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一社高蔵&アサシン

――――今まで 何か いつも 不安感が つきまとっていた。

漠然と 自分の周りを 構成するものの 何かが 間違っているんじゃ ないかと。

大きな力が あれば その間違いを 正していける。

まっすぐ 歩いていける――――。




(アサシン、外にいる携帯を弄りながら歩いてる男を殺せ)

(は?)


冬木市内の喫茶店の一室。
ともすれば少女にも見える少年が、傍らの見えない存在――霊体化した己のサーヴァント、アサシンに唐突に念話で話しかける。
少年の格好をした少女は己のマスターの意味不明な台詞に困惑した声をあげる。

(携帯を弄って歩くような人間は、自分の不注意が原因で他人が死んでもいいと思っている。
そういう人間は殺されても文句を言えないだろ)

(マスター、些か極論が過ぎるのではないか?)

やんわりと男装の少女が少年を諫める。
だが、少年は聞く耳を持たない。

(お前は知らないだろうが、携帯電話やスマートフォンを弄って起きる事故は年々増えているんだ。
ああいう奴はいつ大事故を引き起こしても不思議じゃない。
今のうちに殺した方が世の中のためだ)

なんとこの少年は、聖杯戦争など関係なく世の中のためにマナー違反者を殺すという。
世直しと言えば聞こえはいいが、現代においてマナー違反者を殺害するなど無差別殺人と大差ない。
だが、この少年には倫理観での説得が無意味なことは短い付き合いでも嫌というほど知っている。


(しかしマスター、ルーラーに目を付けられるぞ)

よって、アサシンは実利による説得を試みた。
ルーラー、それは聖杯戦争を管理する存在。
部外者に危害を加えるなど聖杯戦争のルールを犯した場合、ペナルティを与えてくるのだ。


(サーヴァントの超常の力では、警察は誤魔化せてもルーラーは誤魔化せない……か)

(その通りだ、だから)

(偶然を装って何人か殺すぐらいなら、ルーラーも介入してこないんじゃないか?)

だが、少年は懲りずに殺しの算段を立て続ける。

(その辺りはルーラーの性質によるとしか言いようがないな……。
そして、現時点ではルーラーの性質など確かめようもない)

アサシンはうんざりしながらもその質問に答える。
そうこうしているうちに喫茶店のショーウインドから見えていた携帯を弄りながら歩いていた男性は見えなくなった。

(さらに言わせてもらえば、たとえルーラーが介入してこなくとも、変死事件を優秀な魔術師に調べられれば我々の足取りを掴まれる危険もある)

アサシンならば普通の人間には絶対に気付かれずに人を殺すことができる。
だが、人間は原因の分からない死を恐怖する。
変死事件をニュースで騒ぎ立てるのは想像に難くない。
アサシンとはいえ……いや、アサシンだからこそ自らの存在を流布するようなことはしたくなかった。

(一社、自重してくれ)

あえてマスターではなく名前で呼ぶことで自らの本気を伝えるアサシン。
少年……一社 高蔵は、軽くため息をついて諦めたように天井を見上げる。

(一社、君だって願いがあるのだろう?
ならば自分から不利になるような真似は慎むべきだ)

実利ならば説得に応じる芽があると踏んだアサシンは、聖杯にかける願いというマスターにとって絶対の目標を例に出す。
しかし――――

(お前は馬鹿か、いつ俺に願いがあるなんて言った)

(なに?マスターは随分と熱心に俺の能力を確認していたじゃないか)

そう、一社はアサシンを召喚して以降、その能力の確認に熱心に努めていた。
人気のいない所で霊体化と実体化を繰り返させたり、宝具を開放させたりといった具合にだ。

(それはお前の能力が、社会のルールを守らない奴らを殺すのに役立つと思ったからだ。
実際、ルーラーの存在さえなければお前の能力はバレずに殺人するのにすこぶる有用だ)

アサシンは暗殺者のクラスで召喚されたが、元々は優秀な兵士である。
性別を偽って軍隊に入り、周囲を欺き続けていたことから、宝具と合わさってやや特殊な気配遮断スキルが宛てがわれたことには納得している。

そしてアサシンというクラスの特性から暗殺をすること自体にも抵抗はない。
しかし、聖杯戦争となんの関係もない無辜の民まで殺害することには反発があった。

とんでもないマスターに召喚されてしまったものだ、と思いながらも召喚された以上、主には最大限尽くすつもりだ。
なんとか折り合いを付けられないものかと、アサシンは一社に質問を続ける。

(では、マスターはこれからどうするつもりだ?)

