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太陽光発電のコストは、一般的に設備の価格でほぼ決まる。運転に燃料費は不要であり、保守管理費用も比較的小さい。開発当初は非常に高価であり用途が限られたが、現在では一般家庭で導入可能な水準に低減してきている。現時点でのコストは系統電力よりも高価であるが、普及と技術的改良に伴って今後も低減が見込まれ、今後数年のうちに系統電力価格より安くなる(グリッドパリティに到達する)国が増えるとされる。将来の主要な電源の1つとして政策で普及拡大と価格低減を促進する国が増えている。エネルギーセキュリティ向上などの付加的なコスト上のメリットも有するが、特に昼間の需要ピークカットのコスト的メリットが大きいとされる(<ref name="smallisprofitable">エイモリー・B・ロビンス「スモール・イズ・プロフィタブル(Small is profitable)」ISBN 4-87973-294-XP.131-132, <ref name="solarrevolution">Solar Revolution / The Economic Transformation of the Global Energy Industry, Travis Bradford, The MIT press, ISBN 978-0-262-02604-8P.131など)。一方、途上国で送電網が未整備な場合、消費電力に比して燃料輸送費や保守費が高い場所など(山地、離島、砂漠、宇宙等)では、現段階でも他方式に比較して最も安価な電源になる場合が多い。 また国内生産した場合の経済効果も重要視され、近年はグリーン・ニューディール政策の一環に位置づけられることがある。
太陽光発電のコストの相場は、いまのところ他の電源の数倍とも言われる。電力量あたりのコストでは価格競争力が不足するため、現時点では普及促進に際して助成が必要とされる<ref name="IEA_Deployment">IEA, Deploying Renewables -- Principles for Effective Policies, 2008。ただし用途などによっては現状でも価格競争力を有する。普及に伴い、ほぼ経験曲線効果に従ってコストが低下しており<ref name="JRC_Waldau">Thin Film Production Overview in the Short and Medium term, A.J.Waldau, EU Commission, DG JRC, Ispra, 03/09/2008, 23 EU-PVSEC, Valencia、世界的には2012年頃には系統電力よりも安価になる(グリッドパリティに到達する)と見られている<ref name="EPIA_EUROBAT"/><ref name="Nomura"/>。既に一部の欧米企業はグリッドパリティの目安とされる1$/Wpを切る生産コストに到達している<ref name="GreenTechMedia_FS_GridParity">First Solar Reaches Grid-Parity Milestone, Says Report, Greentech Media, December 16, 2008。
こうしたことを踏まえ、”2030年ごろになっても経済的に自立できない”などとする主張は誤りであるとの指摘もなされている<ref name="Nomura"/>。
太陽光発電は天候によって発電量が不随意に変動する。このため発電量に占める太陽光発電の割合がある程度大きくなると、変動への対策のコストが発生するようになるとされる。全てを太陽光発電だけで供給する独立型のシステムでは、蓄電池のコストが上乗せされる。系統連系した場合についても、供給電力に占める割合が増えるにつれて系統側で変動対策のコストが増加すると考えられている。しかし火力発電に比較して随意性で劣る点においては風力発電や原子力発電なども(それぞれ特性は異なるが)同様であり、それぞれ供給電力に占める割合が増えるにつれて対策コストも増えるとされる。こうした電源の割合を増やすため、電気自動車などの負荷側との協調も用いて系統全体の機能を向上させるスマートグリッドなどの対応策の検討や法制化が各国で始まっている<ref name="EU_SmartGrid">SmartGrids Technology Platform(欧州のスマートグリッド開発推進機構)<ref name="US_SmartGrid_NETL">A Vision for the Modern Grid(NETL)<ref name="US_SmartGridLaw">U.S. Energy Independence and Security Act of 2007。日本においても、今後のコスト低下の見通しやコスト負担のしくみなどを含めた議論が始まっている<ref name="JP_GridCost">低炭素電力供給システムに関する研究会新エネルギー大量導入に伴う系統安定化対策・コスト負担検討小委員会(第3回)配付資料(経済産業省)。
一方、下記のように付加的なコスト上のメリットが生じる場合がある。このような付加的なメリットにより、発電量あたりのコストが従来型電源の数倍であっても電力供給網全体のコストを低減させる場合があるとされる(<ref name="smallisprofitable"/>P.192など)。
このほか、経済面では産業としてのメリットも評価の対象となり得る<ref name="BMU_Progress">Renewable energy sources in figures、ドイツ環境省、2008年。景気浮揚策の一部として論じられる場合もある<ref name="SEIA_Economics">Solar Energy Fuels Domestic Job Growth:A Blueprint for Job Creation and Economic Security, SEIA, 2008。
電源としてみた時の太陽光発電のコストは、下記のような要因に影響される。
金銭的収支の面では、下記のような影響要因もある。
