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稗田阿求&アサシン

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「…………。……スター。……マスター」


慣れ親しんでいたはずの、死後の世界の空気で支配された、妙にリアルな夢だった。
だが今一息つくと、鼻腔に冬至の清らかな空気と、爽やかな香りが流れ込んでくる。
目を開くと、柔らかな朝日が頬を温めているのがわかった。
私の傍らで手を握り、心配気な顔で見下ろす少女の顔がある。


「お目覚めですか、マスター。随分とうなされていたようですが……」

「あんたの夢を見たのよ、恐らく。暗殺者[アサシン]。
 ……一方的に踏んづけられ続ける夢をね」


ああやっぱりと、安心したような、しかし悲しげな表情で、アサシンは声を漏らした。
『暗殺者』におよそ似つかわしくない、心優しい少女だ。
この虫も殺せないように見える少女が、これから聖杯戦争という戦いに赴く私のサーヴァントなのだ。

若草色の髪をポニーテールに結い、
やや垂れ目気味の、大きな青い瞳が印象的なあどけない顔立ちは、未成年の私よりなお幼く見える。
白い異国風のドレスをまとった小さな体は、
見た目から想像されるその年頃の少女に特有の、ふっくらした丸みと柔らかさを帯びている。
妖精のような少女。否――彼女はまさしく妖精なのだ。
その証拠に、背中には白い花弁のような、3対の羽根がある。

きっかけは恐らく、仕事で使う資料のついでに貸本屋で借りた本なのだろう。
その本に記されていたのが、そう――『聖杯戦争』のことだったのだ。
息抜きに読み始めたその本に夢中になり、時間を忘れて読みふけって、
いつしか本を枕に眠りに落ち――気がつけばこの冬木という街に迷い込み、聖杯戦争に巻き込まれていたのだ。


「……それにしても、まさか『妖精』をサーヴァントにあてがわれるなんて」

「何かご不満が……」

「あんた弱いのよ。超弱い」

「ひどい」

彼女は怪物退治の逸話を残す英雄でもなければ、当代で無双の武勇を誇った武人でもない。
彼女のステータスでは、サーヴァントはおろか、戦う力を有するマスターさえ相手にできるかどうか怪しい。
唯一とも言える長所はほとんど不死身といえるほどのその『しぶとさ』だが、
それが他の主従にバレたなら、マスターである私が狙われるのは明白。
聖杯戦争では、サーヴァントでなくマスターを殺害することが許されているのだから。
私たちの勝ち目は、限りなく、薄い。
そして、敗北するのは、恐らく私が死ぬときだ。

私には里に戻って為さねばならない使命がある。
こんな勝機の薄く、命の危険ばかりついて回る戦いなど放り出して、
住んでいた里に戻る手立てを探すべきなのだろう。
だが、その方法は未だ見つかっていない。冬木というこの街を出ることさえできないのだ。
恐らくだが、参加者を逃がさないために、手を回している者がいる。

このまま帰る方法が見つからなければ――すべてのサーヴァントを倒し、聖杯戦争に勝利するしかない。
そしてその願いを聖杯に託して里に帰るか、あるいは、
自力で里に帰る手段を見つけることができたならば、そのときは――。

と、そこで、アサシンが口を開いた。


「……そういえば、マスターは、もしこの戦いに勝ったら、聖杯に何を願うんですか」

「寿命を延ばしたい。それが私の願いよ」

「寿命、ですか」

「私は、もう十年も生きられない体なのよ。
 といっても、寿命で死ぬのはこの体だけなのだけど。この肉体が死んだ後は、
彼岸……あんたたちの言う冥府で長い長いお勤めが待ってる。
 お務めを済ませた後は、またこちら側の世界に赤ん坊として生まれてきて、
 こちら側での使命を果たすために短い人生を送るのよ」

「……では、マスターの願いは、永遠の命、ですか」

「私はそこまで大それたことは望んでいないわ。千年も、万年も生きたい訳じゃない。
 ただ、人並みに生きるだけの寿命が欲しい。
 ただ……私の友達と同じ時間を生きたいのよ」


