪く言えば無機質な内装をしている。
「ごめん。待たせたね。」
そう言って、奥の扉から出てきたのは茶髪を後ろでひとつに纏めた、右と左で眼の色が違う人物だった。
「…どうも。」
「どうもどうも、​うちの製品を大事に使ってくれて、ありがとうね。」
そう言ってその人が渡してきた名刺には、「スレイプニル・コーポレーション 代表取締役社長 ユーリィ・楊・シュトラッサー」と書かれていた。
「君たちが乗ってるテクルシュミアを作ってるのはうちの傘下のSSS社だし、あのビーム砲もSTTのポーラスターの部品だからね。」
そういえば、両方スレイプニル・コーポレーションの製品だっけ。
「君たちはなんて言うんだい?」
「チオグラチ・香椎・ヴェールです。」
「ワルター・ファルダイシュパージェです。…あの、私たちをどうする気ですか?」
一度OAを引かせたとはいえ、私たちのことなどどうとでもできるはずだ。それをこうして招き入れてくれたというのは、どういうことなんだろうか。
「…あなたたちは、なんで私たちから奪わないんですか?」
宇宙は広い。広いと、死角が生まれやすい。無法地帯は、即ち弱肉強食の世界だ。
「…あぁ、ごめんね。不安にさせてしまって。…少し身の上話をしてもいいかな。」
無言で頷く。チオも同じようにした。
「私はね、地球の…飴宮街って知ってるかな。」
「はい、大きな繁華街だとか。」
「そうそう。そこのスラム街の生まれなんだ。」
それで、こんな大企業の社長にまでなったのか。
「だから、乗ってるのが君たちだって気付いた時は親近感が湧いちゃってさ。…それに、うちのエースパイロットの攻撃を跳ね退ける強かさもある。私は——もちろん、非公式に、個人的にだけど——君たちを応援したいんだ。」
「やったじゃん、ファル!」
チオが飛び上がって喜ぶのを制止して、慎重に言葉を選ぶ。
「…理由は、それだけですか?」
「もちろん、実益もあるよ。本来なら実物が欲しかったけど…多少見るだけでも知見が得られるし、無いよりウン万倍もマシだしね。あと…」
「あと?」
「街の修理屋だった頃の血が騒ぐのよ。手始めにあの…「ほしぞら号」だっけ?リミッターを設けて普段は普通の出力しか出ないようにして…あ、あと武装もアップグレードして…」
「ユーリィさん、涎垂れてます…」
「…失敬。まぁそれに、見た目からして改造機丸出しだし、接合が甘いところもありそうだから、診てあげるよ。」
「…その、ありがとうございます。」
どうやら、この人は信用してよさそうだ。
「それと、君たち最後に風呂に入ったのはいつだい?」
「…4日前?」
「三等客船には風呂なんてなかったからね…ケープホープに着いてすぐだから、その位かな?」
「…この船にも風呂があるから、入ってきなさい。言っちゃ悪いが、結構匂う。可愛いのに台無しだよ。」
「あ、ありがとうございます…その、質問してもいいですか?」
「何なりと。」
「…ずっと気になってたんですけど、ユーリィさん…男性…ですか?」
「…性別なんて、瑣末な問題だと思わないかい?宇宙はこんなに広いんだし、さ。」

お風呂から出ると、既に「ほしぞら号」の修理が済んでいた。
見た目は、後部座席がないこと以外は、部品を付け替える前と元通り。…でも、ユーリィさんは近くの椅子で真っ白に燃え尽きていた。
「…あの、ユーリィさん?」
「…あぁ、すまない。いや…あんなもの、私たちには作れっこないなぁ、と思って…ふふ、ふふふ……」
どうやら縮退炉とはそれほどに難しい代物らしい。
「…あぁ、ロケットアンカーとビーム砲は新品の、しかも最新型に取り替えておいたよ。リミッターをつけた状態ならNEKエンジンのときと同じ操作感で、外せば最大出力を出せるようにしといたから安心しな。…でも、いざという時以外に縮退炉を使うんじゃ無いよ。捕まるからね。」
「その、何から何までありがとうございます。」
「いいんだよ、誰も信用できないような世界で、ちょっとくらいこういう場所があってもいいと思わないかい?」
「同感です。」

「それじゃ、またね。何か困ったら私に連絡してくるといい。」
「ありがとうございます。…こちらタヒタルト、発艦許可を願います。」
「こちら発着管制、発艦を許可します。」
スラスターを逆噴射して宇宙空間に飛び出し、そのままエンジンを始動すると、ここに来る前と同じくらいのスピードで「ほしぞら号」が飛び始める。
「あ、『ファントム』が…」
真っ黒い船体は、空間に溶け込むようにして姿を消してしまった。
「…なんというか、すごい人だったね…」
「ね。あのお姉さん…お兄さん?…どっちにせよ、強烈だったね…」
「…帰ったら、またラーメンでも食べに行こうか。」

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EKU SS
最終更新:2026年01月25日 17:10