黒木智子&キャスター

 カップに盛られたアイスクリームに、銀色のスプーンが差し入れられる。
フレーバーはチョコ。タイトルに違わぬ褐色の丘陵をクラッシュしたブラウニーが彩る。
スプーンが持ち主の口元に、削り取った丘陵の一部を運ぶ。その人はアイスクリームをゆっくりと味わうと、口元を綻ばせた。
見目麗しい少女ならきっと絵になった事だろう。若い青年でもいい。
だが、智子の目の前にいるのは面長の、いささか顎のしゃくれた外国人だった。

 どうせなら、もっと美形の騎士とかをサーヴァントとして宛がって欲しかった…。
智子の小さな溜息を聞き逃さなかった外国人――キャスターは皮肉っぽい笑みを彼女に向けた。

「どうかしましたか、マスター?」

「ひぇっ……あ、あの……」

≪これならいいでしょう。なんです?≫

≪あ、あぁ…その……美味しい?≫

 智子の質問にキャスターは片眉を持ち上げ、たった今、一口目を賞味したアイスクリームに視線を落とした。

≪悪くないですね≫

≪は?≫

 キャスターが智子の目の前で二口目を舌の上に落とす。それは、現代の中高生の10人中7人は確実にスルーするお高いブランドのアイスだ。
コンビニについてきたキャスターにちょっとマスターらしい所を見せてやろうと智子が注文を聞いたら、よりにもよってこれをねだってきた。
10秒前の言を引っ込めようものなら確実にバカにされるだろうし、智子のプライドが注文の変更を許さなかった。
カップ一個でたかだか300円足らずだが、聖杯戦争に招かれる前ならよほどの事が無い限りは手を出さない。
コイツにとっては一言で済む程度の物なのか、と静かに憤る智子を他所に、キャスターは懐かしむような微笑を浮かべて続ける。

≪死後一世紀も経っていませんが、その間の技術の進歩は実に目覚ましい。貴方について大量のアイスクリームを眺めた時ほど心躍らせたのは、久しぶりですね≫

≪ふーん…≫

 アイスを選んでいる時のキャスターは確かに嬉しそうだったな、と智子は思い出す。
彼は実体化している時は大体、顔に影が差しているのでちょっと怖い印象があったのだ。

 ちなみに彼にはお高いカップアイスの他、チョコレート菓子をいくつか買い与え――させられ――た。
今回の出費は二千円に迫っており、お小遣いをやりくりする身としては今期は中々に厳しくなりそうだと、智子の中で鬱っぽいものが増していく。
そこまで悩むならバイトすればいいのだが、金銭的に対して困っている訳でもないし、何より……怖い。
キャスターの甘党っぷりと、自身のコミュ障のひどさをこれ以上考えていてもしょうがないので、近い未来に話題を変える。


≪でさ、これからどうするの≫

≪どうするといわれても、当分は"待つ"しかないでしょう。我々は戦闘向きではありませんから。お望みなら、マスターに幾つか魔術を授けますが?≫

≪お、お…考えとく≫

 念話だというのに言葉が詰まった。智子にも全国の中高生と同じくそういった物に憧れていた――もしかしたら今も――時期がある。
思いがけない形で「そっち側」に行けるチャンスが巡ってきたが、この場でエンチャントを受けるということはつまり、戦う覚悟を固めるということだ。
妄想の中ならバリバリ戦う事は出来ても、現実ではそうもいくまい。痛いのも死ぬの嫌だし、どうせなら戦わずに帰りたい。
現状、智子の周囲は奇妙な新入りを除くと、平和そのものだった。


念話が打ち切られ、しばし二人は見つめ合う。
智子が何も言わないことを確認するとキャスターは視線を外し、手元のアイスクリームに意識を集中した。


【クラス】キャスター

【真名】ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

【出典】20世紀初頭、アメリカ

【性別】男

【ステータス】筋力E 耐久D 敏捷C 魔力A+ 幸運D 宝具EX

【属性】
中立・悪

【クラススキル】
陣地作成:C
 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
 小規模な工房に匹敵する"書斎"の形成が可能。


道具作成:-
 魔力を帯びた器具を作成できる。下記スキルを得た代償に喪失している。


【保有スキル】
エンチャント:A+
 概念付与。
 他者や他者の持つ大切な物品に、強力な機能を追加する。
 基本的にはマスターを戦わせるための強化能力。
 キャスターのそれは、知識の付与や魔術の習得に優れる。


