川内&エクストラクラス

人の一生というのはたかが知れたもので、せいぜい生きたら五十年というのはいつの話か。
 今は多少長くはなったものであるが、やはりどうしたって全うすることなくその命が失われることもままある。

 橙色の暖かい照明の室内。彼女の正面の棚に並んだ、緑色のボトルに並んだ数々の酒瓶。
 カウンターに腰かけた少女は夢想する。
 いつからか、己の内にあった妄想――――遠く甦る幻想。
 前世、という物だ。
 ここだけならよくある話だろうが、更に珍しいことに前世の更に前世があった。
 そのとき彼女は、人ではなかった。
 その次に彼女は、ヒトであったが人間ではなかった。
 それから今は――――多分人間だった。

 ただ思春期にありがちな空想の類いかと笑えればいいのだが、彼女はそのどちらにも共通する硝煙の臭いを、死の恍惚を、戦の高揚を覚えていた。
 己が果たして、人なのか。
 あれはかに名高い煉獄であり、彼女は人として生まれ変わる為の得を積んでいたのか――なんて思う。
 答えは出ない。

 足のついたショットグラスを傾ける。消毒液めいた、樽の受けた磯の香りを蓄えたアイラモルトの琥珀色が口腔を満たす。
 煙った独特の風味が吐息に混ざる。
 これでは、足りない。
 臨死の恍惚が、あの緊張感だけが彼女に生の実感を与えるのだ。
 それ以外は現実でないように――煙った臭いの向こうに追いやられていく。

 アルコールに湿った息を漏らす。
 年若く、しかし不相応に艶のある彼女に見惚れた男が秋波を送ってくるが手を振って返す。
 そちらもある意味夜戦ではあるが、今はそちらはお呼びではない。
 いつも、その前世を考える。
 都合よくそれは彼女の今の名字であり、都合よくそれはありふれた名であった。

 いつも考える。その世界での彼女は、一体最後にどうなったのだろうか――と。
 そんなときだった。
 バーの扉が開く。
 彼女は偶然、よく顔を合わせる――以前の知り合いによく似たアイドル志願の少女と盃を交わしていた。
 その背の向こう。肩越しに。ボロボロのマントを被った大男が見えた。
 フードの奥の顔が見えないそれに不吉さを覚え、アイドル志願の友人の肩を押し倒そうとしたときだった。

 二分割。四分割。十一分割――――彼女が瞬く間に“解体”された。

 悲鳴を上げる暇もない。
 マントから突き出た茨の糸鋸――四方八方に空間を両断したそれが、静寂な店内を凄惨な戦場に変えた。

 馴染みのバーテンダーが臓物を吐き出して絶命する。
 先ほど彼女に声をかけた男が、押さえ込みにかかったそのままに串刺しにされた。
 仲睦まじそうなカップルが、互いに抱き合ったまま関節を折り畳まれて球体に変わった。
 そして彼女までも、その謎の怪人に両手足を縛り上げられ宙吊りにされた。
 眼下では騒ぎに駆けつけた用心棒の男が、カウンターに隠れて震え上がっていた。

 人は死ぬ。
 それまでの人生に関わらず死ぬ。呆気なく死ぬ。
 彼女は、そんな常識を――――今さらながらに思い返していた。



 ◇ ◆ ◇



 その怪物に名前はなかった。
 ある魔術師が研究の末に、役に立たないと烙印を押した失敗品であった。
 彼に悲しみはなく――彼は初めからその魔術師をみて、あることを思っていた。
 人間というのは、なんと容易く脆いものなのか。
 彼の内にあった衝動は、一つだった。

 より、血が吸いたい。
 より、悲鳴を聞きたい。
 より、多くを殺したい。
 彼を処分しようとした女魔術師を嬲り弄び貪り尽くすそのときにも、彼はただ嬉しかった。
 たった今捕らえた見目麗しい女も、やはりそうしたかった。

