これからこの物語を読む皆々様、いっとうはじめにお伝えしておかねばならねばならぬことがございます。
皆様方は、親御さん――まあ、ご事情によってはそうでない方もいらっしゃるかも知れませんが、仮にそうだとしておいてください――からいただいた、お名前というのをお持ちでいらっしゃる。それをお気に召してらっしゃるかどうかは別として、それぞれ親御さんの願いの込められた素敵なお名前なのでしょう。今皆様方が親御さんと愛し愛される関係であるかはまた別であるやもしれませんが――ああ、いやはや、また余計なことを申しましたな。私めの悪い癖にございまして、どうぞご容赦いただければ。
とにもかくにもでございます。これから申し上げる大事なことと言うのは、この世界の人々が、ふつうには皆様に与えられるはずの『名前』というものを持っていないということなのでございます。たんに「おい」とか「こら」とか呼ばれることもございますし、個々人で好き勝手な綽名をつけることもございます。ええ、ええ。お偉い方はどうしているのかと? それは簡単なお話で、なんとか家の主とか、なんとか家の嫁とか、なんとか家の長男だとか、たまさかにはなんとか家の執事だとか、そんなふうに呼ばれるのでございますよ。
少しお話が逸れましたか。ふつうには、と言うからには「ふつう」ではないお歴々もいらっしゃるのでございます。彼の世界で英雄だとか偉人だとか呼ばれる人々は、そのように「ふつう」ではないのでございますよ。あちらの世界にある名前の数というのは限られていて、限られた方にだけ星から授けられるのでございます。名前が授けられる瞬間と言うのは、生まれたその時であることもあれば、ある日突然ひょいこらと授けられることもあるものでございます。これがまた不可思議なものでして、名前が授けられた者のことは、本人にも周囲にも「分かる」のでございます。それで彼らは周りから疎まれて放浪の旅に出たり、逆に重宝がられて立身出世を遂げたりするわけです。
まあこちらの世界では数えきれないほどたくさんあるもののことを「星の数ほど」と申しますが、星から名前を授けられることは、あちらの世界ではたいそう特別なことでございましてな。そうそうあることではないのです。星から名を与えられた者たちは特別な力を持ち、「セレスティア」と呼ばれます。彼らはそんじょそこらの連中よりも、よっぽど強いんでございますよ。
しかして私めもこれまた不思議に思うところでございますが、こういうことは少々、不公平ではございませんかね? ある人には名前と力が授けられ、ある人には授けられないというのは。そういうのはちょっと、感じがよくないとまあ、私めは思うんですが、ところがどっこいあちらの世界ではそうしなくてはならない事情と言うものがあるようでしてね。
どうやらあちらの世界では「アクシオン」とかいう、これが大層、よくない力があるのだそうです。名前のない連中というのは、しばしばこの「アクシオン」に触れて、悪徳というヤツを積んでしまうのだそうです。彼奴らめの力と来たら、「セレスティア」が束になって力を合わせなければとてもじゃないけれど敵わないと、それくらいの力を持ってしまうのですな。それで、この「アクシオン」に染まってしまった連中を男なら「アクシオニル」女なら「アクシオーネ」とあちらでは呼ぶんだということですな。男でも女でもない場合? はあ、私めはどうもそちら方面には疎うございましてね。
タマゴが先だかニワトリが先だかというおはなしにはなってしまいますが、私めといたしましては、「セレスティア」という者どもはどうにもこの「アクシオン」の力に対抗するために生まれたんじゃないかと考えております。「セレスティア」たちは概ね善良であるか、あるいは少なくとも悪いヤツらではございませんからね。「アクシオン」の勝手を許さない気質の持ち主が多いんでございますよ。
はじめのおはなしはこれくらいにいたしましょうか。さあさ、その閉じた手をお開きなすってごらんなさい。星の光と、あなただけの名前を持って、あちらの世界に参りましょう。