自己保存:B
 自身はまるで戦闘力がない代わりに、マスターが無事な限りは殆どの危機から逃れることができる。


探索者:A-
 恐るべき事実に接しながらも、在るべき日常に帰還した者の事。
 偉大なる宇宙の怪異から生還したキャスターは、高ランクでこのスキルを獲得している。
 同ランクの仕切り直しの効果に加え、ランク相応の精神耐性を保証する。
 ただし、生前は神経症を患っていた為、精神判定においてマイナス修正を受けざるを得ない。


【宝具】
『悪夢の中より来たりて(ザ・ブラックマン)』
ランク:EX 種別:対人、対神宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
 生前、悪夢の中で邂逅した神格のサーヴァントをレンジ内に召喚する。
 ただし本体から大幅に劣化しており、彼の死後に友人が発表した小説中の姿で現界する。
 召喚された「ナイ」はキャスターおよびそのマスターを尊重はするが、彼に指示を下すのは徒労にしかならない。
 ステータスは以下の通り。

【 ステータス 筋力E 耐久D 敏捷C 魔力EX 幸運B  スキル 陣地作成:B カリスマ:A 話術:A 単独行動:A+ 精神耐性:EX 神性:E  weapon 輝くトラペゾヘドロン】


『苦難に別れを、これから始まるのは(コール・オブ・クトゥルフ)』
ランク:A(A++) 種別:対軍、対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
 大洋の底に眠る「何か」が発する思念波をレンジ内に放つ。
 捕捉対象が魔術師や霊感体質といった神秘に対してチャンネルの開かれた人物であるほど精神ショックの威力が増し、高位の魔術師の場合は最悪、発狂する。
 サーヴァントはランク以上の対魔力スキルによってのみこれを無効化可能。ただし、精神判定に成功すれば倦怠感や目眩、吐き気だけで症状を済ませられる。

 キャスターおよびキャスターのマスターは思念波の攻撃対象から除外される。
 この宝具はキャスター現界当初は未完成の状態であり、サーヴァント「ナイ」が完成させることでカッコ内のランクに修正、初めてその真の力を発揮する。


『苦難に別れを、これから始まるのは(コール・オブ・クトゥルフ)』
ランク:A++ 種別:対軍、対界宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
 サーヴァント「ナイ」が「21人の信者」と共に海に呼びかけた時、上記宝具からこちらに移行する。
 まず、呼びかけが終わった時点で神殿を超える陣地「ルルイエ」が会場内に出現、そこから一時間足らずでクトゥルフのサーヴァントが場内に放たれる。

 覚醒している為に思念波の放出は止まっているが、30メートルの巨体から繰り出す攻撃はサーヴァントと言えどもただでは済まない。
 現界したクトゥルフはBランクの対魔力・再生・戦闘続行・変化スキルを保有している事に加え、己の魔力を霧として絶えず垂れ流している。

 霧に触れた時点で耐久判定が発生。失敗した場合は人格・技能・記憶をそのままに、ディープワンの属性・クトゥルフへの忠誠心が強制的に付与される。
 判定に成功したとしてもカエルに似た「インスマス面」への変化は避けられず、ストレスや時間経過によって次第にディープワンに近づいていく。
 対象は人間のみであり、サーヴァント、およびこの宝具の持ち主であるキャスターおよびキャスターのマスターは攻撃対象から除外される。

 クトゥルフは魂食いによって現界に必要な魔力を稼ぐほか、ディープワン達から少量の魔力を受け取る事が出来る。
 サーヴァントなので宝具による打倒が可能だが、同様のプロセスを踏めば再召喚が可能。


【weapon】
なし。

【人物背景】
アメリカ・プロヴィデンスで産声を上げた作家。
コズミック・ホラーと分類されるSFホラー作品を数多く執筆、それらは彼の死後にクトゥルフ神話として体系化された。
海産物を嫌っており、異人種に対する偏見も強い気まぐれな人物であったといわれている。

幼少から悪夢に悩まされていた彼は、夢を通じて外宇宙の遠大さを直に認識する。
旅行で向かったケベックやニューオーリンズにおいて、彼は「形容しがたい何か」の痕跡を発見。
自身が遭遇した数々の怪奇体験を、執筆する小説に反映させていった。


【聖杯にかける願い】


【マスター名】黒木智子

【出典】私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!

【性別】女

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「ぼっち」
大の人見知りで恥ずかしがり屋かつ、妄想癖持ちの見栄っ張り。
身近な人物以外とはまともに会話が出来ず、場の空気を読む事もできない。


【人物背景】
原宿教育学園幕張秀英高等学校の生徒。
引っ込み思案の為、学校ではよく一人で過ごしているが、内心は他者への嫉妬や侮蔑、ヲタネタに塗れている。
無口だが感情表現は豊かであり、ショッキングな出来事に遭遇すると嘔吐する。



【聖杯にかける願い】
生還する。

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最終更新:2016年09月02日 08:55