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ホークアイ&アーチャー

草木も眠る丑三つ時。
冬木市の東部に位置する新都は近代的な発展を遂げた街とはいえ、この時間になれば居並ぶ建物も軒並み明かりが消え、静寂が辺り一帯を包み込む。
そんな漆黒の空間をさ迷う影の姿が複数。
それは巨大な蜥蜴だった。
黒い体色の蜥蜴達が赤い眼を光らせながら寝静まった街を這い回る。
まるで何かを探すように動き回る蜥蜴達の視界に、1つの人影が留まった。
無数の視界に捉えられたのは一人の男性。
酒を飲んだ帰りなのだろうか、その足取りはおぼつかず、蜥蜴達の存在にも気付いていない。

音もなく蜥蜴達が男へと忍び寄る。
餌にするのか、それとも別の用途があるのか、どちらにせよこの男に取っては悲惨な末路が待っているのは明らかだ。
先行していた一匹が鋸の様に並んだ歯を剥き出しにする。
呑気な犠牲者を前に駆け出し、その牙を突き立てようとした、その刹那。

夜の静寂を風切り音が切り裂いた。

駆け出そうとした蜥蜴がピタリと動きを止めた。いや、止められたと言った方が正確だろう。
その額から矢羽根が生えている。
どこからか飛来した矢が、蜥蜴の眉間を貫き、貫通した矢がそのまま地面と蜥蜴を縫い止めたのだった。
生命活動を停止した蜥蜴がドロリと液状になったかと思うと、コンクリートの地面に不気味な染みを作る。

襲撃者がいる。
そう理解した蜥蜴達が警戒するのと、彼らめがけて第二矢、第三矢が降り注ぐのはどちらが早かっただろうか。
射抜かれた一匹が偶然にも矢の飛来してきた方角を捉えた。
だが、それは到底信じられるものではなかっただろう。その視界の先に写ったのは、遥か数100m先に立つ、7階建てビルの屋上だったのだから。

「この位置から狙撃を決めるとはな、やるじゃないかマスター」
「言っただろ? 弓には自信があるって」

楽しげな声がビルの屋上に響く。
そこにいたのは、二人の男。
片方は弓を、片方はクロスボウを構えながら、眼下数100m先に蠢く蜥蜴達を正確に射抜いていた。
蜥蜴達は狙撃主の位置に気付いた所で取れる手段もなく、散り散りに逃げようとするが、その判断はあまりにも遅すぎた。
弓の男が放った矢が路地裏に置かれたごみ箱の隙間を縫ってその裏に隠れていた蜥蜴を射抜く。
ヒュウ、とクロスボウの男が口笛を吹いた。

「21世紀のウィリアム・テルと呼んでくれてもいいんだぜ?」

弓矢の男が得意気な笑顔をクロスボウの男に見せる。
対するクロスボウの男は意味深な笑みを見せながらクロスボウを構えた。
キリキリと機械的な音が響いた後、放たれた矢の向かう先は並走して逃げる二匹の蜥蜴。
矢は器用にも二匹の体が重なる位置を射抜き、生命活動を停止した蜥蜴達が同じタイミングで染みへと姿を変えた。


「俺を名乗りたいならせめてこれぐらいはやってもらわないとな」

意地の悪い笑みを浮かべるクロスボウの男、アーチャーのサーヴァントであるウィリアム・テルに対し、弓の男は苦笑混じりに肩を竦めた。

クリント・バートン。
コードネーム:ホークアイ。
アメリカ合衆国の特務機関S.H.I.E.L.Dのエージェント。
それがアーチャーを召喚したマスターである彼の素性であった。

「で、さっきの不可思議な生態の蜥蜴どもはなんだったんだ?」

蜥蜴の群を殲滅し終えたホークアイが油断なく夜の街を見下ろしながらアーチャーへと質問を投げかける。

「さて、魔術なんてものとは縁がなかったもんでね。分かるのは低級な使い魔ってぐらいだ。
神秘の欠片もないハイテックな弓矢でもあっさり殺せたところを見るとサーヴァントよりも魔術師どもの使い魔と見ていいだろ」
「なるほど、充分すぎる答えだ」

アーチャーの推測を聞きながら、手に持っていた弓を収納する。
周囲に捉えた人影は先ほどまで命の危機にあったことも知らず、呑気に家への帰路に着いている酔っ払い程度。
今日はもうこの場での一般人への襲撃は起きないだろうと、ホークアイは結論を出した。

"聖杯"なるものを狙い、複数の組織が極東への動きを見せているという情報をキャッチしたS.H.I.E.L.Dは、ただちにホークアイを事態の調査に向かわせた。
調査の結果出てきたのは、聖杯戦争、万能の願望器を賭け、歴史や神話の英雄をサーヴァントとして従えたマスターと呼ばれる存在によるバトルロワイアルという儀式。
そのあまりにも荒唐無稽な話に閉口したホークアイではあったが、まさか自身がその参加者として、気づけばこの冬木市に拉致される事になるとは思いもよらなかっただろう。
現在に至るまで何度かS.H.I.E.L.D本部に連絡を取っているが、繋がる気配は一向にない。
仕方なく実地調査としてアーチャーを引き連れて街を出歩いているのが彼の現状であった。

「この頃の事件の犯人は、あの蜥蜴どもだと思うか?」
「あいつらかもしれないし、違うかもしれない。今のこの街には必要なら躊躇せずに事件を起こす奴らがごまんといるだろうさ」

