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日本よ、森の環境国家たれ

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日本よ、森の環境国家たれ

安田 喜憲
内容(「BOOK」データベースより)
人類文明史には「森の民」の「植物文明」と「家畜の民」の「動物文明」の二類型があるというのが、本書の最大の発見である。「森の民」の「稲作漁撈民」は桃源郷を、「家畜の民」の「畑作牧畜民」はユートピアを創造した。桃源郷こそ「森の民」の究極の生命維持装置だった。だが、人類文明史は、一面において後者の「動物文明」が前者の「植物文明」を駆逐する歴史であった。そうした中で「森の民」日本人は「家畜の民」に蹂躪されへこたれたことが一度もなかった。日本人が森にこだわり「森の環境国家の構築」に邁進するかぎり、日本の未来は安泰であるというのが、本書の提言である。

「農耕=定住=文明/放牧=移住=辺境」ではなく「農耕/牧畜」で文明を分けてみると...

2007.1
冒頭で森の民の「桃源郷」と家畜の民の「ユートピア」を対比して論じてあって大変面白く感じました。

我々は森の民の数少ない生き残り

この本は着眼点としては大変面白い事を言っていると思います。「農耕+牧畜/放牧」=「定住/移住」という従来の分類ではなく、「農耕/牧畜」という分け方をする。すると、ヨーロッパ人とアジア人は同じ定住民族ではなく、農耕民と牧畜民という別のグループになる。モンゴルやアラブの勉強をしていると、実際に農耕地域を「放牧」民が支配する構図がよく出てくるので成る程と思う。また、中国4000年の歴史も南の農耕民と北の牧畜民とのせめぎあいと見れば「中華」なんてものは無い(あるいはせいぜい清朝以降)ということが分かる。

今後に期待

しかしながら、着眼点が見つかった段階で勢い良く書いてしまった感は否めなく、後半になると熱い思いを語るばかりになってしまって、学問的な冷静さが薄れていく。読者の方はどうかそこは我慢して欲しいし、著者には今後改めて研究を積み重ねて欲しい。誤解の無いように書いておくと、今の段階でも本書の主張に耳を貸すことには十分意味があると思います。

  • 中央公論新社 (2002/03)
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