「……つ」

 女が小さく声を漏らす。
 いたぶりいたぶりいたぶって、陵辱した魂の方が喰らうと美味い。
 女が分不相応に溜め込んだ魔力を、恥辱の嘆きと共に貪りたい。
 そう、耳を近付ける。どんな風に女は哭くのだろう。
 続いた声を聞くまで、彼は絶頂の最中に居た。

「……討つ」

 耳を疑った。

「……化生(バケモノ)を討つ」

 華奢な身体から絞り出された、地獄めいた声。

「人に仇なす化生(バケモノ)を討つ! 害ある化生(バケモノ)を全て討つ! 化生(バケモノ)は全て討つ!」

 女の左腕に赤い刺青が浮かび上がる。
 言語が得意でない彼にも見れば意味が判る――「夜」「戦」の二文字。続き文字。

「――化生、討つべし!」

 猿叫と共に、少女は己を縛り上げる茨の蔦を膂力で引きちぎった。
 少女は――――先程までの彼女ではない。
 面頬めいて顔を覆う桜色のマフラー。髪に刺さったかんざしがどこか奥ゆかしい。

 何と幻想的な光景だろうか。
 運よく生き残ったバーの用心棒は信じられない光景に思わず失禁。
 光と共に手の内に生成された二つの小型プロペラ機が、彼女の叫びに合わせて空を裂いて怪物に命中。無慈悲に爆発。
 無残に脇腹を抉られたいばらの使い魔は悲鳴を上げながら、それでも何とか身体を立て直した。
 蹈鞴を踏みながら右手の鞭を翻す。

 ああ、なんたる禍々しい姿だろうか。有刺鉄線めいて棘の突き出た拷問鞭が空気を裂きながら少女目掛けて襲いかかる。
 凶悪な風切り音。争いにいと遠き貴婦人なら身震いして失神してしまうであろう。恐怖的光景。
 だが……。

「愚かな。よほどその腕を差し出したいと見える。ならば――」

 猿叫。
 なんと少女は、二本の指で巧みに棘を避けて鞭を挟み取ったではないか。なんという巧みな腕前か。
 そして肘まで覆う長手袋に覆われた両手が、いばらの鞭を無理矢理掴んで手繰り寄せ――決断的に容赦のない横蹴り。
 奇声めいた悲鳴。

 憐れクレーンの鉄球めいて吹き飛ばされる怪物を――更に引き戻し、横蹴り倍点!
 猿叫。引き戻す。蹴る。悲鳴。
 猿叫。引き戻す。蹴る。悲鳴。猿叫。引き戻す。蹴る。悲鳴。
 猿叫。悲鳴。引き戻す。蹴る。悲鳴。猿叫。引き戻す。蹴る。猿叫。悲鳴。猿叫。悲鳴。
 やがて耐えきれなくなった右手のいばらが半ばから千切れ飛び、怪生物は憐れ床や天井にピンボールめいて跳ね返ってバーカウンターにめり込んで停止した。

「貴様ら化生(バケモノ)の逝くべき場所は一つだ。いつだって一つの道しかない」

 身を起こしたいばら怪生物が、絶叫と共に少女の華奢な身体へと飛びかかる――だが!
 眩しい!
 彼女の太股に備えられた探照灯と呼ばれる夜戦特有の光源的装備が、サーヴァントの神秘でエンチャントされて怪生物の目玉を焼き払った。
 猿叫。
 制御を失った怪生物の胴体に少女の蹴り上げが命中。棚に並んだ酒瓶目掛けて、怪物の身体を叩き付けた。
 弾け飛んだ酒瓶の欠片をブーツで踏みにじりながら、桜色のマフラーを棚引かせた少女は冷酷に告げる。

「貴様は吸血が趣味のようだが……化生(バケモノ)らしく惨めに這いつくばり、己の血を啜るがいい」

 地獄の門番めいた恐ろしい声に合わせて探照灯が照射。
 その熱量に気化したアルコールが引火。憐れ怪物は火だるまに変わる。
 奇声と共に床を転げ回り、そして瓶の破片に突き刺さり絶叫重点。なんたる無様か。

 しかし、相対する彼女に一切の慈悲はない。
 その手に構えられたのはクナイ……ではなく魚雷であった。
 だが、近代兵器史に詳しいものならば気付くだろう。魚雷の先端は断じてこのような白木でできてはいない。

