【名前】マルコキアス=ヴェルナー
【性別】男
【年齢】28
【性格】元来は几帳面で義に厚い生真面目な男。しかし現在は皮肉屋かつ冷笑的な態度を取ることが多く、他者との距離を常に意図的に保とうとする。だがその内面には、今なお「何かを守りたい」「誰かに誇れる生き方をしたい」という、かつての騎士道精神の残滓がくすぶっている。
【容姿】全体的に鋭い印象を持つ青年。浅黒い肌に長めの黒髪を後ろで束ね、鋭く光るグレーの瞳を持つ。防寒用の厚手の外套の下には、磨耗した皮の胸当て。腰には細身のレイピアが吊られており、柄には家紋を刻んだ金の意匠が残っている。顔立ちは整っているが、いつも無精髭を生やしており、眼光の鋭さと相まって近寄りがたい雰囲気を纏っている。

【神禍】
『真実に届く突き(ラメント・ド・ランス)』
思想:この刃(レイピア)を他者のために使いたい。

所有するレイピアの刺突リーチを伸ばす能力。
最大で十数メートル先の対象を貫くことができ、伸縮は任意、即座に可能。
視線さえ合えば刃は瞬時にその間合いを詰め、通常の刺突では届かない位置の対象を正確に狙い撃つ精密性を持つ。
この力は、マルコキアスの「届かぬものを斬れなかった己への忸怩」が歪んで昇華したもの。
騎士でありながら守れなかった過去が、彼に「もっとも遠くにいる者をもこの手で守るか、殺す力を」と願わせた。

【詳細設定】
マルコキアス=ヴェルナーは、かつて“高地のヴェルナー”と呼ばれた一族の末裔である。
彼の一族は、旧世界において儀礼的な剣術文化を守り続けた古流騎士の家系である。
戦争とは無縁な時代にあっても、彼らは「誇り」と「形式」の象徴として、子に剣術を教え、家訓を守り、時には社会的な矛盾に反発する義士として語られてきた。

マルコキアスはその中でも特に優秀で、礼儀作法や騎士道においても祖父の誇りであった。10代後半にはいくつかの自警団にも所属し、困窮する地方の人々を守る任務に従事するなど、“真の騎士”になろうと努力していた。
しかし、全球凍結がすべてを変えた。
冬が終わらず、作物が枯れ、文明が崩壊し、人々の目が信頼や誇りから「食料と火」に向けられたとき、マルコキアスはなす術もなくすべてを失った。家族は寒さと飢えにより次々と命を落とし、剣の腕も、誓った騎士道も、何一つ役に立たなかった。

彼は知ってしまったのだ。「義に生きる者から先に死ぬ」ことを。
飢えを凌ぐため、全球凍結から一月後には彼はその剣を初めて"略奪"に使った。相手は、同じく生き延びようとする者たち。だが、そこで彼が驚いたのは、自らの手が震えなかったことだった。
以降、彼は「略奪者」となり、凍結後の五年間を生き延びた。複数の集団を渡り歩きながら、略奪や護衛、時に殺人さえ請け負いながら飄々と日々を過ごす日々。
しかし、彼は「残酷」になれなかった。見捨てた命の数だけ、夢に見る子供の幻影、叫ぶ老人、膝を抱える女が瞼に焼きついた。

彼の神禍は、全球凍結から数ヶ月の後に発現する。
当時、彼は一人の少女を護衛していた。貴族出身の少女で、凍死しかけていた彼女を見捨てきれず、彼は自らの食料を削ってまで保護していた。しかし、ある日遠くから放たれた銃弾が彼女を撃ち抜いた。間に合わなかった――レイピアは届かなかった。
全球凍結で世界が終わってから、彼のレイピアは自分のためにしか使えていない。

皮肉なことに、恥知らずなことに、これが彼の思想の起点になった。

「もしも、あの時、この刃が届いていたら――」

以降、彼はこの力を"殺し"にではなく"未然の抑止"に使ってきた。例えば、「あいつはこの距離でも殺せる」と相手に思わせ、戦闘を避ける――そんな使い方だ。
マルコキアスは今、孤独にさまよう一匹狼として、凍土を放浪している。正義も悪もない。生きるための契約をこなし、報酬を受け取り、また次へと渡るだけの日々。
だが、それでも。
みにくく汚れたこの命が尽きる前に、何か一つ――誇れる仕事をしたい。
そう思っている自分に、彼はまだ気づいていない。

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最終更新:2025年06月03日 15:32