その発言に、ホークアイの表情が若干だが険しくなる。
殺人、事故、行方不明。この街に連れてこられてからは絶えず彼が耳にする事件の話。
街の影で良からぬ事をしている者達がいる。
それを見過ごし任務に集中するほど、彼は冷徹にはなれなかった。
故に今彼が行っているのは、調査にかこつけた自警活動だ。
新都を見回り、街の平和を脅かす異物を排除し、可能ならば尋問する。
成果らしい成果は殆どないが、今回のように知らない誰かの命を救えた事もあった。
しかし、今宵の活動もここらが潮時の頃合いだろう。
結局、真相に近づくピースについては今日も得られなかった。
吐いたため息が外気に冷やされ、白い靄となって夜風に乗って消える。

その身を霊体へと変え、夜の闇に溶け込んでいくアーチャーを見ながら、ホークアイは彼と初めて会った時の事を思い返す。

「息子を助け、悪党を殺し、祖国は独立し、そんな俺の生涯に未練はない。唯一持ってる願いなんざ、"かつての俺達と同じ目にあってる奴らを助けたい"ぐらいのもんさ。
そういう意味じゃあマスター、あんたに従うことで俺は望みを叶えられるのかもしれんな」

聖杯を調査する、無関係な人間に危害を加えるものは極力排除する。
聖杯戦争に臨む参加者が取る戦略としては複数の陣営からも目をつけられる可能性や、囮をはじめそれを逆手に取られる危険性も高く、愚策に近い選択だと言えるだろう。
しかし、その二つの方針を伝えた時、アーチャーは笑顔を浮かべながら快諾してくれた。
大切な人を救うことで英雄となった男は、それこそが自分の本懐であるとホークアイの選んだ道を肯定してくれたのだ。

(あの時みたいな事が起こらなきゃいいんだがな)

ホークアイの脳裏に、ソコヴィアの悪夢が繰り返される。
ウルトロンとの戦いに巻き込まれた何の罪もない人々。
崩壊する大地と瓦礫と炎の上がる街、響く悲鳴。
自分を助け、代わりに崩れ落ちた一人の青年。
あの凄惨な光景は戦いが終わってなおホークアイの心に深い影を落としている。

この街を第二のソコヴィアにしてはならない。

想いを新たに射手は夜の闇に消えていく。



【クラス】
アーチャー

【真名】
ウィリアム・テル

【出典】
史実(14世紀初頭、スイス)

【属性】
中立・中庸

【ステータス】
筋力D 耐久C 敏捷A+ 魔力C 幸運C+ 宝具D

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。

独立の象徴:A
属性が悪の相手と戦闘する場合、自身の敏捷と幸運を上昇させる。
ウィリアム・テル。それはスイスにとって圧政者を打ち破り独立の切っ掛けとなった偉大な英雄である

【宝具】
【救命の一矢(シュートダウン・アップル)】
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大補足:1
この宝具は自分以外の誰かを助ける場合にのみ発動する。
アーチャーが生物・サーヴァント以外の何かを射る事によって対象が助かる可能性があれば、因果をねじ曲げ『アーチャーの弓矢によって対象を助けた』という結果を作り出す。
頭に乗せられた林檎を射る事によって自身の息子を助けた世界的に有名な逸話が昇華された宝具。誰かを助けるという行為において、アーチャーは決して狙いを外さない。

【報復の二矢(プレリュード・フォー・インデペンデンス)】
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
『救命の一矢』が発動後、救助した対象を攻撃した相手に限定にしてBランク相当の気配遮断スキルを発動し、アーチャーに補足された場合に対象の幸運のランクを2ランク強制的に低下させる。
一本の弓矢は愛するものを救うため、もう一本の弓矢は悪しきもの射抜くため。
息子の頭上の林檎を射抜けと命じたオーストリアの役人・ゲスラーに対し暗殺を成功させた逸話が昇華された宝具。

【Wepon】
クロスボウ

【人物背景】
ロビン・フッドと並び世界的に有名な弓を扱う中世の英雄。
当時スイスを支配していたオーストリアの役人であるゲスラーが広場に自身の帽子を立て掛けて、通りがかる民衆に対しお辞儀するように強制したのを拒否した事からウィリアム・テルの物語は始まる。
息子の頭部に置かれた林檎を射るか、それとも死ぬか。極限状況のなかウィリアム・テルは見事に林檎を射抜き息子を助ける事に成功。後にゲスラーの暗殺に成功しスイス独立の口火を切った英雄として今日でも愛されている。
良くも悪くも好き嫌いを表に出す人間であり、殊更に理不尽を強いる者や傲慢な者に対しては態度の節々から嫌悪感を露にする。
皮肉屋で大雑把だが基本的には人当たりのいいおじさん。

【特徴】
180cm程度の身長、細目の体にラフな服装。
濃い金髪と同色の顎髭・口髭に覆われている
フードやマントを愛用し腰には一丁のクロスボウを携えている。

【サーヴァントとしての願い】
聖杯にかける願いはない。聖杯戦争の理不尽な犠牲者を減らす



【マスター】
ホークアイ(クリント・バートン)@マーベル・シネマティック・ユニバース

【能力・技能】
正確無比な弓の腕。
また特性の矢はリモコン操作1つで電撃や煙幕など様々な機能を付与しつつ放つ事ができる。
かつて洗脳された経緯があってか、精神攻撃に耐性がある。

【人物背景】
アメリカ合衆国の特務機関S.H.I.E.L.Dのエージェントにして、ヒーローチームであるアベンジャーズのメンバー。妻子持ち。
性格はクールで一度親しくなればかなり親密に接してくれる。
本作ではアベンジャーズ2の後、シビル・ウォー前の時間軸より参戦。

【マスターとしての願い】
聖杯にかける願いはない。
聖杯戦争の調査と、巻き込まれた人間の保護を優先。

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最終更新:2016年09月03日 22:50