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マネーロンダリング入門

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マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで

橘 玲(たちばな・あきら)
内容(「MARC」データベースより)
マネーロンダリングとは、テロ資金や麻薬密売などの犯罪で得た収益を、海外の複数の金融機関を使って隠匿する行為のこと。カシオ詐欺事件、五菱会事件などの具体的な事例をもとに、初心者にもその現場が体験できるように解説。

お~怖。これが世界のお金持ち。

2007.12
橘玲さん。ゴミ投資家、黄金の羽根、と来て今やマネーロンダリング。興味の対象が深まってますな。

この本で登場するお金持ちというのは、ヨーロッパの貴族で先祖代々働いたことがない、とかアラブの王族だとか、非合法組織の資金管理担当とか、国の年金組織の裏の顔、とかそんなん。10億100億は庶民です。

一方で見逃せないのは、それをお手伝いするビジネスマンたち。銀行マン、証券マンなど確信犯な人たち。まじめなおっちゃんだって5000万くらいじゃぐらつかないけど3億積まれると考えこむ。そんな世界。

脱税と節税、脱法と合法と非合法、詐欺、資金運用、ロンダリング、堅気とヤクザ、商取引とシノギ。そんなことだーれも区別してません。っていうか「捕まらんかったら何でもあり」をおおっぴらにやるのが新自由主義クオリティ

そんな有象無象の人たちのノウハウを我々庶民もゲットしよーという著者のスタンスは変わらず堅持なのでありますが、若干腹たってきてるみたい。

タックス・ヘイブン各地に軍事侵攻するしかないようです。

残念ながら説得力があります。だって結論が「もうロクなことはない」。あらら。モリタクさんの言うように年収は120万てなると、文字通り生きるか死ぬかってわけで、こりゃもう私のような庶民はオフショアを用意するタックスヘイブンの島々に軍事侵攻するしかありません。こういうのを安全保障というのですな。

うーん、困った。侵攻の前にとりあえずみんなでお願いに行きますか。

あいもかわらず、イギリスの好きにやられっぱなしな訳ですな。

書いてあったこと色々

  • タックスプランニングのために海外で仕事をしている実態が必要とあらば、各種金融機関のプライベートバンクのオフィスで職場を用意してくれるってのにはおどろいた。
  • 基本的には匿名での海外送金の遣り方を分かりやすく説明してくれる本なんですが、それを戻してきて国内で使うときに足がつかないのかってところも説明して欲しかったな。急に豪邸建てると税務署が来るって言うじゃない。ま、私が心配することではありませんが。どっちにしろ、ん10億、ん100億のお金なんて何に使うんよ?
  • 外貨預金の説明で、例えばドル建てで預金したとすると、そのドルはどこにあるのかって話があるんですが、サイコーにすっきり雲が晴れるような話でした。正解はニューヨークの銀行。あなたが入金した銀行がNYの銀行に口座を持っててそこにドルがあるわけです。だから北朝鮮のドル建て資金なんてのはアメリカの金融当局がその気になれば世界中の預金を封鎖できる。(実はもうひとつ、SWIFT(世界中の電子取引の記録が残ってるところ)の協力という条件が必要なのですが)。
だから、オフィス・マツナガさんが言うように、「北朝鮮の核弾頭の照準は日本に合わせていない(アメリカだ)。」というのはホントかもしれない。

抜粋(あとがきより)

  • 小泉改革の規制緩和によって日本は「格差社会」になったといわれる。その歪みを修正するためにも、相続税率を引き上げるなど富の再配分を強化すべきだと一部の論者は言う。この現状認識に異論はないが、税率引き上げは平等な理想社会の実現ではなく、社会のさらなる階層化をもたらすだろう。
  • 村上ファンドの村上世彰氏がシンガポール移住を目指したように、税金を払いたくない人はいつでも日本から出ていくことができる。増税は富裕層にはなんの痛手も与えず、仕事や家庭を抱え、この国で生きていくほかない中間層を痛めつけるだけだ。それは控えめに言っても、かなり暗い社会にちがいない。
  • いつの時代にでも、理想や正義を声高に語る人の後をついていくとろくなことはない。この本に書いたのは、たとえば、そんな単純な真理である。
    • 説得力がなかったのはこの最後の一文のみ。「いつの時代でも」の根拠を書いて欲しかった。もしくは、著者がこの点についてどれだけ深く掘り下げて生きてきた上で書いてるのかが勝負の分かれ目。じゃないと俺たちもうダメポ。

目次
  • 世にも奇妙な金融犯罪
  • プライベートバンクの憂鬱
  • 北朝鮮はなぜ核兵器が必要なのか
    • ここで上記のNYの銀行の話が出てきます。
  • 世界でいちばん短いマネロンの歴史
    • バチカンによる資金洗浄・法王暗殺には驚いた
    • BCCIの光と影 などいずれも実話(みたいです)
  • 誰でもできるマネロン
    • ハンドキャリーでもかなりいける、というか基本
    • アジア各国が用意する金持ち移住受け入れプラン など

詳細

新書: 222ページ
出版社: 幻冬舎新書 (2006/11)
ISBN-10: 4344980093
ISBN-13: 978-4344980099
発売日: 2006/11
商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
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