「あ、そうそう。私、明日から三日間ロケで学校休むから」
「そうなんだ。久しぶりだね、何日も休むの」
「けっこう大きい仕事が来たってことは、きらっちも再起のチャンスかにゃー?」
「再起も何も、落ちぶれた覚えないっての!」
◇ ◇ ◇
小神あきらは、アイドルである。
決してトップアイドルと言えるほどの人気者ではないが、さりとて吹けば飛ぶような小物でもない。
中堅どころとして、しぶとく芸能界を生き抜いている。
もっともそこからなかなか上のランクに登れないことに、焦りを抱いているのも事実だが……。
そんな彼女は今回、オカルト番組のロケで冬木市に来ていた。
「怯えすぎてもレポートにならないので、適度に度胸のあるタレントを」という制作側の要望により声がかかったのである。
あきらにとって、今回の仕事は何ら特別なものではなかった。
無難に終わらせて、友人たちの元に帰る。それができるものと信じていた。
だが、彼女を待っていたのは非日常の事件だった。
◇ ◇ ◇
部屋の中に充満するのは、血のにおい。
つい先ほどまでにこやかに雑談していたスタッフたちが、うめき声を漏らしながら地に伏している。
あきら自身も、右腕の袖を鮮血に染めていた。
その周囲には、異様な光を目に宿す数匹の犬たち。
そして犬の後ろには、巨大な魔法陣とその傍らに立つフード姿の男が存在した。
あきらがスタッフたちとこの寂れた洋館にやってきたのは、数十分前のこと。
あらかじめスタッフが下見しており、危険は何もないはずだった。
だがいざ入ってみると、そこには下見の時にはなかった魔法陣が存在した。
スタッフが困惑していると突然犬たちの襲撃を受け、現在の状況にいたったのである。
「おお、お前らが悪いんだぞ……。これから大事な儀式だってのに、カメラなんて持って入って来やがって……。
殺すしかないじゃないか……」
フードの男は、ガタガタと震えながらうわごとのように呟く。
(殺す……?)
出血でもうろうとする意識の中で、あきらは男が口にしたフレーズに反応する。
(私が……死ぬ……。そんなの……)
「認められるかこの野郎ぉぉぉぉぉ!!」
あきらは、吠えた。
「ひっ……!」
「こちとらトップアイドル目指して、何年も努力して生き残ってきたんじゃ!
変質者に殺されてジ・エンドなんて、認めるわけにはいかないっての!」
鬼気迫るあきらの言動に、男はますます取り乱す。
「な、何をしている、お前ら! 早くその子供を……」
使い魔の犬たちに指示を出し、あきらを殺させようとするフード男。
しかし、その時不思議なことが起こった。
彼のそばに描かれた魔法陣が、光を放ち始めたのだ。
「バカな!? まだ儀式は始めてないぞ! なんで……!?」
パニックを起こすフード男をよそに、光はますます強くなっていく。
そして光が弾けると、そこには一人の少年が立っていた。
切り揃えられた金髪、一糸まとわぬ上半身には少年とは思えぬ屈強な筋肉が備わっている。
野生の雰囲気を纏いながらも一種の機能美を感じさせる英霊が、そこにいた。
「なんで召喚されたのかはわからんが、ちょうどいい!
お前が俺のサーヴァントだな! 殺せ! あいつらを殺すんだ!」
混乱を引きずりつつも状況が好転したと判断したフード男は、少年に指示を出す。
だが少年は男をにらみつけるだけで、命令に従おうとはしない。
「どうした、なぜ従わない! こっちには令呪が……」
「バカか、お前は。お前に令呪はねえよ」
「へ?」
そう指摘され、男は初めて自分の体のどこにも令呪が浮かんでいないことに気づく。
「俺のマスターはあっちだ」
少年が指さした先には、あきらの姿。
その左手の甲には、いびつに三等分された星形の令呪が浮かんでいた。
「バカな! バカなバカな! あり得ない!
