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Einen Kleine Universmusik -The Trajectorie of “Spur”- #6翼

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ぱちり、と目が覚める。ずっと禄でもない環境で過ごしてきたからか、目覚めははっきりしている方だ。
起き上がろうとしたが、体をがっちりと何かで固定されている。まさか、さっきのレイデンさんに何かされたのだろうか...と思い、自由の利く左手でブランケットを払い除けると、チオが私の右半身にひっついていた。慣れない土地で変なことを考えたが杞憂だったらしい。恩人であるレイデンさんに悪いことをした。
困ったな、チオを無理やり剥がせるほど私は強くないし...と思いながらどうしたものか考えていると、部屋のドアが開いた。
「目を覚ましたかい、二人とも?」
目を向けると、 茶髪を後ろでまとめたオッドアイの女性と、その後ろに金髪の男性と、初めて見る黒髪の男性が立っていた。最後の人は目の下にクマを作っている。
「ユーリィさん、レイデンさん......と...」
「どうも。カイって呼んでくれ。」
悪い人そうな気はしなかったが、よっぽど疲れているのかぶっきらぼうな言い方だった。
「カイ...さん。」
「彼は俺の幼馴染だよ。」
横からレイデンさんが補足を入れる。
一番前に立っていたユーリィさんは、とても安心したという顔をしていた。
時計を見ると、もう針は十一時を回っていた。確かレイデンさんに連れられてこのEnchantmentに来て店主さんと話を終えたのが八時だったはずだから、たっぷり三時間は寝てしまったらしい。
「迎えに来るのが遅くなって悪かったね、来た時にはもうぐっすり寝てたからしばらくそっとしておこうと思って。」
「ありがとう、ございます...」
私たちの無事を確認したユーリィさんは他二人の方に向き直って、大人3人で話し始めた。
「...にしても、この子たちの保護者がこんな大企業の社長様とは、驚いたよ。」
「ちょっとワケありの子たちででしてね、外には黙っててくれます?...カイさんも、ね。」
「えっなんで俺が...?」
「コンペ会場とか、パーティーとかにたまに居るでしょ、カイさん。そういう場での噂は広まりやすいですし...」
「あぁ...なるほどです。」
「まぁ、別に広めて特に面白いこともないし。わかったよ。」
「ありがとうございます。この恩はどこかで。さぁ、行くよ。二人とも。」
話がついたようで、こちらに向き直ってそう言ってきた。
「...あの、こいつのせいで動けなくって...」
そう言い、寝言未満のよくわからない声を出しながらひっついているチオを指さす。
「あちゃ...」
ユーリィさんが頭を掻いたのが面白くて、吹き出してしまった。
ユーリィさんも、次に他二人も笑い出してしまった。
笑い声に起こされて、なんだかわからないまま周りが全員笑っていたのが気に食わなかったのかチオは少し不機嫌そうだったが、ちょっとするとチオもつられて笑いだした。

「わざわざ裏口を使わせてくれるなんて、ありがとうございます。」
「レイデンも『表から君たちを外に出すとお客様の目について面倒』って言ってましたから。...あいつもちょっと見送るくらいすりゃいいのに。」
ユーリィさんが頭を下げ、カイさんが勝手口の向こうに客をもてなす幼馴染の姿を見ながら悪態をつく。
「忙しいんでしょう、あいつも。何せEnchantmentの『凄い人』みたいですから。」
「ですね。...それじゃ、またどこかで。」
カイさんのお見送りを受けて、Enchantmentをあとにした。なんだか今日一日だけでとても濃い思い出ができた気がする。

