生物的無価値
「…さん、――綺麗ですよ?」
どうせ哂われるだろうと思っていた。何を言っても、しても、大抵この人の反応はそうだと知っている。
「…馬鹿馬鹿しい」
呟いて、微かに喉を震わせて哂う、それは確かに予測の通りだったけれど、一点だけ…明確に違った。
その嘲笑は自嘲だった。
「美しいというのは」
その整った貌で彼は言った。
「それはな、生物に許された最後の、最も無価値な戦略だ」
相槌を期待しないで喋るのも彼の癖だ。その濃青の睛は、何処か遠くを見ていた。
「総ての生物は進化の過程において固有の武器を持つ。敵を倒す獣の爪然り、道具と言語を用いる人間の知恵然り。…造形美というのはな、それらを獲得出来ず、能動的な自己保存のすべを持たない生物の、最後に残された、最低の手段に過ぎない」
静かに吐き捨てて、そして漸く彼は此方に視線を向けた。背筋の顫えるような表情で微笑んで、もう一度だけ、言う。
「…私が、綺麗だと言うなら。…そういうことだ」
「…馬鹿馬鹿しい」
呟いて、微かに喉を震わせて哂う、それは確かに予測の通りだったけれど、一点だけ…明確に違った。
その嘲笑は自嘲だった。
「美しいというのは」
その整った貌で彼は言った。
「それはな、生物に許された最後の、最も無価値な戦略だ」
相槌を期待しないで喋るのも彼の癖だ。その濃青の睛は、何処か遠くを見ていた。
「総ての生物は進化の過程において固有の武器を持つ。敵を倒す獣の爪然り、道具と言語を用いる人間の知恵然り。…造形美というのはな、それらを獲得出来ず、能動的な自己保存のすべを持たない生物の、最後に残された、最低の手段に過ぎない」
静かに吐き捨てて、そして漸く彼は此方に視線を向けた。背筋の顫えるような表情で微笑んで、もう一度だけ、言う。
「…私が、綺麗だと言うなら。…そういうことだ」