【名前】四十万 高路戯(しじま こおろぎ)
【性別】男性
【年齢】24
【性格】極度の人間不信で猜疑心が強い。口数は極端に少なく、他者と馴れ合うことを徹底して避ける。常に周囲を警戒し、僅かな物音や気配の変化にも敏感に反応する。感情を表に出すことは滅多にないが、唯一「渇き」への恐怖と、それを満たすための執着だけは時折、獣のような鋭い眼光として表出する。生き汚いと罵られようと、生き残ることを至上命題としており、そのためには非情な判断も厭わないリアリスト。しかし、その心の奥底には、かつて失った「当たり前の日常」と「温もり」への微かな残滓が凍りついている。
【容姿】中肉中背だが、長年の極限生活で贅肉は一切なく、引き締まっている。顔色は悪く、目の下には常に濃い隈が刻まれている。髪は黒く、無造作に伸びて目元を隠しがち。極寒に対応するため、複数の衣服を重ね着し、最も外側には防水・防寒性の高いボロボロのコートを羽織っている。首元は汚れたマフラーで覆い、顔の下半分は高機能マスクで隠していることが多い。手には常に耐寒グローブを装着。腰には氷を砕くためのピッケルや、手製のろ過装置、そして数本の空の水筒をぶら下げている。その瞳は、常に獲物を探す獣のように鋭く、それでいてどこか虚無感を漂わせている。
【神禍】
『渇望・水脈探知(サースト・ファインダー)』
思想:渇きへの恐怖と、それを満たす渇望。
半径約500m以内の「飲用可能な水」及び「利用価値のある清浄な氷」の正確な位置、量、質を感知する。
汚染された水や危険な不純物を含む氷はノイズとして識別し、安全な水源のみを特定可能。地中深くの水脈や、巧妙に隠された貯水槽なども見逃さない。ただし、感知できるのはあくまで「水」そのものであり、それ以外の物質や生物の探知はできない。
【詳細設定】
四十万高路戯、通称「コオロギ」。
その名は、か細くも生命力の強い虫のように、どんな状況でも生き延びようとする彼の執念を表しているかのようだ。
全球凍結が始まったあの日、彼はまだ19歳の平凡な学生だった。家族と共に避難所へ向かう途中、暴徒の襲撃に遭い、両親と妹を目の前で失う。
唯一生き残った彼もまた、食料と水を奪われ、雪原に置き去りにされた。三日三晩、凍える寒さと絶望的な渇きに苛まれ、死を覚悟したその時、彼の神禍『渇望・水脈探知』は覚醒した。それは、「生きたい、水が欲しい」という本能的な叫びが、神の呪いと結びついた瞬間だった。
神禍の力でかろうじて汚染されていない氷塊を見つけ出し、九死に一生を得たコオロギ。
しかし、その経験は彼の心を深く歪ませた。信じていた人々にあっけなく裏切られ、奪われ、家族を失った悲しみと怒り。そして何よりも、喉が張り裂けるような渇きの苦しみ。それらがトラウマとなり、彼は「二度と渇きたくない」「誰にも奪われたくない」という強迫観念にも似た渇望を抱くようになる。
以来5年間、彼は誰にも頼らず、誰のことも信用せず、ただひたすらに水を探し、生き延びてきた。彼の能力は、この極寒のポストアポカリプス世界において、生存に直結する極めて重要なものだ。しかし、それは同時に、他者からの嫉妬や敵意を招く原因ともなった。水は命そのものであり、それを容易に見つけ出せるコオロギは、多くの生存者にとって垂涎の的。実際、彼の能力を知った小規模な集落に一時的に保護されたこともあったが、結局は水の分配を巡る争いや、能力の酷使を強いられる状況に嫌気が差し、あるいは裏切られ、逃げ出すことを繰り返してきた。
そうした経験が、彼の人間不信をさらに加速させた。今では、他人と関わることを極力避け、見つけた水源も独占し、誰にも分け与えることはない。もし他者に出くわしても、基本的には気配を殺してやり過ごすか、必要とあらば威嚇して追い払う。彼にとって水は、生きるための糧であると同時に、他者を遠ざけるための盾であり、そして、時に他者の命を間接的に脅かす「武器」にもなり得るのだ。凍りついた世界で、彼の心もまた、硬く冷たく凍てついている。
しかし、その凍りついた心の奥底、最も深い場所には、かつて家族と交わした「また一緒に温かいお茶を飲もう」という、今となっては叶わぬ約束が、消えない残り火のように燻っている。
最終更新:2025年06月03日 15:33