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日本奥地紀行

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日本奥地紀行

イザベラ バード

明治初期の蝦夷。アイヌが秀逸。

2006.9.13
内容(「MARC」データベースより)
文明開化期の日本…。イザベラは北へ旅立つ。本当の日本を求めて。東京から北海道まで、美しい自然のなかの貧しい漁村、アイヌの生活など、明治初期の日本を浮き彫りにした旅の記録。73年刊東洋文庫の再刊。

日本語も余り出来ないイギリス人女性が、現地で道案内を雇い伴ひさせながらとは云へ、東北から北海道にかけての一人旅を無事に完遂できた事自体が奇跡的であると渡辺京二氏は指摘しております。確かに西欧では非常識に属する事なのかも知れません。兎にも角にもバード夫人は旅に出ます。

馬丁との珍道中

イザベラは馬に乗るのですが、馬は走るのではなく歩くのが常であり、その前を馬丁が走つて道を開けます。馬は一般にあまり調教されてゐないため、暴れる度に夫人は放り出されます。道は整備が悪く、天候が悪いと泥濘に嵌まり、思うに任せない道中が続きます。

しかし馬丁は何時も陽気で、馬の世話は勿論、イザベラの為に何事につけ骨を折り、時には風習の違いから反対意見を述べ、そのやり取りは珍道中さながらであります。

離村は貧しく、時に夫人は美しい風景を見つめ、旅を続けます。

キリスト教徒に蝦夷はどう見えたのか

特に筆が冴えるのはアイヌについての記述で、本書の醍醐味であります。

「日本人」から見ても独特な種々の習俗は、彼女には理解可能でありました。宗教観にも理解を示したイザベラは、ある集落で鎮守の祠(ほこら)に案内されます。遠い昔に日本から渡つて来て彼等を導き、今も守つてくれてゐるといふ神が、自ら書ひたと云ふ文は確かに日本語で書かれておりました。「義経、流れて此の地に来たる」と。

キリスト教徒であるモース夫人にとつて、此の世は人間(キリスト教徒)が救済に至るまでの試練として神が与えた場で在つたはずです。しかし蝦夷で出会ったのは、悠々と流れる時間と、人間も含めた世界そのものが「ただ在る」という端的な提示でありました。

夫人が旅を続けた理由は其処にあつたのだと思ひます。

関連書籍
平凡社東洋文庫
  • 「日本奥地紀行」 イサベラ・バード 高梨 健吉 (1973/1)
  • 「中国奥地紀行〈1〉」 イザベラ・L バード、金坂 清則 (2002/10)
  • 「中国奥地紀行〈2〉」 イザベラ バード、金坂 清則 (2002/12)
  • 「イザベラ・バード 極東の旅〈1〉」イザベラ バード 金坂 清則 (2005/6)
  • 「イザベラ・バード 極東の旅〈2〉」 イザベラ バード 金坂 清則 (2005/10)
  • 「朝鮮奥地紀行〈1〉」 イサベラ・L. バード、朴 尚得(1993/12)
  • 「朝鮮奥地紀行〈2〉」 イサベラ・L. バード、朴 尚得(1994/1)
  • 「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」 宮本 常一 (単行本2002/12)
  • 「イザベラ・バードの会津紀行」 赤坂 憲雄 (単行本2006/5)
  • 「朝鮮紀行―英国婦人の見た李朝末期」 イザベラ・L. バード、時岡 敬子

  • 平凡社ライブラリー(文庫)(2000/02)
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