なんでこの場にたまたま来ただけの子供が、マスターに……」
「そんなこと、俺が知るか! 俺がわかることは、ただ一つだ。
平気で子供を殺そうとするような悪党は、放っておくわけにはいかねえ!」
次の瞬間、少年の拳がフード男のアゴに叩き込まれた。
男は天井まで吹っ飛び、頭部を強打した後なすすべもなく床へと落下した。
「キャイイイイン!」
主の無残な姿を見せられ、使い魔たちは一目散に逃げ出す。
少年はそれを追撃することもなく、黙って見送った。
「さて、とりあえずこの場はこれで一件落着か……。
大丈夫か、マスター」
「大丈夫なわけないでしょ。めっちゃ痛いわよ、この傷。
頭の中にいろいろな情報が流れ込んできて、気持ち悪いし……」
「カッカッカ、それだけの口が叩ければ大丈夫だな」
恨みがましく告げるあきらであったが、少年はものともしない。
「とりあえず聖杯戦争とやらは後でゆっくり話を聞かせてもらうとして……。
今は救急車呼びましょ。みんな早く治療すれば、命は助かるかもしれない」
「助けを呼ぶってことか。オッケーオッケー、了解だ。
命は大切にしないといけねえからな。
俺もあの悪党の命までは取ってねえ」
「ああ、あれで生きてるんだ。死ぬよりひどそうなことになってるけど……」
無残に変形したフード男の顔を見ながら、あきらは引き気味に呟く。
もっとも、同情はしていないが。
「まああいつは豚箱に入ってもらうとして、あんたは……。
あれ、そういえばあんたの名前って聞いてたっけ?」
「ああ、そういえばまだ名乗ってなかったな。
ライダーのサーヴァント、足柄山の金太郎とは俺のことよ!
お前みたいなちびっ子を守るのが、俺の使命ってな!」
「ちびっ子って……。私は14歳だ!」
「え……マジで? 今の子供って、昔より発育いいはずじゃ……」
「よし、そのケンカ買った!」
その後興奮のあまり出血が増えたあきらが貧血でグロッキーになるという事態が発生したものの、なんとか救急車が間に合い事なきを得たのであった。
◇ ◇ ◇
病院で適切な治療を受けたあきらは、そのまま入院することになった。
スタッフも重傷ではあるものの、全員一命をとりとめた。
事件はフード男が訓練した犬を使ってスタッフを襲った殺人未遂事件とされ、男は意識不明のまま警察病院に送られた。
なお男も重傷を負っていたことに関しては、あきらも気を失っていたため何があったかわからないということにしておいた。
その日の夜、あきらは病院の個室で金太郎と今後について話し合っていた。
すでに消灯後であり、その場には二人以外の人間はいない。
「私は、聖杯なんて使わない」
真摯な表情で、あきらは言った。その言葉に、金太郎は少しだけ眉を上げる。
「いいのか? どんな実現困難な願いでも叶えられるチャンスなんだぜ?」
「何かの歌の歌詞であったわ。自分の力で叶えられることを、神様にお願いしちゃダメだって。
私の夢は、私の力で叶えられるって信じてる。それがどんなに困難だったとしても、可能性があるなら奇跡になんか頼らない。
なかなか頂点に立てない半端者でも、プロの端くれだもん。私にも意地があるわ」
「いいねえ、その心意気。実にゴールデンだぜ」
「何それ。どういうこと?」
「俺にもよくわからん」
「わからんのかい!」
思わず大声を出してしまってから、あきらははっとする。
いかに夜の個室といっても、周囲には人がいるのだ。
誰かに声を聞かれて、不審に思われないとも限らない。
「あー……それで、これからどうする?
今すぐ聖杯戦争から降りるか?
俺はおまえを守ることが目的だったから、別にそれでもいいんだが」
「できればそうしたいんだけどねー……。聖杯戦争ってのは、他にもあんないかれたやつが参加してるかもしれないんでしょ?
