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城ヶ崎美嘉&ライダー

――――何がどうなって、こんなことになってしまったのか。



アイドルであっても、非力な一般市民である城ヶ崎美嘉は、困惑することしか出来なかった。






「浦ちゃん一気でいっちゃいま~す!」
「太郎様ッパネエっす!マジリスペクトっす!」




カラオケボックスの一室。
そこに居るのは二人の男女と、一匹の人形のようなデフォルメ調の動いて人語をしゃべる亀。

男は冬場だというのにアロハシャツ一枚を羽織、陸だというのに海パンを履いた丘サーファースタイル。
髪は茶色に脱色し、肌は健康的に日焼けをしている。
筋肉隆々というほどではないが、ちらりと見える腹筋からたるんだ肉体ではないことを感じさせる。
しかし、顔つきはその肉体とは対照的に緩みの極みというもの。
タレ目気味の顔とニヤついた表情、ほんのりと刺した赤みは酒酔いを十分に感じさせる。
『威厳』という言葉から最も遠い、いわゆるチャラ男だった。
肩にデフォルメ調の亀を乗せ、大ジョッキに仕込んだ謎のアルコール飲料を大きく掲げているではないか。

「ヘイ、パーリラ!パリラパーリラ!」
「パーリラ!パリラパーリラ!」
「ミキャちゃんも、ヘイ!セイ!」
「パ、パーリラ……パリラパーリラ……」
「パーリラ!パリラパーリラ!」

カラオケボックスだというのに、アロハシャツに海パンを履いた茶髪のチャラ男とひたすら太鼓持ちをする人形のような亀。
その一人と一匹に挟まれるのは、カリスマギャルとして名高い城ヶ崎美嘉その人だ。
桃色がかった鮮やかな髪は若干の生気を失い、強気なツリ目を疲労に滲ませている。
張りに満ちたはずの若々しい肌は、しかし、今は疲れからか若干のたるみを連想させる。
服装はその派手目な顔立ちとは対照的に、露出も少なければ装飾も少ない地味なもの。

美嘉は異様なまでのテンションを維持する一人と一匹を前にして完全に意気消沈の様相だ。
というのも仕方ないだろう。

元々、美嘉はあるストーカーから殺される直前だった。
この稼業、アイドル業をやっていればファンは大切なモノだ。
大切なモノだが、その大切なモノの中にも変なものや危険なものが混じり込んでいる。
そのストーカーは、それだった。
刃物を持って、美嘉へと襲いかかった。
単なる女子高生である美嘉に防ぐすべはない。
美嘉の生命はそこで終わり、死体すらも変質者であるストーカーに弄ばれるのだ。
その時脳裏によぎった男の顔。
自らを支え続けてくれた男。
救ってくれ、と、その男に願った。
しかし、答えたのは別の男と、一匹の『亀』だった。


その男こそが、ある巨大な亀にまたがったライダーのクラスのサーヴァントだった。


亀の突進により、ストーカーを撃退してみせた。
地獄が開けてもまた地獄。
城ヶ崎美嘉は、聖杯戦争へと巻き込まれた。
過去に偉業を成し遂げた英霊を呼び、この世ならざる奇跡を求める。
それに巻き込まれたのだ。
奇跡を得るために、人はなんでもするだろう。
その恐ろしさを、目の前の『亀』は懇切丁寧に教えこんでくれた。
不安が大きくなる。
何が起こっているのか理解できない。
そんな思いを隠しきれなかった美嘉に、自身を救ったライダークラスのサーヴァントは一つの提案をした。



『ってか?せっかく?受肉?したわけだし?
 あーそぼーぜー!!!!』



との言葉を残し、カラオケへと突入した。
このカラオケ最初は良かった。
最初は乗り気ではなかった美嘉も、四時間ほど経てば、この二人のテンションに釣られて楽しみを覚えていた。
しかし、それも日付が変わる頃には疲れを覚え、今となってはひたすら『寝たい』という感情に支配されていた。
なにせこのカラオケ、すでに何店舗も梯子し、二日目へと突入しているのだ。
太陽が沈む直前から始まり、太陽が中天に輝く今現在までひたすら一人と一匹がはしゃいでいた。

