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遠坂凛&ライダー

「命がかかってれば称賛するやつもいるけどな、あれはいけない。命を懸けるんだから見合ったもんがなくちゃね。やる意味がない」
 と、伝説のスタントマンは言った。

 エンジンが噴かされる。ライダーはまっすぐ、採石場のガードレールを見すえている。
 ここは町はずれの採石場――正確には跡、か、重機の類はなく、布袋に入れられた石仏がむなしく放置されている。ライダーは荒い道の片側、ガードレールから十m離れた場所にいる。目指すは反対、100と数十メートル先。

「まあ俺の持論なんだが、見合ったもんというとだな、命に見合ったもんなんだ、形あるものじゃいくらあったって足りん。金はすぐヤクにでも消えちまうからな、俺の場合、あくまで俺の場合は楽しさだ。楽しくないものに参加したって仕方ないだろ?」

 ライダーは同意を求めて腰に回された腕の主に訊く。

 栗色の毛を二つに結んだ気の強そうな少女である。ライダーの中身を搾り取らんばかりに腰に抱き着き、顔は蒼白、黒目が若干上を向いている。それもそのはず、ライダーは町はずれに採石場があると知るや否やマスターを載せて全速力で飛ばしてきたのだ。
元々危険運転を職業にしていたライダーが安全基準の厳しい現代で運転すれば、それはもうただ走るだけでスタントといえよう。

 そんなバイクに乗せられていたのだ、少女――遠坂凛の肝はずっと冷えっぱなし、尻は感覚がないし、耳も若干聞こえが悪い。

「私は全然楽しくないんですけど!頼むからおろしてよホントに!セイバー狙いだったのに出てきたのはライダー!それもこんなイカレ野郎だなんてもう最悪よ!どうしろってのよ!」

「なに?馬鹿だなおまえは。俺の後ろに乗ったやつは生涯でも数えるほどしかいないんだ多分死にゃしないから大人しく乗せられとけ」

「たぶん…今たぶんって言った!?もーやだ、もういやだ」

「へっへっへ」

 後ろからではどういう表情をしているかは知らないが、きっとあの神父を思い出すような意地の悪い笑顔に違いない。凛はますます顔面の色を落とし、神に祈った。

「さあ!二人乗りでまともなジャンプ台なし、距離は目測で、え~、163m?かな?間違いなく人類初だ。間違いなく不可能さ、いくぞ!」

 宣言とともにバイクのエンジンが大きくがなり立てる。後輪が砂利を弾き飛ばし、気付いた時には宙に浮いていた。

 凛がその日に発した悲鳴は、生涯で一番大きなものとなった。

                 ▼

 数m先でバイクが逆さまになって炎上している。
 ライダーはそれを笑顔で眺めている。彼の足元では放心状態の凛がしゃがんでいる。
 スタントは結果として失敗に終わった。向う側までは行った、むしろ行き過ぎたほどで、着地の際、タイヤがぶつかったのは地面でなく岩壁。直前に気が付いたライダーは凛を抱えて脱出、今に至る、というわけである。

「いや、マジで危なかったな。サーヴァントなめてた。あと二人乗りだとあんなに姿勢を保つのが難しいとは思わなかった。死ぬとこだ」
 ライダーがあっけからんと言い放つ。この場にもう一台バイクがあればもう一度やろうと言い出しそうな雰囲気を察知した凛は大急ぎで話題を変えた。

「ら、さっき…あんたが言ってたことだけどね」「うん?」

「目的があるの…楽しさなんて必要ないわ…」

 ライダーは目的?と聞き返す。
「ああ、聖杯か。なんでも願いが叶うっていう」

 凛はかぶりを振って否定した。
「願いなんかに興味ないわ…そういうのは自分でやるもの」

「いい心がけだ。気が合うな」

 凛はじとりとライダーをにらみつけた。お前みたいのと一緒にされてたまるか、と思いを込めて。
 ライダーは笑う。さも愉快そうに。

「私はね、戦いたいの。勝ちたいのよ。そうしなくちゃいけないの」

「なぜ」

「私がそういうものだからよ」「へえ」

 ライダーはただ笑ったままで、炎上したバイクを持ち上げて採石場に落下させた。表通りに向かって歩き出すので、凛はライダーに不満を抱きながらも後を追った。

 そうさ、勝たなくては。出てきたのがライダーだろうがイカレスタントマンだろうが関係ない。遠坂凛は自分の能力を信じている。自分ならあれを使っても勝ち残れるはずだ。
 凛は決意した。改めて決意した。

「…歩いて、帰るのよね?」

「歩きたいのか?俺はどっかからバイクを調達しようと思っていたんだが」

 訊いてよかった!


