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Einen Kleine Universmusik -The Trajectorie of “Spur”- #5地上

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「……これが、地球……。」
軌道エレベーターの地上側施設、アースポート。
上に見えるのは地面ではなく、無限に広がる青空で。
軌道エレベーターから降り立った直後に、潮の香りを伴う風にどこか本能的な懐かしさを感じたりして。
来たことのない場所のはずなのに、「帰ってきた」という感覚だった。
...この日、初めて私たちは水平線と、夕焼けを見た。

車と飛行機と電車に揺られること、一日と数時間。オリゴ最大の都市にして首都に到着した。
「次は、飴宮東通、飴宮東通、終点です。この列車は、次の駅でSER線との乗員交換を行います。終わり次第この列車はSER中央線、芒ヶ丘行きとして運転を…」
電車内を、凄まじい情報量が流れている。コロニー内のシンプルな路線の情報とは大違いだ。
「なんか難しいね。宙港管制みたい。」
「まぁ、コロニーの鉄道とは違って運営する会社も違えばまっすぐ線路を引けるわけでもないからね...あっちなみにさっき言ってたSERは私の会社の傘下ね。」
「ユーリィさんの会社って、結構すごいですよね。」
「お、気付いた?もっと褒めてくれてもいいんだよ?」
そんな話をしていると、電車は減速し始めた。
「...まもなく、飴宮東通、飴宮東通。終点です。本日も北京環状線をご利用くださいまして、ありがとうございました...」

「...で、ここが飴宮街。私の故郷。」
「お~...」
「やっぱりすごい...写真で見るのと全然違うね...」
北京市中心から少し離れたオリゴ国有数の繁華街、飴宮街。
連日多くの人で賑わうことから、眠らない町とも言われているとか。
そんなだから、窃盗暴行も起きて当たり前だという。...まぁ、それでも事案が起きたら警察が動くのだからコロニーの裏通りよりはマシだろうか。
「じゃあ、私は本社に顔出してくるからしばらく飴宮街を楽しんできなよ。お金はこのカード使ってくれればいいから。」
そう言うとユーリィさんは、懐からクレジットカードを取り出して渡してきた。
「…いいんですか?」
「もちろん。私が連れてきたんだし、二人が必死こいて稼いだお金を使わせるわけにはいかないよ。」
「…ありがとうございます。」
ユーリィさんは、私たちが飴宮街で目立たないよう私たちくらいの子がよく着る服も見繕って買っておいてくれた。こんなにかわいい服は初めて...というか、普段は下着とパイロットスーツ以外のものを身に着けることがないのでとても新鮮だった。
ユーリィさんには、感謝してもしきれないな。
「じゃ、またあとでね~。」
そう言って、ユーリィさんは雑踏の中に消えてしまった。
「行っちゃったね。...どうしよっか?」
「う~ん...とりあえず、おいしそうなご飯屋さんでも探してみる?」
「だね。」
とりあえずの方針が決まったので、いつものように手をつないで歩きだした。
それにしてもすごい街だ。
周りはすべて数十メートル規模の建物に囲まれ、少し圧迫感すら感じる。道端には客引きをしている人もいる。人の数もひたすら多く、手をつないでいないとはぐれてしまいそうだ。