異様だ、この一人と一匹は。
異様なまでの体力と気力。
普通はここまで騒げない。
しかし、この一人と一匹は普通ではない。

そうだ、城ヶ崎美嘉は侮っていたのだ。

ただ、『人の家に招かれて飲み食いした』という、それだけで英霊となった男の、異常なまでの図太さを。
この男は、無敵だった。
こと、『騒ぐ』という事象に関しては、恐らく宇宙一秀でている。

そうだ。
この一人と一匹を見ているだけで、歴史の裏側というものを知ることが出来る。
伝承において、『三年間、竜宮城で暮らし、地上に戻れば七百年の時が経っていた』とされている。
いわゆる『ウラシマ効果』の基となる御伽話である。
しかし、その逸話は偽りだった。
この男は、嘘偽りなく。


『七百年間、竜宮城でひたすら騒いでいただけ』だったのだ。


本人は三年ほどだろうと思っていたが、実際は本当に七百年間、竜宮城で騒いでいたのだ。
竜宮城で出される不可思議な食物と飲料によって不老であり不死であることを可能とした。
その不老と不死をひたすら宴会を楽しむだけに使った真性の遊び人なのだ。
城ヶ崎美嘉が召喚した、ライダークラスのサーヴァント。



――――そのサーヴァントの真名は、『浦島太郎』と言った。



恐らく、日本史上、誰よりも長い時間を楽しく遊び続けた男だ。
本人が腰に下げた袋、すなわち浦島太郎の宝具、『おいでませ竜宮城、良いとこだよ竜宮城(レッツ・パーリィータイム)』。
この宝具を通じて取り出した、『竜宮城の美酒』を一口に飲み干す姿を見ると、その肩書にも納得できる。


「んでさ、んでさぁ。ドリカムったらさぁ、ミキャちゃん何するぅ?」

恐らく風呂桶ほどの酒を飲んでも饒舌なままのライダーは美嘉へと語りかける。
一瞬、言葉の意味が分からなかったが、その後に流れてきたカラオケの曲で理解した。
ドリカム、Dream Come True、すなわち夢が叶ったらどうするのかという問だ。

「いきなりそんなこと言われても……」

美嘉は疲れきった表情でそう応える。
そうだ。
美嘉は将来の夢も決まっていない。
今やっているアイドル業は間違いなく美嘉のやりたいことだが、それが将来もやりたいことなのかと聞かれると、多少口をつむぐ。
何処かでアイドルの終わりを迎えることになる。
その後は?
何も分からない。
夢がかなった後に願う夢が、美嘉にはまだわからないのだ。

「俺ちゃんはねぇ」

そんな、美嘉の思春期特有の将来への漠然とした不安を聞き流すライダー。
なんなんだこの男は、と怒りよりも先に呆れが浮かんだ。

「聖杯使うなら?
 パッパとマッマに会いたいかなって?
 急に居なくなったけど、割りと幸せだったって伝えたいし?
 出来なかった分の親孝行とかもマッハでロングにやっちゃいたいし?
 そういう風に使うのも、良くね?ね?」
「はぁ……」

