【名前】No.8『恐獣』 / ルールル・ルール
【性別】雌
【年齢】15(推定)
【性格】純真無垢。獣の温情と暴性を兼ね持つ。かなりの気分屋。
【容姿】燃えるような黄銅の体毛に包まれた四足歩行の獣。
体長は諸説あり。5mを超える巨体として暴れまわった記録から、30cm程度の小動物だったとの報告まで。
本人の意志で体積を変更できるというのが通説。腹部の毛並みにⅧの刻印。
極少数、人間体の姿を見たとの報告もあるが、信憑性に乏しく公的には記録されていない。
【神禍】『第八崩壊・原獣再帰(リクレイオ・ビースト)』
思想:自然に回帰し、思うがままに野原を駆け抜けたい。
第八の災禍。
神が地へ降ろした密林の恐獣。
獣は疾駆する。本能のままに、立ちふさがる全てを引き裂き蹴散らして。
自身を不滅の獣に変貌させるという単純明快な能力。されど恐るべき野生の暴威。
膨大な膂力から放たれる爪牙の一撃は、鋼鉄すら容易く引き千切る。
咆哮は空気振動だけで周囲を崩壊させる天然の音響兵器。
無駄なき筋繊維の連携駆動により猛スピードで移動する巨体は、前進のみで建物を轢き潰す災害に等しい。
黄銅色の毛並みは滑らかでありながら、鋼を編み込んだように硬質であり銃撃すら通さない。
総じて凄まじい生命力。加えて周囲の緑化が進むという環境変異能力を備えたとされる。
それは獣化の神禍に目覚めた蛮族達の長となり、増大した群れは〈暴進獣群〉と呼ばれた。
人域に侵入した獣群と国家の衝突は苛烈を極め、最後には相打ちに終わったという。
〈暴進獣群〉は他の崩壊との衝突、勇者との交戦を繰り返した末に離散。長もまた重傷を負い消息を絶つ。
その頃には既に多大な被害を受けていた南米の秩序は崩れきっており、収まらぬ寒気を前に立て直す希望は皆無であった。
今や無意味な考察となるが、第八崩壊が明確に人類に害意を抱いていたかは疑問が残る。
境界を踏み越えたのは群れであるが、攻撃を仕掛けたのは国家が先であった。
以降、コミュニケーションも図れぬまま、報復合戦の様相を模したとされる。
神禍である以上、人としての姿があったはずだが公式の目撃証言はない。
発生の観測された密林近辺では、辿々しい発声による歌を聞いた、との報告もあるが関係性は不明である。
【詳細設定】
203X/XX/XX
過重神禍・十二崩壊。
人類を滅亡に導いた黎明の十二体。
南アメリカ大陸、ブラジルにて発生した八番目の災禍。
史上最も原始的な手段で人類を滅ぼした"恐獣"として記録されている。
なんて伝奇じみた話が伝わったのも今や昔のこと。
すっかり人類の居なくなった南米にて、私は旅を続けている。
世界は過酷になるばかりで、なかなか筆を取る時間もない。
旅の途中で死にかけるのも日常茶飯事。
たとえば、かつて7カ国にまたがる大自然であったアマゾン熱帯雨林を横断する道程。
全球凍結以後、滅びた世界を見てきたけれど、これほど緑の残る地域は初めてだった。
とはいえ、かの大自然すら今や僅かな緑地を残すのみ。着実に凍結に飲み込まれ、滅亡を待っている。
なので数週間前、寒冷地域と同装備で十分、と油断した私は見事に遭難の憂き目にあった。
獣の生息する湿地で磁場狂いに対応できず食料の大半を失い、足を捻挫した日には旅の終わりを覚悟した。
偶然にも、あの少女と出会わなければ、間違いなく泥中に骨を埋めていただろう。
彼女は日焼けした小柄な体躯に、獣皮で出来たマントを羽織っていた。
鬣のように黄銅色の長髪を靡かせ、軽い身のこなしで樹から樹へ飛び移る。
周辺部族は全滅したと聞いていたけど、知られていない生き残り集落があったのだろう。
最初は酷く警戒され、引っ掻かれたり噛みつかれもした。
けれど一週間も根気強く話し続け、菓子を与えたりしている間に、少し心を開いてくれたのだろうか。
菓子のお礼なのか食料を分けてくれたり、最後には密林の出口へ案内までしてくれた。
少女には感謝の念が尽きない。
名を聞こうにも言葉は通じなかったが、一度だけ辿々しい口調で「るーるる、るーる」と応えてくれた。
以降、彼女を「ルー」と呼称したが、意図が伝わったかは分からない。
別れの日。出口を目の前にした私が、礼を言おうと振り返ったとき。
丁度、少女が密林の奥に飛び退り、暗中に消えていくさなか。
捲れ上がったマントの内側に一瞬見た、少女の腹部に刻まれた『Ⅷ』の印が、強く目に焼き付いている。
明日、南米を発つ予定だが、暫く私の耳には残り続けるだろう。
もうじき凍結に飲み込まれる密林の奥から僅かに届いた、「るー、るー」という、あどけない歌声が。
―――『とある旅人の日誌』より抜粋。
最終更新:2025年06月08日 15:27