☆
狂気と正気は紙一重である
☆
そこには瘦せぎすの男がいた。
その男は黒い法衣に身を包み身長はよりもやや高く、深緑の前髪が目にかかる程度の長さに整えられている。頬はこけており、骨に最低限の肉と皮を張りつけて人型の体裁を取っている、と表現するのが適当に思えるほど、生気が感じられない肉体の持ち主だ。
ただし、その狂気的にぎらぎらと輝く双眸がなければの話ではあるが。
男は身を傾けて、己の召喚したバーサーカーをジッと観察している。曲げた腰の上でさらに首を九十度傾け、ぎょろついた目で無遠慮に眺める姿は常軌を逸した奇体さを露わにしており、事実その男の言動は常人と一線を画していた。
「なぁるぅほぉどぉ……こぉれはこれは、興味深いデスね」
ひとしきり、舐めるようにバーサーカーを上から下まで眺めた男は、納得したように頷いた。
男は考え込むように右手で自分の左手を握りしめーー手首に生じている傷口に親指をねじ込み、血が滴るそれを意に介さず、自らの血肉を穿り返す。
「あぁなぁた…………ワタシのサーヴァント、デスよね?」
姿勢を曲げたまま振り返り、男は奇妙な体勢のままバーサーカーを振り仰ぐ。問いを発したその口に、傷口を抉った血に染まる親指を差し込み、鉄の味をその舌でねぶりながら恍惚に、澱んだ光を放つ瞳を震わせて。
「如何にもーー貴殿は何者なるや?」
バーサーカーがそう問いかけるのを聞いて、男は音を立てて唇から指を抜くと、
「あぁ、そうデスか。これはこれは、失礼をしておりました。ワタシとしたことが、まだご挨拶をしていないではないデスか」
問いに応じるように、男は色素の薄い唇をそっと横に裂き、禍々しく嗤うと、ゆっくり丁寧に腰を折り曲げ、
「ワタシは魔女教、大罪司教――」
腰を折った姿勢のまま、器用に首をもたげて真っ直ぐバーサーカーを見つめ、
「『怠惰』担当、ペテルギウス・ロマネコンティ……デス!」
自己紹介した。
「死した身でありつつも現世に舞い戻り悲願を叶えんとするその姿勢!! 良いですねぇ良いですねぇ!! サーヴァントとはなんと勤勉な存在なのでしょう!!」
ペテルギウスは勤勉を尊ぶ。
聖杯からの知識により、サーヴァントが願いをもって座より召喚に応じることを知った彼は、心からバーサーカーを称えた。
「その勤勉さは……是非とも見習わなくてはいけないのデス!!」
まるで舞台役者のように常軌を逸した動作に、しかし道化のようなローブを被った大男は動じない。
「これは幸先が良い……マスターは理解のあるお方のようだ」
ギョロり、と冒涜的な形相を蠢かせ、バーサーカーは嗤う。ここに居るのは英雄ジル・ド・レェではなく「青髭」としての面が色濃く出た故の、怪物であった。
「さらなる悪徳を、冒涜を、背徳を 我が心にありし乙女に捧げるのです。それこそが、我が身の献身にして目的であるのです」
邪悪そのものであるバーサーカーの言動に、しかしペテルギウスが感じ取ったのは極限までの"愛"だった。
「おぉおぉ!!まさしくそれは愛!!ひとりの少女に何もかもを捧げ尽くすその姿勢、貴方はまったくもって勤勉な存在なのデス!!」
涙腺を崩壊させ、感極まったように身をくねらせる。バーサーカーは「そうです」と肯定し、常人なら気が触れてしまいかねないような眼がマスターを写し出す。
「勤勉、そう一途に。我々は証明せねばならない。神は冒涜に無関心だと。そしてより汚し犯すのです。無垢なる魂をこの手でね」
「あ ぁ あ ぁ あ 脳 が 震 え る ! ! 」
どこまでも通じあっていない両者だったが、狂信の域にまで達した信仰と利害の一致により奇跡的に対話が成立していた。
ペテルギウスの目的はひとつ。勤勉と愛を嫉妬の魔女サテラの復活。
バーサーカーの目的はひとつ。救った筈の祖国に、さらには神にさえ見捨てられた聖処女ジャンヌ・ダルクの復活。
手段も精神も何もかも狂っているとしか言い様のない両者だったが、その根底にあるのは間違いなくーー愛だった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
ジル・ド・レェ
【パラメーター】
筋力B+ 耐久C+ 敏捷C+ 魔力C 幸運E- 宝具A
【属性】
混沌・狂
【クラススキル】
狂化:EX
パラメーターをランクアップさせるが、理性の大半を奪われる。
狂化を受けてもジル・ド・レェは会話を行うことができるが、聖処女を見捨てた祖国と神への憎悪に縛られた彼の思考は"神を冒涜する"に固定されているため、並のマスターでは意志疎通どころか制御すら非常に困難。
ーーあるいは、マスターがよほどの狂人でもない限りは。
【保有スキル】
プレラーティの激励:EX