「犠牲者と神に――慈悲を乞え」

 そしてそれを猿叫と共に投擲!
 なんたる無駄のない流れるような投擲動作か。達人的。優れた鍛練の賜物である。
 悲鳴。さらなる猿叫。
 心臓に吸い込まれた魚雷に、だめ押しのヤクザキック。
 殺伐として惨い。圧倒的なサーヴァント膂力は、胸部装甲を憐れ障子めいて容易く突き破った。
 口から血泡を迸らせる断末魔の悲鳴と共に怪人は絶命。
 そして撃ち込まれた魚雷に焼き払われ、しめやかに爆発四散した。

「これが我が宝具……あるべきものは、あるべきところへ」

 爆発に背を向け息を漏らした少女は、何事もなかったようにバーを後にする。
 一人生き残った用心棒の暴力団員は、今まで出会ったこともない圧倒的な狂気的真実を前に再び失禁して気を失いそうになった。

 そこで、再び開かれたドア。マフラーを翻した少女。

「ひっ」
「マイン・ゴット……私としたことがすまない……。
 被害者への配慮を忘れていた。この聖餅を額に押し当てるといい」
「え、あ、ああ……」
「ふむ。火傷は現れないな。吸血鬼に感染してはいない……ということだ」
「あ、あの……吸血鬼って……」
「吸血鬼は実在しない」
「え?」
「『吸血鬼は実在しない』。いいね?」
「あっはい」

 虚ろな瞳になった用心棒を見下ろして、少女は更に続けた。

「これはガス爆発だ。酒のアルコールとガスが反応して混ざり合い、絶妙の濃度で爆裂した」
「これは……ガス爆発です……」
「そうだ。運よく、君だけは生き残った。いいね?」
「あっはい私しか生き残っていません」
「そうだ」

 やれやれと、少女は身を翻して外の闇に消えていった。


 ◇ ◆ ◇


 赤い三日月の下。
 己の細腕を包む長手袋に備わった銃座。腰のウェポンラックに備わった魚雷ダートを眺めた少女――サーヴァントは感心した声を上げる。

「……ふむ。私の時代にはなかったものだが、実に使いやすい。
 悪くはない。極東は文明の代わりに殺戮を磨いたというのは本当らしい」

 改めてその英雄は、装備に感嘆する。
 彼自身の英雄としての性質とは言え、こうまでも特徴的に姿が変わるというのは予想外だった。

『極東はないでしょ、極東はさ!』
「ふむ? ああ、言い換えよう。世界の中心とはそこに生きるものにとってが中心だ。
 なるほどマスター、世界の広さを知らぬならこの国はまさに世界の中心だろうよ」
『なんだかなぁー……』

 己の肉体に憑依したサーヴァントの皮肉な喋りに少女――――川内は眉を潜めた。

「私はこれでも褒めているのだよ、マスター。
 私は常に人々の求める最新の退魔の姿となって現れる。より強力に、より化生を殺せる姿を執る」

 基本的にそのいずれにしても彼は彼としての姿を執るのであるが――。
 今回は例外であった。
 それは彼女が抱いていた性質にも由来するし、何よりもあの状況でマスターの命を助ける為には隣に立つよりもその本人となる方がより確実。
 そんな状況判断であった。

「なるほど些か業腹なものではあるが、確かに元が人間と元が軍艦……どちらがより殺しに向いているかと言われたら、さもありなんだ」
『殺しって……』
「何、サーヴァントとしては異例であるが、人に乗り移るのは英霊としては初めてではない。
 それがこんな見目麗しい女性ともなれば、多少の問題はあって無いものだろう?」

 満足そうに指の腹や手の甲を眺める彼女――彼。

『……スカートとか捲らないでよ?』
「私はこれでもいい歳の男さ。娘ほどの年齢の君の下着など気にはしない。
 ――ああ、相手もいないのに黒のレースというのはどうかと思うがね。白が清潔で良いと思う」
『ちょっと!?』