【クラス】ライダー
【真名】ロバート・クニーブル
【出典】20世紀アメリカ
【性別】男
【身長・体重】178㎝74㎏
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力:Ⅾ耐久:C敏捷:A++魔力:E幸運:A宝具:C
【クラス別スキル】

対魔力:E
 ライダーは現代のサーヴァントであるため、魔力に対する耐性はほとんどない。
 ランクEはダメージを多少軽減させる程度。

騎乗:A+
 ランクこそA+だが、ライダーは絶対にバイク以外には乗らない。ランクA+相当のバイク操舵技術ということ。

【保有スキル】

尻軽男:B
 ライダーは道具を選ばない。ライダーが乗ったバイクはすべてランクB相当の耐久力とランクC相当の対魔力を得る。ただし原付はその限りではない。

単独行動:B
 マスター不在、魔力補給なしでも長時間現界していられる能力。
 ランクBならマスターを失っても二日間は行動可能。

向こう見ず:A
 不可能に挑戦し続けるライダーの生きざまそのもの。ライダーの行動すべてに実現の可能性が残される。逆説的に理論上絶対に成功する事柄でもライダーが行えば失敗する可能性がある。

仕切り直し:B
 戦闘からの撤退にボーナスを得る能力。

矢除けの加護:(C)
 宝具の発動条件を満たすことによって発動。
 宝具を除いた投擲タイプの攻撃は使い手を視界に納めた状態であれば、余程のレベルでないかぎりライダーに対しては通じない。ただし超遠距離からの直接攻撃、および広範囲の全体攻撃は該当しない。

【宝具】

『不死の跳躍(イーブル・クニーブル)』
ランク:C 種別:対軍宝具 レンジ:- 最大補足:-
 ライダーそのもの。二十年に及ぶスタントマンとしての活動と前人未踏、スタントによる433回に及ぶ骨折と世界最長のスタント記録を由来とする。ライダーの駆けるバイクに追いつくことはできない。サーヴァントがいる空間で敏捷に二つのボーナスとスキル『矢除けの加護:C』を付与。またライダーの受けたダメージは傷としては現れず、その身に蓄積される。

【特徴】
 金髪のオールバック、爽やかで紅白のライダースーツを着ている。スタント界のプレスリーと呼ばれる由来は開いた裾と首回り。パフォーマンスを職業にしているスタントマンらしく、見た目は派手。

【人物背景】
 伝説のスタントマン。1938年生まれ。12の時にモトクロスショーを見てスタントマンを志し、1966年からスタントショーの仕事を始める。以後スタントの記録を打ち立て続け、幾度となく成功と失敗を繰り返す。70年代スタントのアイコン、バイクに乗ったプレスリーと言われた。2007年、老衰で死去。
 スタントマンという職業は当時アメリカンフットボールに次ぐ人気を持っていたと言われているが、その派手さゆえに低俗で品位がないものとして白い目で見られることも多かった。ライダーが跳び続けたのはもちろん人々からの称賛もあっただろうが、純粋にスタントが好きだったというのが最大の理由である。相当な自信家で、変態。
 ライダーとしてはこの上ない適性を持っているはずだが、兵士でなければアウトローでもないため戦闘能力らしい戦闘能力は薄い。しかし同じく戦闘を得意としないマリー・アントワネットの例もあるので全く戦えないということはないだろう。

【サーヴァントとしての願い】
 ない。強いて言うならこの体で出来ることがしたい。

【マスター】遠坂凛
【出典】fate/stay night
【能力】地水火風空の五つの属性を過不足なく使いこなす超一級の魔術師。同年代の魔術師と比べると魔力量もけた違いで、家督も高い、筋金入りのエリート。
 特異な魔術は呪いの弾丸を打ち出す「ガンド撃ち」。本来は物理的破壊力を持たないガンドだが、極めて高い才能がその威力を拳銃に匹敵するものとしている。
 専門は宝石魔術で、宝石に魔力を込め、武器や等道具として扱う。大量のストックがある。
 また八極拳の使い手でもある。近接戦闘もそれなりにこなせる。

【人物背景】
 上記参照。6代続く魔術師の家柄、遠坂家の現当主。能力に裏打ちされた高いプライドと気の強さを持ち、敵対する者は周回送りになるまで、やるときは徹底的にやる。
 参戦はstay/night本編より数か月前。
【マスターとしての願い】
 聖杯を手に入れる。願いは特にない。

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最終更新:2016年09月02日 09:48