2012年11・12月分の活動報告です。
更新が遅れてすみません、リアルが多忙でして…。
それではさっそく活動報告にうつりますね。

ちなみに、このページをまとめたものがこちらのPDFデータです。
実験班活動報告トップページには更に新しいデータが乗っています)
レジュメ(2012/12月末までのデータ)
交差アルドール反応の効率化_HP用レジュメ.pdf
パワーポイント(2012/12月末までのデータ)
交差アルドール反応の効率化_HP用.pdf

目標値

平均反応効率6.0%/分
(ろ過時)収率90%
(再結晶時)収率80%
を目標にしています。

なお、論文OrganicSymtheses(以下、論文O/Sとする)のデータは
平均反応効率3.0%/分
(ろ過時)収率90~94%
(再結晶時)収率80%
でした。


結果と考察、今後の予定

≪1≫精製方法をろ過から抽出へ

定性実験で、ジベンザルアセトンをろ過をするとき、
ろ液にもジベンザルアセトンが漏れ出してしまう、ということが判明しました。
この対応策として、定量実験ではろ紙の改善を行いましたが…
この写真のように改善されませんでした。
ろ過に使ったろ紙は、NO.5Cという紙製のろ紙では最も目が細かいものです。
よって、これ以上のろ過の改善は難しいという結論に至りました。
次の定量実験からは、精製方法をろ過の代わりに抽出で行おうと思っています。



≪2≫謎の橙色物質が生成

題名の通り、謎の橙色物質が生成しました。
※反応生成物であるジベンザルアセトンは黄色結晶。
/
上の写真を見ると、色の違いが明らかですね。
この色の違いに規則性が見られました
詳しくは後ほど(≪6≫)、説明します。



≪3≫ベンズアルデヒドの酸化

50%ベンズアルデヒドにBTB溶液を滴下したところ、黄色に呈色しました。
ベンズアルデヒドは中性なので、ベンズアルデヒドのみの水溶液ならば緑色に呈色します。
しかし水溶液は黄色に呈色しました。つまり、酸性の他の物質が含まれているのです!!

そして、アルデヒドの酸化反応というものがあります。
アルデヒド(-CHO)は、容易にカルボン酸(-COOH)に酸化されるのです。
2 R-CHO + O2 → 2 R-COOH

この研究で使用しているベンズアルデヒドは、10年前に購入されたものでした...orz
以上の条件から、一部のベンズアルデヒドが酸化して安息香酸(カルボン酸、酸性)になっている事が十分に考えられます。
ベンズアルデヒド + 酸素 → 安息香酸
2 C6H5CHO + O2 → 2 C6H5COOH



≪4≫収率の異常値、再乾燥による質量減少

今までの実験に①~⑦の番号を振り、
表1に反応条件の違いをまとめました。
表1 反応群における反応条件と収率
実験⑥が明らかな異常値ですね。(収率100%超え。質量保存の法則より異常値と断定できる)
そこで、「まさか水分が完全に抜けていないのでは?」と思い追乾燥させたところ…
追乾燥時の質量減少量に差が出ました。
副反応によってできた生成物の保湿性が高いため、と考えています。



≪5≫副反応の場合分け

≪3≫より、
副反応の種類は大きく2パターンの可能性が考えられます。
①カルボニル基(アルドール反応に関係する試薬)同士の副反応(安息香酸は関係ない)
②安息香酸とカルボニル基の副反応(安息香酸が関係)
(なお、触媒に塩基性のNaOHを用いているので、もし安息香酸が存在していた場合は
中和反応が起こり、安息香酸は安息香酸ナトリウムになっていると思われます)
≪4≫より、
副反応によってできた生成物は保湿性が高い事が分かります。

まずは安息香酸の関係している副反応なのか否かを究明するために、
定量実験に用いるベンズアルデヒドを
10年前に購入したものから、
新品ベンズアルデヒドに変えて実験を行おうと思います。
新品ベンズアルデヒドに安息香酸は含まれていないはず!



≪5≫論文値と実験値の違い

また、今回の研究テーマのポイントとなる収率と平均反応効率について、
グラフにまとめました。
図1 反応群における収率、 図2 反応群における平均反応効率

↓ 図1、図2をまとめたもの

図3 反応群における収率と平均反応効率

収率は論文O/Sの値が最も良いですが、
平均反応効率は実験①~⑦のほうが良いのが分かるでしょうか?
これは、論文O/Sが30分かけて実験をしているのに対し、
実験①~⑦は15分しか反応させていないからです。

以上より、僕の行ってきた実験①~⑦は、
研究の目的である反応の効率化に成功しているという事が分かります。



≪6≫反応条件と生成物の色との規則性

以下のような規則性が見つかりました。
この規則性の発見は、とても大きな発見でした。
どのサイトにもこんなことは書いてありませんでした!!!!
このような規則性を更に詳しく探していけば、最適な触媒の濃度や温度が分かるのですから、
反応の更なる効率化に大きく前進することが出来たのは間違いありません。

※ジベンザルアセトンは間違いなく黄色結晶です。他の色の結晶になることはまず考えられません。
生成物の変色の度合いの規則性が見つかったということは、
副反応の起こり易さの規則性と言ってもほぼ過言ではないでしょう。

※収率や生成量の比較は純度が分からないため、不適です。
今後再結晶やTLCを行い、収率や生成量の比較も出来るようにしたいと思います。

しかし、疑問点もあります。
反応速度や反応の平衡を考えると、
「試薬の濃度が濃ければ濃いほど反応の速度が速い」⇒「試薬の濃度が濃ければ濃いほど反応の効率が良い」
はずなのです。(原子1粒あたり、その原子の周辺に存在する原子数が多いため)

今回の規則性では、
  • NaOH(触媒)の濃度が低いほど色が黄色(正常)に近づく ⇒「試薬の濃度が低いと反応の効率がよい」
  • NaOH(触媒)の濃度が高いほど色が橙色(異常)に近づく ⇒「試薬の濃度が高いと反応の効率が悪い」
という事が分かりました。
副反応の影響なのか、理論とは真逆の規則性が見つかったということです。
今後は触媒の濃度を10%(基準値)から5%程度にひき下げて実験を行い、
更なるデータの収集につとめたいと思います。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

以上で2012年12月までの活動報告を終わります。
今後もよろしくお願いします!
(実験班班長 まっしゅ)
最終更新:2013年05月13日 20:58