魔術による筋力強化。バーサーカーとして召喚されたジルの狂気の体現として最大限にランクが引き上げられている。
このランクだと、筋力のみならず幸運を除いたすべてのパラメーターが常に2ランクアップする。
その代償として生前、ジャンヌの死後の記憶がより明瞭になる。
……狂化しているジルにとっては、自身をより悪逆に駆り立てるメリットにしかならない。
深淵の邪視:B
狂気の異相。精神態勢が低い相手を中確率で恐怖状態に陥らせる。このランクだと追加判定で相手のパラメーターがランクダウンする。
殺人鬼としての面が強調されたため、キャスター時よりもランクアップしている。
拷問技術:C
拷問を目的とした攻撃に対して、痛覚増加補正がかかる。
【宝具】
『絶望讃歌の青髭魔城(フォリ・ル・シャトー・ティフォージュ)』
ランク:A 種別:対軍宝具 レンジ:90 最大捕捉:100人
殺人鬼『青髭』ーージル・ド・レェの心象風景であり、固有結界。
結界内はジル・ド・レェが生前残虐非道の限りを尽くしたティフォージュ城であり、そこに対象者を引きずり込む。
城には多種多様な拷問器具が常備され、視界を覆うほどの霧が立ち込めている。
この霧はジル・ド・レェの犠牲となった子供達の魂の成れの果てである低級の怨霊たちであり、結界内で犠牲者が生まれるほどに強化される。
怨霊自体は低級なので、サーヴァントへの憑依を試みようと容易く拒絶できる。あえて取り込むことで栄養分とすることも可能。
ただし、抵抗力の弱い一般人や三流の魔術師にとっては呪いのようなもので、憑依されればその怨念に耐えられずに発狂してしまう。
さらにその悪逆行為が数年間も露呈しなかった逸話から、宝具展開中は外界との連絡・干渉手段が一切遮断される。魔力パスも同様で、マスターだけが引きずり込まれた場合、念話はおろか魔力供給すら危うくなる。
さらに城主であるバーサーカーにはランクAに相当する気配遮断が付加され、城内においてのみ、一切他者に関知されることなく行動が可能。
【weapon】
無銘・剣
無銘・拷問器具
『絶望讃歌の青髭魔城』発動時のみ
【人物背景】
英仏百年戦争においてジャンヌ・ダルクと共に活躍したフランス軍の元帥、ジル・ド・レェ。
伝説的な偉業と晩年の凶行から、“聖なる怪物(モンストル・サクレ)”と呼ばれ恐れられている。
バーサーカーversionの旦那。
【サーヴァントとしての願い】
さらなる悪逆を、冒涜をーー
ーーそしてその先にこそ、聖処女の復活が成しえる
【外見】
キャスターの旦那が帯剣してる感じ。全体的により禍々しい感じになってる。
【マスター】
ペテルギウス・ロマネコンティ@Re.ゼロから始まる異世界生活
【ロール】
カルト教団『魔女教』の司祭
【能力・技能】
『怠惰の権能 見えざる手』
大罪司教がそれぞれに宿す因子の一つ『怠惰』を取り込んでいる。見えないところに手を届かせる不可視の腕。
『憑依』
精霊術の素養のないものの肉体を乗っ取る。
【weapon】
『見えざる手』
【人物背景】
魔女教大罪司教『怠惰』担当。誕生日なんて関係ない
年齢402歳。身長180センチ。体重50キロ台 (*1)深緑の髪をおかっぱみたいな長さで切り揃えて、虫のように無感情な目をした痩せぎすの人物。首を傾け、腰を曲げ、奇態な体勢で話すことを好み、また自らの肉体を自傷することを好んで行う、見間違える心配もないぐらい完全に変質者。
名称はオリオン座α星ベテルギウス(Betelgeuse)に由来。
四百年前、魔女サテラが活動していた時代から生き長らえてきた邪精霊であり、宿主の肉体を乗り換えることで生を繋いできた。また同じ400年前ごろにエキドナ及びベアトリスと面識があった模様で、askによると元は土の微精霊。
彼の生きる理念は『勤勉さ』と『愛』の二つだけであり、それを証明することだけが彼の生き甲斐であり、生きる理由。最初期の大罪司教であり、サテラへの偏執的な愛情も大罪司教の中でもっとも強い。福音書の記述に従い、他の魔女教徒の誰よりも先駆けて活動することから、魔女教の中でも突出してその存在の知名度と被害の大きさを高めていた厄介者。
肉体のない邪精霊であることから、乗り移った肉体が感じるあらゆる五感に快感を得る。特に痛みに関しては生の実感を強く味わえることから、過剰な自傷行為に走る傾向があった。
クズばかりの大罪司教の中で最初の敵であり、その脅威の一端を知らしめられたと思える好人物。その行いの数々の根幹、彼と魔女との関わりは実は物語の深いところに絡みついており、『ペ』テルギウスである理由や、四百年前にいったいなにがあったのかなど作品全体を見てもけっこうな重要人物。
【聖杯にかける願い】
嫉妬の魔女サテラの復活
最終更新:2016年09月24日 23:47