(一番の目標はルーラーの性質を確かめることだが……そう簡単に会えるかどうかも分からないか。
とりあえずは敵のマスターを殺すことを目標にするか)

(願いがない割には随分と積極的だな?)

アサシンのその言葉に、一社はアサシンをじっと見つめて真剣な顔をする。

(なぁアサシン、こんな馬鹿げた戦いに参加するような人間なんて、死んでもいいと思わないか?)

(なに?)

(何でも願いが叶うなんて、低俗なフィクションにありがちな話だ。
そんな怪しい話に飛びつくような想像力の欠落した馬鹿は、死んでもいい)

相変わらずの過激な一社の持論に辟易しそうになるが、この持論にはアサシンも反論があった。

(だが、今回の聖杯戦争には本人の意志ではなく、巻き込まれた人間もいるはずだ。
マスターもそうだろう?)

一社は家庭の事情で引っ越しが多い。
つい先日、市内の中学校に転入したばかりだ。
今回も今まで何回も繰り返してきた引っ越しの一回にしか考えていなかったが、冬木で暮らしているうちにいつの間にか聖杯戦争のマスターに選ばれていたという訳だ。

(確かに巻き込まれただけの人間もいるだろう。
だが、本気で戦いを嫌がっているのなら令呪を全て使ってサーヴァントを自害させてから、さっさと冬木を離れればいいだけだ。
それをしない時点で、本人もこの聖杯戦争に乗り気ということだろう)

(しかし、マスターのような学生の場合は街から離れることも容易ではないのではないか?)

社会には色々なしがらみがある。
特に学生の場合は金銭面において親に依存している。
一社のような中学生はバイトもできないので、そう簡単に住んでいる街から離れることはできない。

(俺は何も冬木から引っ越せと言ってる訳じゃない。
聖杯戦争が終わるまでの間だけでも親戚の家に泊まるなり、家からいくらか金を持ち出してカプセルホテルや漫画喫茶に寝泊まりすればいいだけだ。
親からの説教や学校の出席日数の問題もあるだろうが、命にかえるようなものでもない)

確かに、一社の言うことにも一理ある。
本当に巻き込まれただけならばさっさと逃げ出す方が自然だ。
わざわざ聖杯戦争の場に残っているということは、一定以上の「やる気」があるからだろう。

(つまりマスターは、願いはないが他のマスターを殺すということだな?)

(ルーラーが放任主義だった場合は世直しを優先するが、基本的にはその認識で構わない。
俺には願いはないしそんな胡散臭い物に頼る気もないから、もし勝ち残ったら聖杯は丸ごとお前にやるよ)

今まで我慢していたため息がとうとうアサシンの口から吐き出される。
この過激な子供と上手く付き合っていく自信がない。

思えば、自分は生前から貧乏くじを引くことが多かった。
家に成人男子が病床の父しかいなかったために、男装して従軍して以降、隋末唐初の乱世を駆け抜けてきた。
父の身代わりになったことに後悔はないが、まさか一つの王朝の滅びと興りを目にするとは思わなかった。

アサシンの願いは、隋の初代皇帝文帝の後継者争いをやり直し、中国史でも有名な暴君である煬帝の即位をなかったことにすることである。
別に隋を千年帝国にするつもりはないが、たった二代で滅びた隋をもう少しだけでも長続きさせたいのだ。

だが、この分だとマスターに振り回される未来しか見えない。

(どうか、ルーラーが徳のある人物でありますよう――――!)

