「はっ! 自分は、永野英太郎(ながの えいたろう)であります。
本校よりやってまいりました。以後、よろしくお願いします!!」
(暑そうだね)
「いえ、ルールですから。
隊長、本校の指定ではまだ冬服のはずです。
自分は、服装規定の厳守を進言いたします!」
(こちらこそよろしく)
「はっ。早速ですが隊長、本校の指定ではまだ冬服のはずです。
自分は、服装規定の厳守を進言いたします!」


永野は、汗をだらだらかいている。
(あの……)
「ルールを守るべきです、隊長。
我々は模範にならなければいけないんです!!
さあ!冬服に!」
(夏服にしたら?)
「いいえっ!
これはルールですから!」
永野は、ふらふらになりながら歩いて行った。


『幻獣が出現しました!
関係者はただちに戦闘配備についてください!』
「待ってください。
本校の戦闘教則では、ここは撤退すべきです。
ちょ、ちょっと!!
なんで破るんですか!」


「まったく…隊長も隊長なら、部下も部下だ。
どいつもこいつも、ルールをなんだと
思ってるんだ………。」


永野は、汗をだらだらかいている。
(あの……)
「はははは。
あーはっはっは。
何を言ってるんです、隊長。
心頭を滅却すれば火もまた涼しですよ」
永野は、目をぐるぐるにしながら言っている。
(だから、夏服にしたら?)
「い・や・で・す。
隊長こそ、今のうちですよ。
心を入れ替えて精勤するなら。
今なら自分も本校に言いつけたりはしません。」


永野は、暑さで今にも倒れそうになっている。
(強がりはやめなよ/だから、夏服にしたら?)
「う、……。
い、いえ、僕は誘惑には負けんのです。
僕が死んだら、ルールを守って死んだと墓に
書いておいて下さい…」


「どうせ、僕の言う事なんか、
みんな聞かないんですよ。
でもね、我々はチームなんですよ。
好き勝手やってる同好会じゃない。
法の執行機関として御国のために、民衆のために
やってるんです。
それを…。」
(たかが冬服で)
「そのたかが冬服ですら、
守れてないじゃないですか…、みんな。
僕は、悔しい。」
(まあまあ)
「いいんです。
どうせ僕は、みんなに馬鹿にされているんだ……」


「誰かが、ルールを守らなければならないんだ。
誰かが。」


永野は、カピカピだ。
そして、ハデにぶっ倒れた。
(言わんこっちゃない/大変だ!)
あなたは、しばらくあちゃーっと考えた後、
助けを呼ぶことにした。
結局、一日かかってしまった。


「こ、この間はどうもご迷惑をかけました。」
(体を壊す方が悪いぞ/迷惑をかけるのはルール違反でしょ)
「結局僕に、どうあってもルールを
破らせたいんでしょう…、ひどい人だ。
ひどい……。」


「結局、シャツを夏用にしてみました。
ルールを全部守れないのは残念ですが、
可能な限り守ってるつもりです。
わ、笑いたいなら笑えばいいでしょう。
く、くそ、こんな事なら死ぬべきだった。
いや、自決は軍令違反か。
ああ、僕にどうせよと。」


「きっと僕は、自分からルールを破ったという
トラウマを抱えて生きるんですね。」


「この島の、いや、学校の一番駄目な所は何か、
わかりますか?」
(いや、なんだろう?)
「男女でトイレが共用なことです。
僕はトイレで長い間、扉を叩いてたら、
女の子が出て来て危うく大変な事になる所でした。
これだから田舎は……」
(分かる分かる暑いんだろう)
「違います。
男女でトイレが共用なことです。
僕はトイレで長い間、扉を叩いてたら、
女の子が出て来て危うく大変な事になる所でした。
これだから田舎は……。」


「この学校の女は、何を考えているんだ。
学校指定以外の水着は……水着は……いや、まあ、
いいんですけどね。」
(スケベ/うん。いいんだよ)
「ち、違います!
そういう意味じゃありません!
僕は、学校指定の水着の方がですね、
ある意味なんだなと思ってですね……。」
永野は、マニアックなことを言っている。


「僕がなんでこの島に来たか、わかりますか。」
(煙たがられた/左遷だろ)
「自分の部下を捕まえてひどい事言いますね。
でも、まあ、外れじゃありませんよ。
最近後悔はしてませんけどね。
天網恢恢疎にして漏らさずです。
いやー、ルールって守るべきだなあ。」


「困った……。
最近ルール違反が少なくなったんで、
取り立てて言うことがなくなりました。
どうしよう。」
(いいんじゃない?/文句言うために生きてるわけでもないだろう)
「それもそうですね。
わかりました。
何か事件が起きなくても困るのはやめます。
うん。
この島を、みんな揃って離れる事だけを
考えよう。
頼りにしてますよ、隊長。」


ちゃんと日記に書いてますよ。
もちろんルールは完全に守りました。

       父島守備隊、生き残りの証言

……島を離れるその日。
貴方は永野と二人で、学校の戸締りをして、
そして二人並んで、長い坂を下りていきました。
「長い休暇でした。
これから本土に帰って、それから、
本当の戦争の始まりですね。」
(そうだな)
「…いい、休暇でしたよ。
あなたのおかげです。
ありがとう。
……似合ってない、ですか。
そうかな?
船の中は、お客さん扱いで
やる事もないんですよ。
どうです?
休暇の最後ってことで
遊んで暮らしませんか。
いいですね?
付き合いますよ。」
(もう少し明るくなる話題を)
「えーと。
あ、そうだ。
そういやですね。
船の中は、お客さん扱いで
やる事もないんですよ。
どうです?
休暇の最後ってことで
遊んで暮らしませんか。
いいですね?
付き合いますよ。」
貴方と永野は、笑いあうと、
ゆっくり坂道を下っていった。
皆が待っている船が、見えた。

永野英太郎 通常 / 提案 / 派生 / シナリオ

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最終更新:2008年02月21日 21:48