私は盆の上の湯呑みを取り、口元へと近づけた。
立ち上ってくる香りは、里で私がいつも飲んでいたお茶のものではない。
――だが、林檎に似た、甘い、優しい香りだ。


「いつもありがとう。……昨日の物とは違う葉を使っているのね」

「え、あっ、お気に召しませんでしたか?」

「いいえ。……とても、いい香りよ」


アサシンはこうして毎日私にハーブティーを淹れてくれる。
魔力回復作用のあるハーブティーは、彼女のサーヴァントとしてのスキルによるもの。
いや、このハーブティーの材料のミントそのものこそが――。

887 :稗田阿求&アサシン ◆d8nktTSMw2:2016/09/23(金) 07:29:59 ID:F8if9VZc0

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冥府の大地と一つになるまで踏み砕かれた『わたし』は、それでも『あの方』を想い続けた。
やがて私は大地から芽吹いた。
そして『あの方』に気に入ってもらえるよう、芳しい香りを放った。
芽吹いた私の想いは『あの方』の住まう神殿の庭を彩り、咲き誇り続けた。
私の想いを乗せた種はいつしか地上にもたらされ、人間たちの住む世界各地に広まった。

だけど、まだ足りない。
『あの方』が再び私に振り向かなければ、冥府と地上の大地すべてを私の想いで埋め尽くしても、まだ足りないのだ。
いつか、私の想いが『あの方』に届くまで……私は絶対に諦めない。
そして、私を踏みにじったあの女を、私は絶対に許さない。
奥手ながらも誠実だった『あの方』を黄金の矢で射て、
あの女をかどわかすよう仕向けたあいつも、絶対に許さない。


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


「それで、『種蒔き』の方は順調かしら?」

「今の所はうまくいっています。
 私自身は極力姿を現さずに、野良猫や通行人に種をくっつけて広げるようにしています。
 他のサーヴァントやマスターに気取られた様子は、まだありません」

「直接戦って勝ち目がない以上、少しでも情報を多く集めて有利な状況を作るしかないわ」

「ごめんなさい。こんな、弱いサーヴァントで」

「いいのよ。情報戦なら、私に分がある。
 仕事柄、神話や歴史には詳しいのよ。とくにこの国のものについては。
 あんたの能力なら、情報収集も得意でしょう?」


アサシンのハーブティーを飲み干し、私は寝床から身を起こす。
不思議と体が温まり、元気が湧いてきた気がした。
刈られても踏まれてもすぐさま立ちあがる、ミントの生命力を分けてもらったかのようだ。
きっと私の長く生きたいという願いに答えて、彼女は私の元にやってきてくれたのだ。


「ま、精々抗ってみせるわよ。持てる知識を総動員してね。
 改めてよろしくね、アサシン……いえ、『メンテー』」

「はい、よろしくお願いします、マスター」


願わくば、私も彼女のようにたくましく永らえることができますように。

【クラス】アサシン
【真名】メンテー
【出典】ギリシャ神話
【性別】女性

【属性】混沌・中庸

【身長・体重】145cm 43kg

【ステータス】
筋力E 耐久EX 敏捷C 魔力C 幸運E 宝具C

【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を抑える。
この値は実体化した際のもの。
植物としての姿をとっている時は、その正体を知らない限り雑草としか認識されない。
また、アサシンが攻撃体勢に移ったとき、そのランクは大きく低下する。


【保有スキル】
遍在:A
ミントの化身たるアサシンの本体は、自らが冬木市内に蒔いた種から育ったミントの一株一株である。
自身の蒔いたミントの生えている場所なら、その一株一株から個別に実体化ができる。
蒔いたミントの生長は通常よりはるかに早く、まる1日程度で実体化可能な株に育つ。
同時に複数体の実体化も可能だが、魔力消費は大きくなる。
また、それらの肉体の意識・感覚は常に一つの人格で共有・同期されている。

魔力回復(草):B(A)
アサシンの蒔いたミントの一株一株が生成する魔力を回収し、現界に必要な魔力に充てることができる。
このスキルにより、マスターからアサシンへの魔力供給は非常に少なく済んでいる。
なお、現在の冬木市は本来ミントが生長できない冬季であるため、スキルのランクはBに抑えられている。
気温のさらなる低下・日照の不足などにより生育環境が悪化すれば、このスキルのランクはさらに低下する可能性がある。
冬季以外の季節であればこのスキルはAランクとなり、マスターからの魔力供給は全く不要となる。

