戦闘を計画する:「METT-T」

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シナリオの最初では推定を行って任務を達成する最善の方法を決定しなければならない。この推定を行うにあたってはMETT-T要素の考慮を行わなければならない。推定は持続的な過程であるべきだ。最初の接触の後もそのまま使用し続けられる計画などないというのは戦闘の真理である。つまり、確実な予期に基づいて計画を立ててもその戦闘を通して正しくあり続けるかどうかはわからないということだ。状況の変化に警戒し続け、継続的にMETT-T分析を行わなければならない。特定の事柄については計画の変更、あるいは継続を決定することになる。これらの要素について考えよう。
  • 自軍ユニットが特定の任務にいつでもできるようになっている。何かうまくいかないので自軍部隊を調整するのに時間をとろうと決断した場合、敵にも調整を行う時間を与えてしまうことになるだろう。実際のところ敵はこちらの進撃の停止によってこちらへの阻止攻撃を行うという利を得てしまうかもしれないのだ。これを防ぐためには少なくとも攻撃/防御を強要する風を見せて敵を動かないようにしなければならないのだ。
  • 何もかもが計画通り行っている場合はうまくいっているかあるいは欺瞞されているかを考慮しなければならない。敵がこちら側に利益あるように見えるが本当は自分たちに利益になるようなやり方でこちら側に計画・作戦を実行させようとしていることを忘れてはならない。敵の罠を避けるために速度を落とすべきか、戦果拡張のため強引にでも前進すべきか。もしよい偵察部隊があって敵ユニットを発見できていれば欺瞞される可能性は少なくなりより自信を持って前進できるであろう。
カギとなる時間と場所に継続的に戦闘力を集中させる能力、攻撃の運動量を保つ能力、敵が制御できないテンポでの完璧な防御は非常に重要である。予想(シナリオ開始前の良い計画立案を通しての)と修正は(戦闘中の偵察に基づく)あらゆる作戦の成功のカギとなるものだ。

作戦計画のPACE:物事は予想した通りには進まないため、一つの計画では不十分である。以下のことを計画する必要がある。
  • 第一案(Primary):ことがどのように進行するかの推定を元にどのように目標を達成するか
  • 代案(Alternate):第一案が失敗した場合に目標を達成するもう一つの方法
  • 偶然性(Contingency):予期せぬことが発生した場合には予備を投入することになる。
  • 緊急時(Emergency):もし本当に、本当に状況がまずくなれば、いつでも退却したり増援を呼んだり降伏キーを押すことができる

任務(Mission)・敵(Enemy)・部隊(Troops)・地形と天候(Terrain and Weather)・利用可能な時間(Time available)

これらを約してMETT-Tは作戦計画時にその成功のために考えなければならない主なことを網羅している。特殊な状況下では他の点、例えば侵攻時の天候などが非常な重要性を帯びることになる。これらについては特殊な戦闘形態の項で言及がなされている。

任務

勝利のために何をなさねばならないかが任務である。任務は通常箇条書きの陳述、つまり誰が・何を・どこで・なぜの形をとって与えられる。一般には任務はこちらより多く敵ユニットを撃破し勝利ヘクスを獲得することである。特殊なシナリオでは特定の必要条件、例えばマップからの脱出等があることもある。任務を分析する際は成し遂げるべき特定の任務とその相対的重要性を決定しなければならない。直接的に陳述される任務もあるが間接的で明確でないものもある。マップ上に川のある攻撃形態のシナリオでは直接的任務は勝利ヘクスの奪取であるが間接的任務は渡河を実施することとなる。いくつかの任務、例えばこちらが発見される前に敵を発見せよ等は間接的であるのものの全てのシナリオに共通である。

キャンペーンにおいては間接的目標は自軍の経験値を保護することとなる。これは死傷者を出さない・乗員を脱出させる・脆弱なユニットを損害の出るやり方で使わないことでこれを次の戦闘まで保護することを意味する。シングルバトルではこの必要がなく、部隊が全体としてその目的を達成できるだけの戦闘力を保っていれば損害にも寛容になりうる。実際のところもしシングルバトルで死傷者を出していなければそれは十分に攻撃的に戦っていないということであろう。

任務陳述は戦力指向(敵戦力をそれがどこにいるのかには構わず撃破する)のものと地形指向(目標地点をそこに敵戦力がいるかいないかにかかわらず占拠する)のものがある。ソヴィエト軍の任務陳述は戦力指向になりがちで合衆国軍の任務陳述は地形指向になりがちである。

