通路裏話 コールマインラボレポートvol.1

 現在、東京都現代美術館で好評開催中の川俣正[通路]展ですが、そもそも「どうして菊地が参加しているの?」あるいは「美術館全体が通路って、一体どんな展覧会なの?」といった質問をよく耳にします。確かに、通常の展覧会とは異なるイレギュラーな部分が多く、イメージがつかみにくい展覧会だと思います。
 そこで今回参加することになった経緯や展覧会オープンまでの会場作りや川俣氏の考えなど、解説の意味も含めて簡単に紹介したいと思います。

▲サンクンガーデンと呼ばれる中庭空間のインスタレーション

 今回の展覧会の企画の話を聞いたのは、M1プロジェクトの第一回ミーティングの頃(9月初旬?)でした。大学院のビジティングアーティストのコーディネーターをされていた山口さんからで、氏は今回の展覧会でもコーディネーターをされています。まだその時点では企画の全貌は知らされず、コールマイン関連で何か考えられないかというものでした。山口さんと僕とは同じ千葉大ということもあり、僕の炭鉱関連の作品や北海道での活動を見て、一度川俣さんに紹介するよと約束をしてくれていたのでした。
 その後しばらくはM1プロジェクト&TAPのワークショップとアトラス展に専念し、それらがひと段落した頃に召集がかかり、そこでようやく川俣さんの口から企画の全貌を聞き、コールマインラボとして正式に企画が発進したのでした。

 ご存じの方も多いと思いますが、川俣さんは北海道の三笠という炭鉱マチの生まれ育ちで、お父さんは住友奔別炭鉱の元炭鉱マン。コールマインは川俣さんと切っても切れない関係にあり、96年から06年の間には九州でコールマイン田川というプロジェクトを展開されていました。今回の展覧会ではこれまで30年の活動を包括的に取り上げるという意図から、必然的にコールマイン企画が立ち上がったようです。炭鉱のような奇特なテーマを継続的に扱っている人間はなかなかいないもので、菊地に白羽の矢が立ったという事らしいです。※そもそも菊地がなぜ炭鉱に関わるようになったかはまた次回にでも。


 通路について。そもそも美術館は川俣さんの普段の活動のフィールドではない中で、美術作品の終着地点と捉えられがちな美術館において、そこを人が行きかう通路にしてしまうことで氏のこれまで30年の活動を振り返りながら新たに何かが生まれる場にしたいという話をされていました。「アクティビティのある場所」「常に何かが生まれ、変化するような場所」というようなことも仰っていました。その意味で川俣さんのこれまでの活動に関連する活動体(オープンラボ)を会場内に展開していくという事になりました。

▲1月のベンチ制作大会の様子。都現美の地下駐車場にて。

▲展示室内での設営の様子。コールマインラボ菊地・田中・池田が参加。

▲美術館の裏側を見れて面白いです。超大型エレベーター。

 年末に数回のミーティングを重ね、2008年に突入してから本格的に準備がスタート。今回の展覧会は基本的にボランティアスタッフによるワークインプログレス形式で進められ、ラボメンバーも積極的に参加しました。展示室から屋外のスペースに至るまで4*8のベニヤ板が立てられ、通路が形作られていきました。ベンチやテーブル、果てはパネルを固定する土のうまで全てボランティアによる手作り。オープンまでの間に述べ300名以上のボランティアスタッフが参加しました。TAPでお馴染みの方や芸大生、元横トリスタッフの方々まで、本当にたくさんの方が集まりました。中にはこれだけのために大阪から来ましたという方まで。美術館の学芸員の方もボランティアスタッフにこれだけの人が集まるとは、、と驚いていました。

▲スタッフ控え室にて。川俣氏・学芸員・ラボメンバー・ボランティアスタッフ。

 ここでも先端武闘派の佐藤研は健在で、M1をくぐり抜けた精鋭メンバーが大活躍。ボランティアをとりまとめ作業を仕切っていた東京スタデオスタッフからも一目置かれていました。最後には川俣さんからも目をつけられ、写真の大判出力、デザイン、大工仕事、安齋さんの写真の展示まで”何でも出来るコールマインラボ”として違う意味で目立っています。

▲菊地・田中が二日がかりで出力した川俣氏の写真

▲こんな感じで展示されています。

 コールマインラボの設営には池田くんの友人やM1の上原くんなどヘルプメンバーがたくさん参加してくれ、理想のラボ空間が実現できました。これから二ヶ月の間、二万人(予想入場者数)に見られながら研究プロジェクトを進めていくことになります。

▲コールマインラボ。

▲川俣さんとミーティングしたり。

▲菊地が黒板書いたり。

▲一平くんが模型用の図面書いたり。

▲北海道支部から報告があったり。

 ちなみに今回の企画では美術館サイドからは交通費なども一切支給されないため、独自のグッズを販売しています。またカフェの利益の一部も入ってくる約束になっています。そんなジリ貧状態のラボメンバーのために川俣さんが米を大量に仕入れてくれたので、昼ごはんは控え室でみんなで自炊しています。ご飯とインスタント味噌汁という質素さですが、大変助かっています。
 あれだけの規模の美術館でやれるというのは大変ですがやはり面白いです。カップルから親子連れからお年寄りまでいろんな人が見に来ます。この展覧会での経験・研究内容を元に修了論文を書こうと思っていますので本業の研究を行うのは勿論ですが、来場者とのコミュニケーションも忘れずにいたいですね。

 2/16日にコールマイン研究室主催によるトークイベントを行いました。70人を越える方にお集まりいただき、単なるアーティストトークを越えた大変意義のある内容になりました。

▲札幌からお招きした吉岡先生と川俣氏は高校の先輩後輩という間柄。

▲研究室長でありトークの企画者として菊地も参加しました。

▲アーティストとまちづくりコーディネーターというそれぞれの視点から様々な問題について語られました。

研究室のこれからの展開にご期待ください。来月頭には菊地が北海道へリサーチに飛びます。また報告入れたいと思います。
最終更新:2008年02月18日 22:42
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