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ブラックウィドウ&バーサーカー

愛した人はどこか遠くへ行ってしまった。
信頼できる仲間はある事件が切欠でバラバラになってしまった。
私の居場所は私が正しいと思った行動でいられなくなってしまった。

私は一人に戻ってしまった。
孤独な闇の中を、私は一人さ迷っている。

「冬木市……聖杯戦争……」

見たこともない日本の街に、私は気付けばいた。
脳裏に流れ込んでくるのは聖杯戦争と呼ばれるオカルトめいた催し物のルール、無限の願望器、歴史上の偉人をサーヴァントという存在として使役し戦うバトルロワイアル。
随分とオカルトめいた話。でもこれが本当の話であればかつての大戦の時にナチスが欲しがったというのも頷ける。
巻き込まれた。というのが正しい状況だろう。
これからどうするか、考えあぐねている私の耳がガサリという物音を拾い、人の気配を感じた。
即座に音のした方向に銃口を向ける。
狭く、薄暗い路地から笑い声が響いてきたのはそのすぐ後だった。

「怖や怖や、随分と殺気だっておるのう、我が"ますたぁ"とやらは」

暗がりから人影が姿を表す。
すらりと伸びた両の手足、ノースリーブの上衣にショートパンツのズボンめいたものを履いた姿の女性だった。
目元を隠すように伸ばした前髪で顔が隠れていて判別は難しいが、恐らくは東洋人。
そしてその女が視界に入ると同時に、脳裏に頭の中に浮かんでくるクラスやパラメーター。
それは間違いなくサーヴァントであるという事の証。
私をマスターと呼んだという事はこの女が私に宛がわれたサーヴァント、という事なのだろう。

「"ばぁさぁかぁ"として顕現した者だ、見るに異国の人間か。大和の民に呼ばれなんだのは僥幸よな」

くつくつと妖艶にバーサーカーと自らを名乗ったサーヴァントが笑う。
バーサーカー、理性を失った狂戦士。
理性を失ったというには正常な言語機能の持ち主であることは見てとれる目の前のサーヴァントに対し、微かな疑問符が浮かぶ。
もっとも喋れる事と会話が通じる事はイコールじゃない。私は、彼女とコンタクトを取る事にした。

「……ブラックウィドウ、私を呼ぶのならそう呼んで頂戴、バーサーカー」
「"ぶらっくうぃどう"、異邦の言語で蜘蛛の一種か。くふふ、なるほど汝に吾が呼ばれたのも合点がいくと言う物か」

意味深長な笑みをバーサーカーが浮かべ、私の名前から一人で勝手に納得をしている。すくなくともお互いの意思疏通は出来ると判断していいのかしら。
私の名前に反応を示したという事は蜘蛛に縁のある英雄、という事なのだろう。

「吾が真名は都知久母(つちぐも)、名に引きずられし奇縁なれど縁は縁。よろしく頼むぞ"ますたぁ"」

そう言ってバーサーカーのサーヴァント、ツチグモがにんまりと笑みを深める。
ツチグモ……、ジグモの様なものかしら? 生憎と日本のオカルト知識ないからどこかで調べる必要があるかもしれない。
何にしろ蜘蛛が呼び合った縁というのは確からしい。

「貴方は聖杯に何を望むの?」
「吾の国は大和の民、汝に分かりやすく言えば日本人か。そやつらに奪われてのう」
「復讐でも望むつもり?」

不穏な感情のこもった発言に構えた銃のグリップを握る力が強くなる。
ワンダ、ピエトロ、ティチャラ。大切なものを奪われて復讐に走った人間達の顔が浮かんでは消えていく。
もしも、目の前の彼女が日本人そのものへの復讐を考えていたら。
他国の問題とはいえ、目の前のサーヴァントが虐殺を考えているのであったらそれを見過ごすのは寝覚めが悪い。

「真逆(まさか)。強き者が弱き者を淘汰する。あれは自然の摂理だっただけに過ぎぬ。怨みこそあれ、報復などする気は更々ないわ。
しかしな、その後がいただけぬ。事も有ろうに奴(きゃつ)めらは我らを人ではなく化け物として扱った。退治されて当然の人ではない何かへと我らを変えさせた。それが許せぬ」

バーサーカーは復讐を否定する。不安は杞憂に終わった。
そしてバーサーカーが不愉快そうに口を歪めながら話している最中に、彼女の背が不自然に盛り上がり服の隙間から一本の尖った何かが姿を表す。
そこにあったのは、巨大な蜘蛛の足だった。
鋭く尖ったその足先を打ち込まれでもしたら、人間であればひとたまりもない事は伺い知れる。

「土蜘蛛、それがこの化生の名よ。吾はな"ますたぁ"この忌まわしき力を使ってでもこの化け物と我らの縁を断ちたいのだ」

蜘蛛の足がバーサーカーの意思に応じる様に2・3度動くと、そのまま彼女の体の中に収まっていく。
縁を断ちたい、つまりもう化け物にはなりたくない。それが彼女の望みということなのだろう。