これが直接的任務の大まかな優先順の一覧である。
  • 勝利ヘクスの確保
  • 敵ユニットの撃破
これが間接的任務の大まかな優先順の一覧である。
  • 敵がこちらの部隊の配置を見えないようにする(対偵察の項参照)あるいは敵を欺瞞(欺瞞の項参照)する
  • 敵部隊の配置を決定する(偵察の項参照)
  • ユニットを潰滅から守る(キャンペーンのみ)
  • ユニットの経験値を保護する(キャンペーンのみ)
  • ユニットに経験値を得させる(キャンペーンのみ)

これは対戦相手(人あるいはAI)とその戦力を表す。
  • 対AI
    • AIは非常に直線的にプレイする。攻撃の際はその戦力を一列に並べて直進してくる。射撃と機動どころか機動すら行わない。その歩兵と装甲部隊が分離し、諸兵科連合での前進を保とうともしない時がある。全勝利ヘクスを同時に攻撃してくるときもあれば、そのうちの一つを最初に攻撃/防御してこないこともある。AIは「クソ」かもしれないが、WWII初期のソ連軍の様に戦闘するといえる。
    • AIはあまり柔軟ではないため、こちら側としても柔軟である必要はない。AIに対しては予備は限定的で良く、あまり解放翼にも心配せず、ユニットが後方に浸透/空挺降下してくる心配もあまりしなくてよい。
  • 対人:これについていえることは対戦するかもしれない人可能な限りの全てにおいて無限のバリエーションがあるということである。敵の戦術的強みが分かるまで最初は慎重に行動せよ。だが少なくとも敵の二つの行動については予想しなければならない。
    • 最確実:もし敵の立場ならどの種類の作戦を準備するか?
    • 最危険:こちらの作戦に対して敵がとりうる最も危険な計画は何か?例を挙げると、進撃戦シナリオで、こちらが北に集中して南は歩兵いくらかと対戦車砲の節約した戦力で南を防御する作戦の場合、敵がこちら側に諸兵科部隊を投入して妨害攻撃を行ってきた場合どうするのか?
    • 敵側でプレイを行って敵作戦計画の二面的な本質をもたらすことすらありうるであろう(これはシナリオのみで起こりうる)
  • 注意すべきこととしてAIがいかにクソであるとはいえ、これは決してユニットを移動させるのを忘れることはなく、こちらがAI側のティーガーを撃破しても興奮することもなければイライラすることもない。これはAIの利点であり、これを最小化することはない。

  • 敵部隊(わかっている範囲/推測)を一覧表にするだけでは不十分である。こちらの部隊と敵部隊がお互いに対して何をしうる可能性があるかを知らなくてはならない。考えるべき範囲は以下の通り:
    • 直接射撃:敵よりもうまく射撃できるか?これは双方の相対貫通力・装甲防備・距離測定器・練度を計算にいれたものである。どの距離からなら敵装甲ユニットを確実に撃破でき、どの距離からなら敵に撃破されうるか?例えば、エリートユニットのドイツ軍IV号戦車(75mm長砲身)はソヴィエト軍T-34戦車を側面20ヘクスの距離から安定して撃破できるが、前面では常には撃破できない。正面長距離から撃破するには88mm砲が必要である。これによってIV号戦車を勝利ヘクスへの接近路側面に、88砲を正面で防御させるという作戦が導き出されるだろう。
    • 機動力:敵部隊は徒歩かそれとも何らかの車両に乗車しているか?敵部隊はこの戦場の与えられた地形においてこちらの部隊より機動力があるか?
    • 戦闘能力:こちらあるいは敵は他方が持っていないような特別な戦闘能力、例えば航空機・特殊部隊/パルチザン・重装甲ユニット等を持っていないか?どのようにこれを運用するか?あるいはそれに対して防御するか?
    • 物量:ソ連軍に曰く物量はそれ自体の質である。一方が他方を純粋な数で圧倒できているか?もしそうならより少数の側は地形や障害を利用したりして多数の側を十分に撃破できるまで長く遅滞し、これを物量で圧倒していない状態にすることができるか?

部隊

  • 上の敵の項で述べたように、以下を考慮せよ
    • 自軍の戦闘能力はどれぐらいか?
    • どのように自軍の戦闘能力を運用するか?
    • 敵はこちらの戦闘能力に対してどのように防御してくるか?
  • 自軍ユニットの編成はこれらをどのように使うか、特に指揮と統制に影響を及ぼし得る。たとえこちら側に相対的に無敵の重戦車が数台あっても、これを広範囲に分散して指揮統制が効かない状態で運用しても役に立たない。指揮統制はこれらを集結させ続けることを強制するのである。
  • SPWAWマニュアル39ページの国別特性にも注意を払え。