 「ははは」と、サーヴァントが笑う。
 彼は確かに闊達な人物であったが、ここまで若々しく皮肉めいた人格ではない。
 或いはそれも性質ゆえ――憑依したマスターの年齢に引きずられているのかな、と静かに首を捻った。
 やがて、その身の衣裳が桜の花びらの如く闇に溶ければ、

「……あ、戻った」

 彼女は、彼女の身体を取り戻した。
 代わりにその内から響く声。

『初回が故、私が対処させて貰った。
 いやはや……化生を前に怒りを抑えられればいいが、既に英雄として像を固定されてしまった身では生前のようにはいかないな』
「……また乗っ取られるってこと?」
『残念ながら、可能性は低くはない。犠牲者の怒りが、私の怒りとなってしまう……こればかりは英雄になった弊害だろう』

 心底悔いる風に、川内の心の内に宿った英雄は声を漏らした。

『それでも私は思うのだよ。
 ――化生(バケモノ)を殺すのは、いつだって人間だ。その時代に生きる人間でなくてはならないのだ。
 そうでなければ、人は勿論……化生(バケモノ)も報われない。人が人として、化生(バケモノ)を倒さねばならないのだ』

 彼は、それまで人理に刻まれた怪物(バケモノ)殺しではなかった。
 王族ではなく、勇者でもなく、特別な肉体を持たず――――ただ知識と策略と勇気で未知の不死者を殺害しただけの人間だった。
 守れなかった命もある。失ってしまった仲間もある。
 それでも最後に、暁の中に怨敵を追い詰め心臓に杭を打ち込んだ。

 彼は最新の化け物殺しの概念。
 広がる情報伝達に物語を乗せた、謳う声ではなく語る文字でその英雄譚を響かせた最新鋭の退魔の輩であった。
 人の域を脱することなく、魔を討った英雄であった。
 常に形を変える、退魔の復讐者であった。

「……その時代に生きる、人間かぁ」

 改めてマフラーに鼻先を埋めながら、少女――川内は名残惜しげに呟いた。

『……失礼、配慮が足りなかったかな? マイン・マスター』
「ん、あ、いいよいいよ! まぁ、本当だからさ」

 川内は首を振って返す。
 彼女自身、在り方が不鮮明なのだ。
 魂に染み付いてしまった前世に引きずられている――――或いはそちらが本物であり、こちらが波間の潮騒の幻影に思える。
 それともどこかと混線してしまった幻覚か、何者かに作り出された過去なのか。
 そんな不確かさは、自覚していた。

『ああ、そうとも……女性に年齢の話は禁句だった。いくら若々しい少女の姿をしているとしても、君は実は老婆に近い年齢などとは――』
「アヴェンジャーの方が歳上! 歳上だから!」
『男はいいのだよ、男は。歳を経れば男として熟成されるのだから』

 湿っぽい空気を感じ取ったのか茶化すような台詞を飛び出させたサーヴァントに、川内は改めて息を漏らした。
 聖杯戦争。
 勝ち残れば、自分の中の疑問にも答えが生まれるだろうか。
 それとも――――いや。

 ふと見上げれば、血を吸ったように赤く横たわる三日月。
 伸びを一つ。
 いつだって、これは変わらない。

「夜はいいよねー、夜はさー」
『……ふむ? こんな奇怪で凄惨な夜が、化生と怪奇が蔓延る夜がいいと……マイン・マスターはそう言うのか?』
「ん? あはは、まぁ――そうだね」

 マスターと呼ばれるのはどうにも慣れないと頬を掻きつつ、

「それでも――――夜戦はいいよね。夜戦はさ」

 川内は、妖艶で獰猛な、裂けんばかりの笑みを浮かべた。

『やれやれ……ナイトウォーカーとしては、吸血鬼も裸足で逃げ出すほどの拘りらしいな』

 アヴェンジャー――――エイブラハム・ヴァン・ヘルシング。

  マスター/デミサーヴァント――――川内。

 共に、抜錨す。



【クラス】アヴェンジャー
【真名】エイブラハム・ヴァン・ヘルシング
【出典】吸血鬼ドラキュラ(19世紀イギリス)
【マスター】川内
【性別】男性(憑依後:女性)
【身長・体重】172cm・75kg(憑依後:165cm・53kg)
【属性】中立・中庸
【ステータス】筋力B 耐久D 敏捷B 魔力E 幸運B 宝具B