「嫌ってる割には、その力を使うようだけど?」
「そうでもしなければ名だたる英雄には勝てんのでな。しかし願いが叶えられば我らは化け物に姿を変える事もなくなる。この化け物に引きずられてこの様な戯けた催しに呼び出される事もない。
我らはな、もう静かに眠っていたいのだ」

そういうバーサーカーの顔にはどこか疲れたような力のない笑顔が浮かんでいた。
自分に身に覚えない化け物としての側面と同居させられている苦痛はどれほどのものか。
今はどこで何をしているかも分からないブルースならば、もしかすると彼女の苦しみに共感を抱いていたかもしれない。

「主よ、汝は聖杯に何を願う?」
「私は……」

ブルース。
クリント。
スティーブ。
アベンジャーズ。
失った私の居た場所。
もしも、ソコヴィアでの事件がなければ私達は今もチームをやれていただろうか。
もしも、やり直すことができたのなら。

「居場所を取り戻したいとは思う。でも、思うだけよ。奇跡には頼らない」

それに願えば、全ては丸く収まるだろう。
だけれどその一方で、それに手を出せば取り返しのつかない事になるという確信がどこかにあった。
多分それをしてしまったら私は彼らと会えなくなる。
ここまでの彼らの意思を、決意を、そのあり方すべてを否定した事実に、恐らく私が耐えられなくなる。

「ふむ、難儀なものよな。しかし、羨ましくもある。奇跡に頼らず望みを叶えようなどと、吾には二度とできぬ故な」

眩しいものを見るかのように、バーサーカーが私を見ながら目を細める。
これで、私は聖杯戦争に参加する理由はなくなった。
しかし、だからといってそれで私が聖杯戦争から解放される事はイコールじゃない。

「知識ではサーヴァントを失ったマスターは聖杯戦争に参加する資格を失い、必要ならば戦争が終わるまで監督者に保護を要請できるとあったわ」
「然り。なればどうする? 令呪で我が命を断ち、早々に脱落するか?」
「見たこともない胡散臭いホストに命を預けるくらいなら、まだ貴方に命を預けた方がマシね」

何が目的でこんなものを始めたかのすら分からない相手を容易く信頼して身柄を預ける事ができるほど生易しい世界で私は暮らしていない。
最低でもこの戦争の首謀者の素性が分かるまではバーサーカーと縁を切る、という手を取る気は私にはない。
そしてもう一つ、気になる事もあった。

「この聖杯に、物騒な望みを託す人間やサーヴァントはいると思う?」
「さてな、暗く冷える泥濘の様な恨みを持った者も、烈火の如き灼熱の怒りを宿した者もおるだろう。加えて今の吾の様な反英雄に属するサーヴァントすら呼び出す聖杯よ。推して知るべし、といったところだのう」

バーサーカーの返答に、私はやっぱり、と納得する。
英雄だって人間。どれだけ高潔な人格であろうとも怒りもすれば恨みもするし、間違いは犯すし衝突だってする。それは私が、私たちが身をもって経験した事でもある。
それどころか反英雄、つまりヒドラやロキの様なサーヴァントが参加している可能性もあるとわかった以上、私の中に迷いはなくなった。

「私の友人達なら、きっとこう言うわ『聖杯をそいつらに渡す訳にはいかないし、聖杯はここで壊すべきだ』ってね」

トニーはもしかしたら『それを管理して有効活用すべきだ』なんて言い出すかもしれないけれど、これは危険すぎる代物だと私は思う。
ウルトロンの時の様な悲劇が待っているかもしれない。
それを考えると、聖杯はここで壊すべきだ。それが私の出した結論。

「報酬は聖杯で願いを叶える権利。最終的な目標はそんな危険物の破壊。私と貴方はこれで利害が一致する。どう? これで手を打たない?」

バーサーカーがいなければ私は聖杯に辿り着けない以上、報酬は必要だ。
バーサーカーと共に勝ち残ったとして、彼女が願いを叶えた上で私がそれを破壊するという方針は取れる筈。
私の提案を聞いたバーサーカーは無表情だ。目元が髪で隠されている事もあり感情は読めない。
不意に真一文字に結ばれていた彼女の口が半月へと姿を変える。
路地に笑い声が響く。
バーサーカーが口元を隠しながら大きな笑い声をあげていた。

「……主は頭の良い女かと思っていたが、なるほど吾の見込みが違っていたか」
「友人に恵まれたのよ」
「大事にする事だ。よい、許す。大和が朝廷に弓引きしまつろわぬ民を束ねる頭領が一人、都知久母が今この時より真に主従を誓おうぞ、主殿。この身を存分に使うがいいさ」