皆様方は、親御さん――まあ、ご事情によってはそうでない方もいらっしゃるかも知れませんが、仮にそうだとしておいてください――からいただいた、お名前というのをお持ちでいらっしゃる。それをお気に召してらっしゃるかどうかは別として、それぞれ親御さんの願いの込められた素敵なお名前なのでしょう。今皆様方が親御さんと愛し愛される関係であるかはまた別であるやもしれませんが――ああ、いやはや、また余計なことを申しましたな。私めの悪い癖にございまして、どうぞご容赦いただければ。
とにもかくにもでございます。これから申し上げる大事なことと言うのは、この世界の人々が、ふつうには皆様に与えられるはずの『名前』というものを持っていないということなのでございます。たんに「おい」とか「こら」とか呼ばれることもございますし、個々人で好き勝手な綽名をつけることもございます。ええ、ええ。お偉い方はどうしているのかと? それは簡単なお話で、なんとか家の主とか、なんとか家の嫁とか、なんとか家の長男だとか、たまさかにはなんとか家の執事だとか、そんなふうに呼ばれるのでございますよ。
少しお話が逸れましたか。ふつうには、と言うからには「ふつう」ではないお歴々もいらっしゃるのでございます。彼の世界で英雄だとか偉人だとか呼ばれる人々は、そのように「ふつう」ではないのでございますよ。あちらの世界にある名前の数というのは限られていて、限られた方にだけ星から授けられるのでございます。名前が授けられる瞬間と言うのは、生まれたその時であることもあれば、ある日突然ひょいこらと授けられることもあるものでございます。これがまた不可思議なものでして、名前が授けられた者のことは、本人にも周囲にも「分かる」のでございます。それで彼らは周りから疎まれて放浪の旅に出たり、逆に重宝がられて立身出世を遂げたりするわけです。
まあこちらの世界では数えきれないほどたくさんあるもののことを「星の数ほど」と申しますが、星から名前を授けられることは、あちらの世界ではたいそう特別なことでございましてな。そうそうあることではないのです。星から名を与えられた者たちは特別な力を持ち、「セレスティア」と呼ばれます。彼らはそんじょそこらの連中よりも、よっぽど強いんでございますよ。
しかして私めもこれまた不思議に思うところでございますが、こういうことは少々、不公平ではございませんかね? ある人には名前と力が授けられ、ある人には授けられないというのは。そういうのはちょっと、感じがよくないとまあ、私めは思うんですが、ところがどっこいあちらの世界ではそうしなくてはならない事情と言うものがあるようでしてね。
どうやらあちらの世界では「アクシオン」とかいう、これが大層、よくない力があるのだそうです。名前のない連中というのは、しばしばこの「アクシオン」に触れて、悪徳というヤツを積んでしまうのだそうです。彼奴らめの力と来たら、「セレスティア」が束になって力を合わせなければとてもじゃないけれど敵わないと、それくらいの力を持ってしまうのですな。それで、この「アクシオン」に染まってしまった連中を男なら「アクシオニル」女なら「アクシオーネ」とあちらでは呼ぶんだということですな。男でも女でもない場合? はあ、私めはどうもそちら方面には疎うございましてね。
タマゴが先だかニワトリが先だかというおはなしにはなってしまいますが、私めといたしましては、「セレスティア」という者どもはどうにもこの「アクシオン」の力に対抗するために生まれたんじゃないかと考えております。「セレスティア」たちは概ね善良であるか、あるいは少なくとも悪いヤツらではございませんからね。「アクシオン」の勝手を許さない気質の持ち主が多いんでございますよ。
はじめのおはなしはこれくらいにいたしましょうか。さあさ、その閉じた手をお開きなすってごらんなさい。星の光と、あなただけの名前を持って、あちらの世界に参りましょう。
このwikiは先山芝太郎ことかたつむりが製作するオリジナルTRPG「ワンダリング・セレスティア」のまとめサイトです。