ユーリィさんが待機させていた社用車に乗りこみ、自動運転をオンにすると車は飴宮街の道路を滑りはじめる。
「レイデンさんとカイさん、またいつか会えるといいね。」
「ねー。」
「...君たち。地球に来た目的、忘れてないだろうね?」
楽しそうに会話する私たちに、ユーリィさんが怪訝そうな目を向けてくる。
「...なんだっけ?」
「さぁ...」
二人で首を傾げていると、ユーリィさんが大きなため息をついたあと、口を開いた。
「仕方ない、もう一回説明するよ。この地図を見て。」
そう言い、ユーリィさんはスマホの画面を見せてきた。オリゴの地図が映る画面をユーリィさんが南部側を拡大すると、とある村の名前が目に入る。
「....『うえ ななめ は むら』...?」
「『かみはすばむら』ね。元はオリゴ有数の限界集落の一つだったんだけど、スラヴァ戦争のごたごたでオリゴの国内の調子が悪くなってた間に『ブラーツィ・リーゴ』ってテロリストに占領されちゃって。」
ブラーツィ・リーゴ...Brazi Ligo...日本語にするなら「平等派」とかになるんだろうか。
「はぁ...それで、この村が...?」
「この映像を見て。」
そう言って、ユーリィさんは画面を切り替えて空撮のようなものを見せてくる。
「...これは?」
「うちのSPS社が独自にドローンで偵察に入った時の映像。」
その映像は村の中を飛んでいき、様々なものを観察したあと...突然、地面に真っ逆さまに落ち、武装した兵士に拾い上げられたところで映像が途切れた。
「あ、墜ちた。」
「...この部分、よく見て。」
そう言ってユーリィさんが映像を巻き戻す。
...視界の端に映った、おそらく武装勢力の保有するOAのうち一機に、翼のようなものが着いているのが見えた。
「...気づいた?これ、拡大するよ。」
...腰から生えた、紅白色の翼が、鮮明に映っていた。
「これって!」
チオが身を乗り出す。
「うん、タヒタルトのOSに残ってた機体全体の図に載ってたのと同じ翼。」
「じゃあ、取り返しに...!」
そう、チオの目が明るくなったところで、ある初歩的なことを思い出してしまう。
「いや、こういうのの鎮圧は警察か軍の仕事でしょ。...私たちにできることは何も...」
私たちは、所詮ただの民間人なのだ。こうなってしまっては、もうできることは...
そう思い、二人そろって項垂れていると、何やらユーリィさんがいたずらっぽい笑みを浮かべて咳払いをした。
「...忘れてたかもしれないけど、私は今をときめく大・企業の社長様だからね。軍内にも顔が利くんだ。それで、ちょ~っと便宜を図ってもらって...この鎮圧はうちのSPSが請けることになったんだ。」
ひみつだよ、と言わんばかりに人差し指を立ててこちらを見てくる。
「そんなわけで、明日には村を制圧しに向かうよ。」
「わかりました。...私たちも、タヒタルトに乗って出るんですよね?」
「もちろん。情報を教える人数もできるだけ少ないほうがいいし、少数精鋭で出るよ。メンバーは私、君たち、オード、フィーの4機。敵はこの前ドローンで見つけただけでも8機。...行けるかい?」
「が、がんばります...」
ちょっと不安になり、身をすくめてそう答えると、ユーリィさんは笑って、あたまを優しくなでてきた。
「心配しなくても、私とSPSのトップ1,2がついてるんだ。大丈夫、敵もそこまで強い組織じゃないし、練習相手程度に思えばいいさ。」
「は、はい...」
若干の恥ずかしさを覚えながらも特に抵抗せずに撫でられていると、チオが急にがしっと腕をつかんで引き寄せ、私はチオの腕の中に抱かれていた。チオのそれなりに大きな胸に埋もれながら上を向くと、大事なおもちゃを横取りされそうになった犬のようにユーリィさんに威嚇の視線を向けていた。
「...ありゃりゃ、ヤキモチ焼かせちゃったか。ごめんね。」
...そのあと、私は結局STT社に着くまでずっとホールドされていた。

10000kmの上空、輸送機の中。
「...みんな、準備はできてる?そろそろ降下だよ。」
輸送機の中で準備を整えたOAのコックピットに、通信越しのユーリィさんの声が聞こえる。
「目標、上斜歯市の制圧。作戦は事前に話した通り。『羽根つき』」の機体はなるべく損傷させずに私が生け捕りにする。いいね!」
私ふくめ、四者四様の返答が返る。
「座標442-826、降下地点です!」
「ここまでありがとう、ヴラース。...降下始めッ!」ユーリィさんが輸送機のパイロットに感謝を告げ、大きく口を開けた輸送機後部のハッチの先に姿を消した。

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EKU SS
最終更新:2026年01月25日 17:10