【クラス別スキル】
 復讐者:E++
  彼の行う復讐とは、人の領分に踏み入った魔に対してのみなされる復讐。
  魔に類するものからの被ダメージに応じて魔力を増幅させる。

 忘却補正:B-
  この世でもっとも高名な“化生退治”として数えられる為にランクは低下しているが、同時に彼は原典から歪められている。
  正ある英雄に対して与える“効果的な打撃”のダメージを加算する。

 自己回復(魔力):D
  この世から化け物への怒りと恨みが潰える事がない限り、憤怒と怨念の体現である復讐者の存在価値が埋もれる事はない。
  これにより、魔力に乏しいマスターでも現界を維持できる。

【保有スキル】
 無辜の怪物:EX
  生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられなった怪物。能力・姿が変貌してしまう。このスキルを外すことは出来ない。
  元は理知的な大学教授でありれっきとした人間であるのだが、後世のイメージにより“退魔の人間”として定義されてしまう。

 プランニング(魔):B
  対象を暗殺するまでの戦術思考。軍略と異なり、少数での暗殺任務にのみ絞られる。
 彼の場合は自己の生存の度外視というものを取り除く代わりに、相手が魔に類するものでなければスキルの使用ができなくなる。

 専科百般:B++
  類いまれなる学術的研究心により、様々な人体や概念への理解を持つ。真っ先に常識離れした吸血鬼被害を看破した。
  戦術・暗殺術・詐術・話術・学術・隠密術といった、総数32に及ぶ専業スキルについて、Cランク以上の習熟度を発揮できる。
  特に催眠術は得意であり、因果を歪め吸血鬼の犠牲者となったミナ・ハーカーの吸血鬼化を押し止めるほど。

【宝具】
『化生討つべし(オカルトスレイヤー)』
 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
  常時発動型宝具。
  始まりは六十代の大学教授であり相談役であったヴァン・ヘルシングであったが、三十年後の舞台ではドラキュラとの直接戦闘。
  五十年後には映画化されたがやはりドラキュラと直接渡り合い、八十年後には四十代に年齢を改め、ドラキュラ伯爵との格闘に及んでいる。
  時を経るごとに時代を下るごとに彼の像は若返り表現され、より強力に直接的に吸血鬼と相対する人物として更新されて言った。
  メディアの発達により広く広げられた最新の退魔の概念であった彼は、人々が安心する“より確かな退魔”として姿を常に更新する。
  より優れた、より強い姿となって“化け物を討つ”という概念。
  無数の武器に“退魔”の概念を与えて相手の特徴に合わせて装備を更新・作成し、
  化け物が強力なほど、その化け物の被害者が多いほど、そしてその助けや討伐者を願う声が多いほど、アヴェンジャーのステータスは上昇する。

『土は土に、塵は塵に、そして灰は灰に(レスト・イン・ピース)』
 ランク:B++ 種別:対人(魔)宝具 レンジ:- 最大補足:1人
  吸血鬼殺しの白木の杭。
  この杭にはあるべきものをあるべき場所に返す――“返還”の呪いが授けられており、
  人間から奪えば奪うだけ――奪ったものの多い化生ほどダメージが増加する。
  心臓にこの宝具を突き立てられた吸血鬼は、被害者から奪い取った血液を、そして神の御許から奪い取った死者の亡骸の返還を要求され、塵になって消える。
  “誰かから何かを授かった”“どこかから手に入れた”“集めた”という逸話を持つ英雄に対しては、副次的にその宝具を消滅させる効果を持つ。
  一方的に幸せを奪われた無辜の人々の、“還して欲しい”という犠牲者の祈りの杭である。
  ……なお現在は第一の宝具により、魚雷に加工されて使用されている。