冥王への恋慕:C
踏みにじられ、一介の草花に貶められても抱き続ける恋心。
洗脳・精神干渉への抵抗判定にプラス補正が掛かる。

道具作成:E
アサシンが植えたミントから薬を作成可能。
魔力が上乗せされる分、薬効は通常より高い。
また、ミントを食用としたり、煎じて飲むことでマスターは通常の食物より効率よく魔力を回復できる。


【宝具】
『冥府宛ての花束(ブーケ・トゥ・ハーデース)』
ランク:C 種別:対神宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人
魔力の篭ったミントの種子を、対象にアサシンの口から直接植え付ける。
植え付けられた種子は体内で勢い良対象の体内で発芽・生長して根と地下茎を張り、魔力を強奪する。
その生長速度は、通常の生物であれば数分で全身に蔓延して『花束』に変えてしまうほど。
体外に伸びたミントを引きちぎっても、体内にわずかでも根や地下茎が残っていればすぐにまた生長する。
解除するにはアサシンの意志で解除するか、アサシンを殺害するしかない。
サーヴァントに植えつけた場合の生長速度は大幅に落ちるが、
指先などの末端に植えつけた場合であれば12時間程度、
頭や胸に植え付ければ2時間程度で霊核まで根が到達、破壊して『花束』へと変えることだろう。


【weapon】
長く延びたミントの地下茎を撚り合わせ、鞭のようにして振るう。
また、真名開放しなくてもミントの種を撒き、アサシンの実体化ポイントであるミントの株を育てることができる。


【人物背景】
アサシンことメンテーはギリシャ神話に登場する妖精(ニュンペー)の一種。
現在広く用いられているハーブの一種『ミント』の語源である。
冥府に流れる川の一つ、コキュートス川のほとりに生まれた彼女は冥府の王・ハーデースに見初められ、その寵愛を受けていた。
だがある日ハーデースはエロースの金の矢を受け、その時偶然目の前にいたペルセポネーに恋をしてしまった。
ハーデースはペルセポネーを冥界に連れ去り、妻として迎えた。
一方メンテーはペルセポネーの嫉妬を買い、踏み潰されて草へと変えられてしまったのだった。
草へと姿を変えられた彼女は、芳しい香りを発し、今もハーデースに自分の存在を知らせ続けている。

メンテーの生まれは地上、ハーデースはエロースの矢に射られていなかった、
ハーデースが最初に恋したのはペルセポネー、ペルセポネーがメンテーを草に変えたのは善意から、
など、様々な異説がありますが、本稿では上記の通りとします。


【外見上の特徴】
若草色の髪をポニーテールにしている。
やや垂れ目気味の、大きな青い瞳。物静かな印象を受ける少女。
外見年齢13~14歳程度。ぷにぷにしてる。頬とか、二の腕とか、脚とか。
服装は、キトンと呼ばれるノースリーブの古代ギリシャ風ドレス。
色は白で、動きやすく膝丈になっている。
履物として、足首までの丈のグラディエーターサンダルを履いている。
頭にミントで作られた花輪の冠を乗せている。
背中に6枚の花弁状の羽根が生えているが、飛べない。出し入れは自在。


【サーヴァントとしての願い】
ハーデースと結ばれて、ペルセポネーとエロースに復讐を。


【マスター】
稗田 阿求(ひえだの あきゅう)@東方project

【能力・技能】
一度見たものを忘れない程度の能力。
いわゆる完全記憶能力。
日本の妖怪と、神話に関する知識。

【人物背景】
神や妖怪といった種族の消滅を防ぐため、意図的に人理の力が弱められた土地、幻想郷。
彼女は幻想郷で、そのあらゆることを記録する冊子である『幻想郷縁起』を編纂する、
求聞持(ぐもんじ)という役目を負っている。
稗田家で『御阿礼の子』として転生を繰り返す者が求聞持としての役を負っており、阿求で9代目である。
代替わりには百年~百数十年の期間を要し、その間御阿礼の子の魂は地獄で働くことになるため、
前代との人間との関係はリセットされてしまう。
また、転生の影響かは不明だが、御阿礼の子は体が弱く、30歳まで生きられないという。
病弱と言われている割に『東方鈴奈庵』などの作品では、行動的な所も見せているが。

【マスターとしての願い】
聖杯戦争からの脱出。それが不可能なら、聖杯を手にして、人並みの寿命で生きられるようになる。

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最終更新:2016年09月24日 23:42