地形と天候

  • 地形と天候は最大の戦闘乗数である。つまり、これは戦闘ユニットの戦闘力に最も(戦闘ユニットそれ自体よりも)大きな影響(良いものにせよ悪いものにせよ)を与える要素である。
  • 戦闘を計画する時は任務を読んだ後マップについてよく知ることがつぎにすることになる。
  • 特定の地形ヘクスとその効果についてはSPWAWマニュアル41ページと67ページに記述がある。
  • システマティックなやり方でマップを観察せよ。まず自軍の戦闘開始時の各ユニットの位置から目標地点までを見てそれらをつなぐルートを探せ。「最も」良いルートはまた「最も」防御されやすいルートでもある可能性が高いだろうと考えよ。そうしておそらくは間接的な接近ルートを考えたくなるだろう。こちらが考えているのと同じMETT-T要素を与えられて敵-がどのようにその任務を達成するかも考慮せよ。
  • 地形についてはこれらの要素を考慮せよ:
    • 機動性:開けた、機動性の高い地形は攻撃側に有利となる。各地形の移動時のMP消費についてはSPWAWマニュアル67ページに記述がある。
    • 隘路とは複数の進撃路が合流し交通路が形成されたり障害の手近な迂回路を持てない地形を通過したりする地域である。防御側は隘路をその防衛線の中に統合しなければならず、攻撃側はこれを迂回するか戦って通過するかを計画しなければならない。
    • 決断点とは次に何をするかを決定する必要がある地域である。これらは通常異なるルートが合流・分岐する地点がそれになる。移動、防御するのはこちらかもう一方か?
    • 隠蔽:自軍、あるいは敵がこちらの望むまで察知されずに移動、戦闘できる場所はどこだ?
    • 接近・撤退・側面機動経路:どのようにマップ上を動くか、そして敵はどのように動くかを考えよ。
      • 察知されずに相手に対して利点を得られる(通常は敵を上/側面/後方から射撃できる)地点への移動が可能なルートは存在するか?
      • もし望むルートがふさがれていた場合、どのように側面へ移動して別の進撃路を進むのか?
      • 敵はどのように側面に部隊を移動させてくるのか?これらのルートに間接射撃を要請できるか/すべきか?
      • もし副部隊あるいは偵察部隊があり、これが圧倒的な抵抗にあった場合はどのように退却するのか?(これに全滅するまでの死守を求めない限り)
      • こちらの部隊あるいは敵部隊はどこで進撃路を監視できるか?
    • 視界:長距離視界の利く大規模な開平地はどちらが長距離射程砲の利を得ているかによって防御側にも攻撃側にも有利になりうる。
    • 防御陣地となりうる地形(荒地、建造物、林等):歩兵と砲についてはSPWAWマニュアル68ページを、車両については66ページを参照せよ。荒地地形にいる歩兵は装甲ユニットの直接射撃で排除することがほとんど不可能である。このためには防御側を大火力でピヨらせた上で歩兵、ピンチの際は装甲車から降ろした乗員が必要になる。もし地形が十分な防御能力を提供しない場合は砲兵や梱包爆薬で弾孔を作って歩兵や砲に遮蔽を得させることが可能である。
AIが巧いことの一つが地形の利用である。AIにはユニットを相手がかなり接近するか隣接しない限り視線の通らない地面の「窪み」に配置する妙な能力がある。またAIはユニットを高地の後ろや建物等の視線の端に配置するのも上手である。我々もAIのこれらのところから学べることもあるかもしれない。
  • 天候の要素について考慮せよ:
    • 視界:天候と時刻の双方が視界に影響を与える。これは煙の立った場所を除いて1回の戦闘中変化しない。 If you don't like it, you can change it with Fred's editor (downloadable from the Matrix games site).
    • 移動率への効果は雪や雨、砂嵐の際にMP+1が余計にかかるというものである。
  • 合衆国軍野戦教範、FM 5-33地形分析がPDF文書として利用可能なので読んでみるとよいだろう。

利用可能な時間

  • 戦闘が完了するまでの時間は常に正確にわかる。これはこのゲームでは問題にならない現実の不確かな部分である。
  • ジェネレイテッドキャンペーンの各戦闘では通常焦ることなく任務を達成できるだけの十分な時間がある。
  • 防御側、あるいは弱い攻撃側としては敵を損耗させている間に空間を時間に交換することが可能かどうか、そして敵ユニットを十分な数撃破出来たら攻勢に転移することを考慮せよ。
  • ジェネレイテッドキャンペーン/シングルバトルの遅滞戦では勝利ヘクスのほとんどが進撃側の開始位置に近すぎ、時間と交換する土地が貴重で少ない。よい地点に布陣しての遅滞や後退しつつ戦うのは指揮するのが難しい。なぜならそれをやるだけの十分な縦深がないためだ。
  • 時間が非常に重要となるシナリオも存在する。大損害を出しても最も直接的なルートで進撃するのか、あるいはユニットの損害を抑えるがおそらくは時間を浪費するより長いルートで進撃するのか?
任務計画のチュートリアルを参照せよ

最終更新:2014年06月14日 12:02