はい降りましたで、無事に帰れる保証もないと思うのよ」
「うーん、たしかにそれはなあ。可能性としてはそれほど高くねえが、一般人を巻き込むようなやつが参加してることも有り得るしな」
「入院ともなるとそう簡単には動けないだろうし、当面の戦力としてあんたは残しておくわ。
安全に帰れる算段がついたら、正式に聖杯戦争から降りる。それでいい?」
「ああ、俺はかまわねえ」
あきらの言葉に、金太郎は微笑を浮かべて頷く。
「しかしなんだな、マスター。あんた一般人の割には、落ち着いてるな。
普通こんなことになったら、もっと我を忘れるかと思うんだが」
「まあ、修羅場には慣れてるからね。命の危機がなくたって、芸能界は戦場だもん」
そう言い放つと、あきらは悪い笑みを浮かべるのであった。
【クラス】ライダー
【真名】金太郎
【出典】史実および童話
【性別】男
【属性】秩序・善
【パラメーター】筋力:B+ 耐久:C 敏捷:B+ 魔力:B 幸運:A 宝具:B
【クラススキル】
騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。
【保有スキル】
動物会話:C
言葉を持たない動物との意思疎通が可能。動物側の頭が良くなる訳ではないので、あまり複雑なニュアンスは伝わらない。
それでも金太郎の精神構造が動物に近いせいか、不思議と意気投合してしまう。
天性の肉体:B
生まれながらに生物として完全な肉体を持つ。このスキルの所有者は、一時的に筋力のパラメーターをランクアップさせることが出来る。
さらに、鍛えなくても筋骨隆々の体躯を保つ上、どれだけカロリーを摂取しても体型が変わらない。
神性:C
神霊適性を持つかどうか。ランクが高いほど、より物質的な神霊との混血とされる。
金太郎の神性は雷神系のルーツ、伝説を保有する英霊からの攻撃に対して稀に耐性として発動することがある。
【宝具】
『黄金喰い・零式(ゴールデンイーター・ゼロ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
金太郎の怪力なくしては扱えない、雷神の力を宿す巨大マサカリ。
成人した金時の宝具である「黄金喰い」とほぼ同じ機能を持つが、体格に合わせて小型になっている。
また、「黄金衝撃」は使えない。
『夜狼死九・黄金疾走(ゴールデンドライブ・グッドナイト)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:不明 最大捕捉:不明
「超加速突撃形態」へと変形したゴールデンベアー号による突撃。
ベアー号のタイヤは雷神の太鼓が変化したものであり、回転するごとに威力が上昇する。
【weapon】
「ゴールデンベアー号」
金太郎が駆るモンスターマシン。ひと吹きで百里を駆け抜け、熊百頭が行く手を阻もうとも問題なく蹴散らせるスペックを有している。
【人物背景】
坂田金時の幼少期の姿。
いわば「金時リリィ」である。
まだ発展途上であるため身体能力は大人の状態に及ばないが、童話の主人公としての信仰が上乗せされることにより魔力と幸運は上昇している。
また金太郎が子供の日の象徴とされることから、「子供の守護者」という要素が顕現。
幼い子供を守ることを第一に考えるようになり、性格にも影響が出ている。
「ゴールデン」はそんなに多用しない。
【サーヴァントとしての願い】
マスターを守る。
【マスター】小神あきら
【出典】らき☆すた(漫画版)
【性別】女
【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの安全な離脱
【weapon】
特になし
【能力・技能】
芸能界で生き残れるだけの演技力・歌唱力
【人物背景】
14歳のジュニアアイドル。
トップアイドルには及ばないものの、千葉ロッテマリーンズの応援歌を担当するなど芸能界でなかなかの活躍を見せている。
その素顔は口は悪いものの、ひたむきで繊細な女の子である。
要するに、アニメ版とは別人。
【方針】
自衛優先
最終更新:2016年09月23日 22:14