あの日以降ラーメンにハマっている。
それはどうやらチオも同じであるらしかったので、資料としては見たことがあるが、初めて食べる「二郎系ラーメン」というものを食べに来た。行列ができていたし、人気店に違いない。
券売機で二人で1杯分、食券を買って並び...自分たちの番になったので店員さんに渡すと、私たちが子供だったからか「少なめじゃなくて大丈夫ですか? 」と聞かれたので「じゃあ、少なめでお願いします。」と伝える。
「楽しみだねー。」
「ね。」
そんな会話をしていると、店長らしき人から「ニンニク入れますか?」と訊かれたので、チオと二言三言交わして、「お願いします。」と伝えた。
待ちわびたラーメンがカウンターの上から出てきたが...異常だ。少なめにしたはずなのに普通サイズくらいのラーメンの上に、山盛りのもやしとキャベツ。
「...これが『少な目』なんだね...」
「...とりあえず、食べよ!」
味はとてもおいしかったが、如何せん濃い。チオも「ちょっとお水...」と何回か取りに行っていた。
「...そろそろ、ヤバいかも...」
「ちょっと、まだ全然残ってるよ...!」
二人あわせても小さい口で必死に頬張っていたが、ふと周りを見てみるともう皆食べ終わり、どんぶりを返して次々にお店から出て行ってしまった。
次のお客さんたちが入ってきて、次々に注文を済ませる間も言葉を交わしながらなんとか完食を目指したが、どうにも限界のようだ。
「...どうしよ、もう食べきれないかも...」
「もったいない...」
...でも、この席をいつまでも占領しておくわけにはいかない。
「ごめんなさい、私たち...」
「あぁ、大丈夫だよ。まだ子供には早かっただろうから、次はもうちょっと大人になってからおいで。」
「すみません、ご馳走様でした...」
店主さんの明るい笑顔に申し訳なさを深めながらお店をあとにした。

その後、飴宮街の中のいろいろなところを回った。今まで見たことのないような物や人の連続でだった。
...時計を見ると、既に六時を回り、七時に近づいていた。
「やっぱり、地球に来てよかったねー。」
「ね。ところで、ユーリィさんまだかな...ッ!?」
そんな風に、また手をつないで会話をしながら歩いていると、突然横から手を掴まれ、路地裏に引きずり込まれた。手をつないでいたので、チオも巻き込んでしまった。
二人そろってコンクリートにたたきつけられる。
咄嗟にチオが腰のホルスターに手を伸ばすのを見て、手を重ねて制止する。
ここはあのコロンビア・コロニーの下層でもコスモ・アイアン・ボトム・サウンドでもない。法律があり、それが実効力を持つ。
...その私の考えを理解したか、あるいは「やめろ」という意思を汲んでかチオは銃を取り出すのをやめる。
考えろ。頭を回すのは私の仕事だ。
「...なんですか、あなたたち...」
「覚えがねぇとは言わせねぇぜ、あの店に随分と無礼を働いてくれやがってよォ...!」 その顔には見覚えがあった。私たちと共にラーメン屋に入った客たちだ。
「お前らは...二郎系のマナーというものを分かってねぇ!」
そのリーダー格らしき、ひときわ太った男が声を上げた。ニンニクのにおいがする。
「まず1つ、店内での私語!」
...そういうマナーがあるのか。
「2つ!食ってる途中で水を汲みに行く!」
...はぁ。
「3つめ!ロットを乱した!周りと同じタイミングで食い終わらないと店に迷惑だ!」
...へぇ。
「そして最後!お前は...あのラーメンを残したァ!」
この前本で読んだが、郷に入っては郷に従えという言葉もある。ここはおとなしく...
「よって!今からお前らに制裁を課す!」
前言撤回。どうやら話が通じない人種らしい。
チオが今にもホルスターに手を伸ばしそうなのを手をきつく握って静止しながら、男たちに向き直る。
「...制裁って?」
「...拳だ!無知なガキに秩序というものを教えッ!?」
...そこまで言ったところで、男は後ろから蹴られてよろめいた。
「君たち、ここがどの店の裏か知っててその可愛いお嬢ちゃんたちに乱暴してるのかな?」
奥から現れたのは金髪で顔の整った男性。仕事柄いろんな人と会ってきたが、ここまできれいな男の人は初めてだ。ユーリィさんのミステリアスな感じとはまたちょっと違う。
「あぁ!?誰だてめぇ!」
「おい、不味いぞ...こいつは...」
リーダー格の男は即座に反転し、金髪の人を殴りに向かった。...取り巻きの一人が何かを言いかけたがもう遅かったようだった。
金髪の人は一歩下がってパンチを空ぶらせ、バランスを崩した男の後頭部に拳をお見舞いし...その男は意識を失って倒れた。
取り巻きが心配して駆け寄るのを見て、
「で、まだやる?」
と金髪の人が言ったのを聞くか聞かぬか、泡を吹いているリーダーを背負ってそそくさとどこかに行ってしまった。
「逃げやがった...さて。大丈夫かい、お嬢さん方?」
金髪の人が、激しく動いて乱れた髪を手際よく治して、こちらに向き直ってきた。
「...私は大丈夫。ファルは?」
「大丈夫...ちょっと背中が痛むけど受け身はとれたから。」
そんな会話をしながら、チオに引っ張られて立ち上がる。
「ならよかった。俺はレイデン・フォノリア。...そこのホストクラブのNo.1さ。」
名刺を二枚、取り出して渡してきた。...読んだことがある。名刺は受け取ったら自分のものも渡すのが礼儀だと。
「私はワルター・ファイダルシュパージェです。長いのでファルって呼んでください。...こっちはチオグラチ・香椎・ベール。」
「...ども。チオって呼ばれてます。」
「ごめんなさい、私たち自分の名刺なんて...」
レイデンさんがしゃがんで、私たちと視線の高さを合わせてくる。
「いや、それは全然いいんだよ。...二人とも、親御さんはどこかに居るのかな?」
「親...っていうか保護者...?は居ます。今日中には戻ってくると思うんですけどまだ連絡がなくて...」
「ふむ...さっきの奴らとまた会うのも困るし、うちに居とく?」
「いいんですか?」
「うん、バックヤードにコゼット...昔の同居人の部屋が空いてるから、そこで待ってるといいよ。」
「...ありがとうございます。」