自らの願いのためにも、無辜の民を殺すことにならないためにも、アサシンは祈る。
しかし、アサシン……花木蘭の願いも虚しく、今回の聖杯戦争のルーラーは問題人物であった。


【クラス】アサシン

【真名】花木蘭

【出典】史実、七世紀頃中国

【性別】女

【属性】秩序・中庸

【ステータス】筋力B 耐久C 敏捷B 魔力D 幸運B+ 宝具C


【クラス別スキル】
気配遮断:C(A)
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
宝具開放中はランクがAまで上がり、探知能力に優れたサーヴァントでも発見することは非常に難しくなる。
ただし自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。

【保有スキル】
勇猛:B
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もある。

矢よけの加護:B
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、どのような投擲武装だろうと肉眼で捉え、対処できる。
ただし超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

【宝具】
『木蘭よ、美しく咲け(オナー・トゥ・アス・オール)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:‐ 最大捕捉:1人

アサシンの代名詞足る男装であるが、このアサシンは「病床の父に変わって従軍した男装の麗人」つまりは男装した姿をベースにしているためこの宝具の発動は男装を解くことを意味する。
戦場にて女の姿に戻り敵陣を視察した、皇后に会うために女の姿にて後宮に入ったなどといった臨機応変に元の姿と男装を使い分ける逸話が宝具となったもの。
軍という社会の中で十年近く苦楽を共にした戦友ですら気づかない程の精度を誇る。
基本的によほど察しの良い者でないかぎり男装したアサシンと女のアサシンを同一人物と判断することは不可能である。
言ってしまえば元の姿に戻るだけの宝具なので魔力の消耗はほぼ皆無。
しかし、宝具開放時は幸運と宝具以外のステータスが1ランク下がってしまい、保有スキルも無効化されてしまう。
宝具を開放したり解いたりすることで戦闘向けの男と隠密向けの女をトリッキーに使い分けることも可能。


【人物背景】
隋末唐初の時代に活躍した女傑。
病床の父が徴兵されてしまうことを憂い、女の身でありながら男装して兵士となった。
彼女は十年近く従軍して数多くの武勲を立て、皇帝から尚書になるよう持ちかけられるまでになる。
しかし、彼女は出世街道に乗るのではなく、故郷へ帰り女の姿に戻ることを選んだ。 隋末唐初の人物であることは確かだが、具体的な年代には諸説ある。
本作では隋の二代目皇帝、煬帝の時代に従軍したという説を取る。


【weapon】
無銘の剣


【特徴】
十代後半の線の細い美少年……に見えるボーイッシュな少女。
鎧姿なので体の起伏が目立ちにくい。
宝具発動時は髪に簪をさし、服装も武骨な鎧から女物の着物へと変化する。
男装時の一人称は「俺」だが、女の姿の時は「私」。
どうにも貧乏くじを引きやすい傾向がある。


【サーヴァントとしての願い】
文帝の後継者争いをやり直し、煬帝の即位をなかったことにする。


【マスター】
一社 高蔵@なにかもちがってますか

【能力・技能】
なし。
彼の近くにはやたらと超能力に目覚めている人物が多いが……?

【人物背景】
冷徹で傲慢な性格の女顔の少年。
自分の女顔には思う所があるようで、そのことで茶化してくる人間にはすぐ暴力を振るう。
良くも悪くも行動力は高く、思い切った行動を躊躇なく行えるが、その行動には粗も多い。
自分の周りを構成する何かが間違っているんじゃないかと思っており、漠然とした不安感を持っている。
原作コミックでは日比野光の超能力にその間違いを「正していく」光明を見いだしたが、本作ではサーヴァントの超常の力にそれを見いだしている模様。
参戦時期は本編開始前で、本来なら光のいる中学校に転校する筈が冬木市の中学校に転校することになったという設定。


【weapon】
なし

【マスターとしての願い】
なし。
聖杯戦争に参加するような人間を殺すこと自体が目的。


【基本方針】
ルーラーが煩いことを言わない人物であったら、ポイ捨てや歩きスマホなど、社会のルールを守らない人物を殺す。

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最終更新:2016年09月23日 17:27