日本における太陽光発電システム導入のコストは、開発が本格化する1970年代までは住宅一軒分(通常2~5kW程度)に一億円前後の導入費用がかかる水準(数千万円/kW)であった(<ref name="nedobook">なぜ、日本が太陽光発電で世界一になれたのか、NEDO(非売品),P.82など)。 その後日本におけるkW当たりの設置費用は、1994年度から2003年度までの10年間で、半額以下になっている<ref name="NEF_Price">太陽光発電システム設置価格の推移(新エネルギー財団)。平成17年度におけるシステム導入費用は、新エネルギー財団による集計では、平均価格で1kw発電用パネルが設置代込みで68.4万円になったと報告されている。専用シリコン原料の増産、量産規模の拡大、シリコン使用量の削減や新材料の実用化<ref name="HONDA_CIS">EETimes記事、2007年6月等により、さらなる価格低減が可能と期待されている。 平成17年度における設備容量1kWあたりの平均価格(税抜68.4万円/kW:参考データ参照)を用いて、償却年数20年で計算した場合、利子や保守費用まで含めた太陽光発電量あたりのコストは47~63円/kWh程度と算出される<ref name="NEDO_COST">太陽光発電システムの発電コスト算出法(NEDO)。これは現在の一般家庭向けの電気料金(15~30円/kWh程度)の2-3倍程度である。なお、このコストのうち3~4割程度が利子である。 現在コスト低減の技術開発が進められている<ref name="NEDO_Roadmap">「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030)」について(NEDO)。最大手企業のシャープも、将来的にはコストが現在の半分程度(23円/kWh)には圧縮可能との見通しを示している<ref name="SHARP_FUTURE_COST">http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/business/manufacturer/78384/。また今後稼働予定の堺工場で太陽電池の大量生産を始めるため、太陽電池コスト低下によって、さらなる発電コストの低下が期待される<ref name="ITPRO_SHARP_PV_COST">日経エコロジー、2008/03/25の記事。このように日本でもグリッドパリティが達成可能と見られているが、そこからさらにどこまで安くできるかについては今後の技術開発の状況にも依存し、不確実性もあるとされる<ref name="AIST_economics">太陽光発電のコスト(産業技術総合研究所)。NEDOのロードマップ(PV2030)では将来的にピーク時の電源だけでなく、ベースロード電源に並ぶ価格目標(約10円/kWh)が設定されている<ref name="NEDO_Roadmap"/>。 なお技術的検討から、現行技術の延長で可能な範囲でも公称容量あたりのモジュール単価は65円/Wp程度までコストダウンが可能と見られている<ref name="Zukai_Konishi">桑野幸徳・近藤道雄監修、図解 最新太陽光発電のすべて、工業調査会、2009年7月、ISBN 978-4-7693-7171-7、P.43。
2005年以降は国内市場の縮小と共に価格の増加も見られた<ref name="IEA_PVPS_JPModulePriceTrend">IEA PVPS, Indicative module prices in national currencies per watt in reporting countries<ref name="JPEA_stats">JPEA, 統計・資料。日本の普及促進・価格低減政策は近年の欧米諸国に比して弱く、普及の減速やコストの増大を招いていると見られていたが、2008年から2009年にかけて普及政策の強化が進められている(#政策の節を参照)。
なお下記のような要因により、太陽光発電コストが他の電源に比較してより不利に評価されている例も見られる。
太陽光発電のコストはいわゆる経験則に従って安価になることが知られており、コストを下げるためには市場規模を増やすことが重要とされる。この考え方に沿って様々な形態の導入促進政策が各国で施行されている。このような政策には一般に巨額の費用を要するが、ドイツなどの例においてはそれを上回る経済効果が報告されている。
日本ではRPS法、余剰電力購入制度および地方自治体による補助などを用いて助成が行われているが、2005年に新エネルギー財団による助成が終了してからは国内の市場規模と価格が停滞しており<ref name="IEA_PVPS_JPModulePriceTrend"/><ref name="JPEA_stats"/>、政策の弱さが指摘されている<ref name="Iida_Nikkei">NBOnline 2008年5月26日<ref name="Iida">地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案、飯田哲也、2008年4月、P.13<ref name="Fujita">Business Media 誠、2008年4月<ref name="Enshu">ドイツの固定価格買取制度、遠州 尋美、2006年<ref name="Sakurai">FIT入門、櫻井啓一郎、2008年<ref name="Okada">Livedoorニュース、2008年03月24日。このような事態に対応して経産省文科省国土交通省環境省の4省による「太陽光発電の導入拡大のためのアクションプラン」<ref name="ActionPlan">「太陽光発電導入拡大のためのアクションプラン」(進捗状況フォローアップと今後の取組)について、経産省、2009年3月17日などの取り組みが行われている。2009年初めから緊急提言に基づいて補助金が復活されると共に、現行の政策を大幅に強化する買取制度の導入が表明されている(再生可能エネルギーを参照)。
なお日本においても、下記のように太陽光発電の普及促進による経済効果が期待されている。
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