ホストクラブ。...語としては知っている。きれいな男の人がお店に来る女の人を接待し、一緒にお酒を飲んだりする場所。
レイデンさんは、開店準備を済ませて開店を待つまでのあいだ、私にことの顛末を聞いていた。 「それで、あの男たちに心当たりはある?」
「実は、昼に入ったお店で...」
「...あのお店か...ちょっと待ってね。仕事柄、結構顔が広いんだ。」
そう言うとレイデンさんはスマホを取り出し、私たちにも聞こえるようスピーカーモードで電話をかけ始めた。
「お疲れ様です。今少しお時間よろしいですか?おたくの店の客が...」
レイデンが事情を説明し始める。声的に電話の先は店長さんのようだ。
「...何、本当か。...その子らに電話を替わってくれるか? 」
「あ、私も聞いてます。」
「おぉ、そうか。...本当にすまなかった、彼らは出入禁止にしておく。」
「いや、店長さんが謝ることじゃ...」
「それでも、うちの店のせいで迷惑がかかったことは確かだ。...申し訳なかった。」
電話越しにも、謝っているのが伝わってくる。
「あのマナーと言うのもファンが勝手に言い出したものでな。俺はラーメンをおいしく食べてもらいさえできればそれで満足だ。...そうだ、子供向けに少な目よりもさらに少ない新メニューを作っておくよ。二人も、また遠慮せずに来てくれ。」
「...ほんとですか、ありがとうございます。」
「それじゃ、これで。そっちの店はこれから忙しいだろうにすまなかったな。」
「いえ。それでは。」
電話が切れ、ツー、ツー、という音が部屋に響く。
「...それじゃ、その保護者の人から連絡があるまでここでゆっくりしてていいから。」
「何から何まで、ありがとうございます。」
「いいんだよ。それじゃ!」
そう言って、レイデンさんは階下に降りていった。
「優しい人だね。」
「ね。...まぁもらえるものはもらっておこうか。...今日も疲れたし。」
そう言い、二人はずっと繋いでいた手を解き、部屋のカーペットの上に横になった。

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EKU SS
最終更新:2026年01月25日 17:10