【weapon】
 原典ではニンニクに金と銀の十字架、ピッキングツール、リボルバーとナイフに白木の杭。
 ナナカマドの灰に野バラの枝、結界を為す聖餅など多岐に渡り、
 果てはサーベル、ロープ、二丁拳銃、催涙スプレーにクロスボウ。変形手裏剣などと、彼を語る物語に合わせた数多の武器を持ち合わせる。
 現在はデミ・サーヴァントとして、憑依した少女――艦娘:川内がかつて有していた装備をエンチャントして使用する。

【解説】
 原典は複数の人間の手記で語られる。
 それらを集約するとこうなる。
 まず、トランシルバニアの貴族がイギリスの弁理士の青年にイギリスの土地の購入を頼んだことから話が始まる。
 彼の婚約者のその友人女性は夢遊病に悩まされていたのだが、それが原因で吸血鬼であった貴族による吸血を受け、犠牲者となってしまう。
 その際に彼女にかつて求婚していたジャック・セワードから助けを求められて現れたオランダのアムステルダム大学の名誉教授――それがエイブラハム・ヴァン・ヘルシングである。
 精神科医としてだけではなく、科学者として、哲学者として聡明な彼は原因に行き当たる。
 しかし、その余りにも突飛な原因を周囲に説明しなかった行き違いから、犠牲者――ルーシー・ウェステンラは死亡してしまう。
 以後、彼女の婚約者であったアーサー・ホルムウッド、求婚者であり教え子のジャック・セワード、求婚者の一人のキンシー・モリスと共に吸血鬼に対決していく。
 聖餅による結界、催眠術による吸血鬼化進行の遅延……
 様々な困難の末にドラキュラを追い詰め、配下との戦闘でモリスの死を受けてしまうも彼らはついにドラキュラの胸に杭を突き立てた。
 原典では恰幅がよく、アドバイザーとして立ち回っていた老紳士であったが、
 時代が下るに連れて彼自身が直接吸血鬼と戦う姿で描かれるようになり、やがて若返り、単身魔を討つ人間としてイメージされるようになった。
 最新にして、高名な“化生殺し”として今なお世界中でその名を轟かせる人物。
 人外に弄ばれるだけだった力を持たぬ無辜の人々の、嘆きと祈りを背負った人間――――既に本来の姿からは遠く変質している。
 原典では彼の英語は独特の(他国の)アクセントをしており、ドイツ語系統の「Mein Gott(My god)」というフレーズを使っていたとされる。

【特徴】
 本来は恰幅の良い老齢の男性であったが、呼び出される状況に応じて変貌。
 デミ・サーヴァントとして戦闘に入る際、川内の姿は変化。
 南国の花を思わせる裾が長く複数に別れて垂れ下がる上衣とそれを止める大輪の花めいた赤い帯。黒いスカート。
 長手袋には小型の銃座がマウントされ、右の太股には探照灯。腰には複数の魚雷ウェポンラック。
 そして口許を覆う白いマフラー。

【サーヴァントとしての願い】
 原典としての自己を確立する。
 だが人に仇なす化生は殺す。




【マスター】
 川内@艦隊これくしょん(ブラウザゲーム)

【能力・技能】
 記憶には、第二次大戦中の実在の艦船である川内の記憶。それと、艦娘として鎮守府で深海棲艦と戦闘していた際の記憶があるが、
 現在では特別な能力は有していなかったが、デミ・サーヴァントとしてアヴェンジャーのスキルを一部受け継ぐ。
 史実でも参加した戦いの四回の内三回が夜戦であり、夜になると実に楽しそうに生き生きと輝く。

【人物背景】
 前世の記憶のようなものを持ち合わせてしまった女学生。
 夜な夜な街に出ては、かつての記憶に引き摺られるように刺激を探していた。
 生まれてからの記憶というのにも現実感を感じられず、彼女が確かに覚えているのは艦船、そして艦娘としての戦いの記憶。
 その世界で彼女がどう生きてどう終わったのかは彼女自身、深くは覚えていないらしい。

【マスターとしての願い】
 聖杯戦争を通して、自分自身を確立する。

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最終更新:2016年09月01日 21:12