バーサーカーが私の前に跪く。
"ますたぁ"から"主殿"に変わった呼称と合わせて、私をマスターであると認めてくれた、と考えていいのだろう。
"これで良かったの?"と私の中から問いかけが聞こえる。
"これで良かったのよ"と私は自分に言い聞かせる。
未練はあるかもしれない、でも後悔はしない。
スティーブの様に、トニーの様に、私は私の正しいと思った事を為す。

さあ、任務を始めましょう。

【クラス】
バーサーカー

【真名】
都知久母(つちぐも)

【出典】
古事記、日本書紀、土蜘蛛草紙

【性別】

【属性】
混沌・中庸

【ステータス】
筋力C(A) 耐久C(A) 敏捷B(B) 魔力C(C) 幸運D(D) 宝具B

【クラススキル】
狂化:EX(A)
通常時は狂化の効果を受けないが、部分変化スキル使用時の時間経過と変化の割合で段階的に狂化のランクが上昇し最大でBランクまで上昇する。
バーサーカーは土蜘蛛への侵食の深度が即ち狂化となっている。素の状態ではDランク相当。

【保有スキル】

気配遮断:D(-)
サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。
ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断は解ける。

部分変化:A(-)
身体の一部を妖怪の姿へと変じさせる。バーサーカーの場合は蜘蛛の足、および蜘蛛糸の精製し口内から射出する事が可能。
但し、変化時間を長時間維持させる、あるいは変化させる部位を増やすごとに狂化のスキルランクが上昇していく。
変化を解くと上がっていた狂化のランクもリセットされる。

怪力:D(A)
一時的に筋力を増幅させる。魔物、魔獣のみが持つ攻撃特性。
使用する事で筋力をワンランク向上させる。持続時間は“怪力”のランクによる。

戦闘続行:-(A)
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

【Wepon】
短刀

【宝具】
『妖怪変化・大化生 土蜘蛛(おもておにのごとく、からだとらのごとくして、ししくものごとし)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1
その身を土蜘蛛と呼ばれる妖怪へと変じさせスキルとステータスを括弧内のものへと変更する。
朝廷の反逆者であった土蜘蛛は本来蜘蛛とは関わりのない単なる呼び名であったが、後世には妖怪の土蜘蛛へと形を変え、また源頼光の妖怪退治の逸話にて妖怪の土蜘蛛と呼称としての土蜘蛛が関連づけられて伝えられていった逸話から発生した、無辜の怪物に近しい宝具。
化生と化したバーサーカーは相手を縛り付け切り裂く魔性の鋼糸を吐けるようになる他、人としての特性と理性が完全に失われ目の前の敵を殺害するまで暴れ回る。
宝具使用後に人に戻る場合は令呪一画の使用が必要。

【人物背景】
朝廷によって討伐された反対勢力の一つを取りまとめていた女性。
都知久母の名は常陸風土記に記されている。
土隠(つちごもり)とも言われ穴を掘って作られた住居を利用したゲリラ戦法で朝廷軍に反抗していたが、出入り口に茨を張り巡らされた事で戦法を封じられて部族郎党を滅ぼされた。
弱肉強食主義であり、国を滅ぼされた事自体は自分たちが弱かった為に致し方なし、と受け入れているがその後の伝承で『まつろわぬ民の土蜘蛛』が『妖怪の土蜘蛛』として伝えられ同一視された事で、無辜の怪物の様に妖怪としての一面を持ってしまった。
主義主張の異なる人間同士の戦に人として敗れた彼女にとって、自身や共に戦った仲間を退治されて当然の化け物として扱われる事は我慢がならない事であった。
性格は好戦的で享楽的。景気がいい事が好きな反面、堅苦しいのは嫌い。

【特徴】
目元を隠すほど伸びた前髪と肩口まで伸びた後ろ髪。両手両足の長いすらりとしたモデル体型
シャツとショートパンツが一体化した衣服の上に袖の無い上着を羽織っている。

【サーヴァントとしての願い】
『まつろわぬ民:土蜘蛛』と『妖怪:土蜘蛛』の繋がりを絶つ


【マスター】
ブラックウィドウ(ナターシャ・ロマノフ)@マーベル・シネマティック・ユニバース

【能力・技能】
超人的な体術と諜報技術、銃火器知識。
ガジェット類はアベンジャーズから姿を晦ませた時に置いてきた

【人物背景】
アメリカ合衆国の特務機関S.H.I.E.L.Dのスパイにして、ヒーローチームアベンジャーズのメンバー。
妖艶な美女で個性的なヒーロー達の調整役に回る事が多く、アベンジャーのメンバーには仲間意識が強い。
今作ではシビルウォー劇中、キャプテンアメリカらとアイアンマンらでヒーロー同士が決裂した際にアイアンマンらの陣営に当初はついたものの、自身が正しいと思った事を信じてキャプテンアメリカに手を貸した事でアベンジャーズにいられなくなり姿を晦ました後からの参戦。

【マスターとしての願い】
バーサーカーの願いを叶えた後、聖杯を破壊する

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最終更新:2016年09月24日 23:57