追いかけるその腕を
然程強く掴まれた訳でもない腕から、寒気に似た何かが脊椎まで走る。
反射的に男の顔を見上げると目が合った。瞬間、その底の無いどろりとした金色が、まるで人間の睛なんかではない、もっと不吉な全く別の何かのように見えて、
――怖い。
目を逸らしてから、思った。怖い。
「…驚かせた? すみませんね」
穏やかな声は、触れるほど耳元近くで聞こえた。驚いて飛び退こうとするが、腕はまだ掴まれたままで叶わなかった。再び目が合うと、ただ、微笑みかけてくるだけの男の顔。
…先刻のは、錯覚?
「…アリスが好きですか?」
問われて、当然とばかりに頷いた。男の目が緩く眇められた。
「愛している?」
再度の問いに、思わず、振り払おうとしていた腕の力が抜ける。
愛して?
「僕は…そんな、ただ…ギルドで、一緒に過ごしてきた友人で…」
「私は、アリスを愛してますよ」
微笑んだまま、当然のことのように男が言うので、それ以上の言葉が継げなくなる。
「アリスも私を愛していますから」
愛している?
…何だ。
…何なんだ、それは。
「…意味が、分からないです。あんたの言ってることは」
男は何も言わなかった。ゆっくりと、腕が離れた。
それで、もう雑踏の何処を探しても、アリスティードには会えないのだと悟る。
反射的に男の顔を見上げると目が合った。瞬間、その底の無いどろりとした金色が、まるで人間の睛なんかではない、もっと不吉な全く別の何かのように見えて、
――怖い。
目を逸らしてから、思った。怖い。
「…驚かせた? すみませんね」
穏やかな声は、触れるほど耳元近くで聞こえた。驚いて飛び退こうとするが、腕はまだ掴まれたままで叶わなかった。再び目が合うと、ただ、微笑みかけてくるだけの男の顔。
…先刻のは、錯覚?
「…アリスが好きですか?」
問われて、当然とばかりに頷いた。男の目が緩く眇められた。
「愛している?」
再度の問いに、思わず、振り払おうとしていた腕の力が抜ける。
愛して?
「僕は…そんな、ただ…ギルドで、一緒に過ごしてきた友人で…」
「私は、アリスを愛してますよ」
微笑んだまま、当然のことのように男が言うので、それ以上の言葉が継げなくなる。
「アリスも私を愛していますから」
愛している?
…何だ。
…何なんだ、それは。
「…意味が、分からないです。あんたの言ってることは」
男は何も言わなかった。ゆっくりと、腕が離れた。
それで、もう雑踏の何処を探しても、アリスティードには会えないのだと悟る。
「そのうち、君にも教えてあげますよ」
背を向けて歩き始めた男の囁きが、何故か耳元で聞こえたような気がした。