響きライブラリー
森林はモリやハヤシではない
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森林はモリやハヤシではない
―私の森林論

四手井綱英
2006.9
林業とはまったく逆のアプローチ。森を見続けた人が逝く前に言い残したこと。
戦争前から林野庁にいて、京大の先生になって、自然保護とか色々やった人。奥さんに口頭筆記してもらったそうです。
私は本を読む際、躊躇なくマーカーで線を引いたりするのですが、この本はあまりに線を引くところが多くて、マーカーをやめて鉛筆で囲うだけにしました。そうじゃないと色とりどりすぎて見てられなくなるのです。その一例をご紹介しましょう。林業の本だと思って買ったのですが、森林生態学というのは、林業とはまったく逆の立場らしいのです...
(抜粋・要約)
- 「砂漠に緑を」と言って木を植えても無駄。砂は緑の邪魔にならない。水が無いから砂漠になっている。
- 杉は横に根を伸ばす。だから杉だけの山に大雨が降ると、泥の斜面の上に杉の塊が載っているような状態になる。
- 特に成長の早い木だけを選んで増やそうとしても、それは遺伝だけの問題ではないので多くの場合は普通の成長になる。なお、成長の早い木はスカスカで木材としては不適である。また、種子を早くもたらす個体は遺伝的に大きく育たないことが多い。
- 木はその大きさに対して価格が安い。だから木造建築が可能になる。農業のように堆肥したり金をかけることはできない。
- 昔は農業にしろ林業にしろ、1日1回、ずぼらな人でも2,3日に1回は自分の田なり山を見て回った。だから動物もそこは人間のテリトリーだと思って大した悪さはしなかった。今は我が物顔で荒らし放題である。それを人間は皆殺しにしようとする。
- 樹木は酸素を供給し、水を蓄えると思っている人がいるが、植物は酸素も水も消費する。光合成で酸素を出すのは昼間だけだ。どれだけの森林を持ってしても、とても人類が呼吸するだけの酸素は供給できない。乾燥した地域に植林すると、もともと少ない水を更に消費することになってしまう。
- 木材生産だけが山の役割ではない。森林が自然に更新していけるように見守り、そのおこぼれを少しいただくのが、唯一、木材を恒久的に得る方法である。
- ナカニシヤ出版 (2006/05)