この3連休を利用して、出雲の大社町手銭記念館で開かれているD1高木さんの個展を見に出かけてきた。初日21日はM2桐生君と一緒に出雲空港に到着後、宍道湖畔の道路を走りながら松江に到着。
宍道湖から出雲方面を振り返ると、雲の切れ間から見事に美しい日差しがもれていた。神在月でちょうど出雲に降臨しているように見える。ヨーロッパでは、この日差しの事を“天使のはしご”というが、どこでも光には神々しさを感じてしまうのだろう。
すでに4時半を廻っていたので松江城の中には入れなかったがお城の周りをうろうろと歩く。松江は静謐なたたずまいの端正な町である。
翌日は出雲大社にでかけた。2001年にワンダリングカメラプロジェクトの途中に寄って以来である。どんな偶然なのか、ワンダリングカメラプロジェクトの一員であり先端3期生の三藤から映画の美術の仕事で私の出身地酒田にいると電話がある。こちらは出雲で、ちょうど彼等のことを思い出していた時だけに驚いた。神有月。
大社は平成の遷宮中で、新しいしめ縄も迫力がある。ここで、夜行バスで駆けつけてきたM1の下平さんと合流。
新しくできた古代出雲歴史博物館にでかける。写真は、発掘されたかつてあったであろう高層神殿の柱の痕跡。多数の説があるが、もし木造建築で40メートル×100メートルもあるような巨大建築があるとすれば見てみたいなあ。模型も美しかった。青森の山内丸山遺跡の木柱遺構も巨大だったし。
いよいよ
手銭記念館 。高木さんが迎えてくれる。かつて造り酒屋だった敷地は個人の邸宅とは思えない大きさ。展示室2は明治時代には小学校にも使ったような、立派な木造建築である。
旧邸宅の方に高木さんの作品が展開されている。最初に入ると、畳にチューブが組み合わされた作品が迎えてくれる。「深く奥底まで」という作品。近寄ってみると、かすかに水が流れ、そしてチョロチョロと音がする。畳に開けられたお茶用の流しを利用したものだ。和室の天井と畳が捩じられた線で結ばれ水が循環している。
次に、急な階段を上り隠し部屋のような2階に上がる。そこは暗い空間で、中空にぶら下げられたスクリーンに映像作品「Flesh and Pump」が上映されている。この作品は中でも特に新鮮だった。映像は幕越しに撮られており被写体のモデル達が撮影意図を知らずに自由に動き回る。スクリーンに触れたりする動作によってスクリーンが揺れるがそれが上映されているこの場のスクリーンのように錯覚する。つまりモデル達があたかもこの部屋のスクリーンの向こう側で歩き回っているようなのだ。ひたすら影を写すことと、スクリーンに映すこととが、留まる事なく動き回るという狙いとともに作品化されたインスタレーション。
2階から降りて、順路としては、最初の部屋のとなり、「ユレフレズレ」という作品。残念ながら暗くて撮影できなかった。クラッシックな形をした柱時計があり、障子の窓にはポンプの呼吸に連動して時計の振り子のように内蔵のような影が揺れる。時計と呼吸とズレながら運動が続く。写真は手持ちで撮ったものなのでとれていないものもあり、詳しくは展覧会のブログ
つくること・なくなること・くりかえされること2008 をご覧ください。
次の「つぼの口を切る」も撮影できなかった。小さなにじり口から茶室にはいると茶わんに抹茶が入っている。そして壁にはもちが膨らむような形体のもの。その二つがチューブでつながりポンプで連動している。面白い。外には「石の涙」という作品。庭の石の1コが透明なヒスイのような薄緑の樹脂に置き換えてある。美味しそうなボンボン菓子にも見える。
次に美しい菓子の折り箱状の作品「ゴショウタイ」。パッと見て、小さな菓子を連想できるのだが、となりの部屋におびただしい量!の菓子と骨状の物体が混じって積み重ねてあるのを見て「ドキッ」とする、何だろう。アーティストトークで質問すると利休の朝顔の逸話を話してくれた。千利休の屋敷の庭に咲き乱れる朝顔の噂を聞きつけた秀吉が庭を見に来た時に、利休は前日に朝顔を全て抜いてしまった。しかし躙り口から茶室をのぞくと一輪だけ茶室に飾ってある。秀吉はその花に感動した。黄金づくりの茶室を自慢する秀吉に、一輪の花の美しさを示したとされる。そういえば、「つぼの口を切る」とは、口切りといわれる11月の茶事にまつわるタイトルですね。
最後は「床に」という作品。座敷は大切な客人をもてなす部屋である。そこにかやを吊るフックがあり、そこからインスピレーションを抱き、かや状の作品を制作したそうだ。透明なチューブで形が自由に作ってある。楽しそうだ。夜になればその透明なチューブも影を壁や床に落とし、空間を支配する。全体的に思ったのは、この凛とした日本家屋の空間を最大限に尊重しながらも、この空間におもねずに、自身の制作をやり切ったということ。そんな高木さんに拍手!!
その晩、招待者皆で古民家塾に泊まった。大勢が集まり薪で竃の鍋を沸かし囲炉裏で鍋を囲んだ。地元の古代出雲歴史博物館の学芸員の方(名前失念失礼)も面白かったなあ。何よりも眼鏡屋さんの飯島さんと米田知子の話で盛り上がったのには驚いた。出雲の文化力を感じた。この古民家塾主催の江角さんも手仕事の復活を目指した修復や制作の
ワークショップ を行っているらしい。また今回の高木展企画者の手銭和加子さんは手銭家のお嬢さんで20代半ばの若さ。こんな興味深い事をどんどん企画して欲しい。夜の写真が無く翌日の写真ですが。
前日の痛飲から目が覚めた翌日は、出西窯というところのオープンスタジオみたいな“火の祭り”に行った。ノンビリと登り窯をながめ、おにぎりと豚汁を振る舞ってもらい、ぶらぶらと作品を眺めた。気の利いた食器があったので、買い込んだ。ホワンとした、楽しい連休だった。
最終更新:2008年11月26日 11:05