生返事というよりも、ため息のような言葉を返す美嘉。
とは言え、このチャラ男のワールドチャンピオンと言った様子のライダーもまともな親への愛情を持っている

「でもさぁ?やっぱりさぁ?願いが叶うならさぁ?」

しかし、そこまでだった。
美嘉の感心を高性能掃除機のように吸い込む軽い口調。
そこから袋へと手を伸ばし、再び謎のアルコール飲料が注がれた大ジョッキを取り出した。

「もっかい竜宮城行っちゃおっかなぁ~!」
「あっ、それ一気!一気!」

幻滅とはまさしくこのことなのだろう。
美嘉は、昔話から浦島太郎を心優しい青年だと思っていた。
現実はいつだって無情だ。

「ミキャちゃんも一緒に行く?ってか行くっしょ?」

そんな美嘉の心中を知ってか知らずか誘いをかけるライダー。
目の前の男の恐らく楽しい事しか考えていないであろう間抜け面をただ眺める美嘉。

「ミキャちゃんも可愛いけどさ、乙ちゃんは本当ッベエんだよ」

知らない名が出てきた、と思ったが、すぐにそれが乙姫であることがわかった。
この様子では乙姫もまたどこぞの高級ホステスのような女なのだろう。

「ボン!としてるし、キュッ!としてるし、ボン!としてるんだよ」
「……」

ライダーの偏差値の低さと下劣さと語彙力のなさに、覚めた目で見ることしか出来なかった。
そんな美嘉の視線を無視して、ライダーは乙姫の魅力を語り続ける。

「乙ちゃん優しいしさぁ、可愛いしさぁ、暖かいしさぁ……」

ニヘラ、とだらしのない顔がさらにだらしなくなる。
乙姫のことを愛していることがよく伝わってくる。
そこだけは、嫌な気持ちにはならなかった。

「なぁんで振られちゃったのかなぁ、俺」
「…………え?」
「…………太郎様?」

そこで突然暗い顔になったライダー。
乙姫と結ばれたとばかり思っていた美嘉はマヌケな声を出してしまい、亀もまた不思議そうな声でライダーへと問いかける。

「亀吉、三年目ぐらいだっけ?
 俺が帰るって言い出したの」
「え、三年……え?え?」

真実は七百年目である。
それを知っているお供の亀は動揺することしか出来ない。

「パッパとマッマに紹介したいから一緒に外に出てくれって頼んだら?
 断られちゃって?
 めっちゃ凹んでたらこいつ渡されて?
 あともう一つ渡されて?
 なんだまだワンチャンあるじゃんって思ったら?
 鶴公に変わっちゃうイジメ?イジメ?マジデジマ?って感じで?」
「た、太郎様?」

なるほど。
確かに玉手箱は強烈な別れ手形と言えるだろう。
美嘉は、多少ではあるが同情した。
目の前のチャラ男はチャラ男界のグランドスラム制覇プレイヤーだが、それでも乙姫への恋心は本物なのだろう。
それほど恋した女性に、年老いて死んでしまえという贈り物をされたのだ。
一方で、亀は動揺を隠し切れない声を上げている。

「大好きだったんだけどなぁ……初めてだったのにさぁ……」

どんどんと暗くなっていく。
さすがに同情の念も大きくなっていき、どう慰めたものかと思った。
震える肩。
泣き出してしまうのか、と思ってしまった瞬間。
ライダー自身の腰に回していた手を大きく上へと掲げ。
再び大ジョッキの中のアルコールを一気に飲み干した。


「ってなわけで! まっ、もっかい竜宮城行って、アタック&アタック&アタック!って感じ?」


呆れたように見つめる美嘉。
ただ黙りこくる亀。
プハーっと気持ちよく息を吐くライダー。
そして、ライダーがジョッキをテーブルに置き。


「おしっこ!」


その一言ともに、ライダーは勢い良く席を立った。


はっきりしたことが一つ。
好きか嫌いかは別として、男性の好みとしてはライダーは城ヶ崎美嘉の正反対である、ということだけだ。
美嘉の好みはもっと。


物静かで。

余裕があって。

それでいて自分が色で仕掛ければ動揺してくれて、そんな時に自分をもっと大事にしろと言ってくれるような。

年上の――――







「なぁっー!!!」
「……うわぁ!?」


そこまで考えて、奇声を上げて顔を強く振り、釣られたようにデフォルメ亀が弾けたように声を出す。
顔が思い浮かんでしまった。
そうではない、そうではないのだ。
『彼』はそういう対象にしてはいけない。
自分にとって『彼』は大事な仕事上のパートナーであり、また、『彼』にとっても自分はそういう存在なのだ。
きっと、それを知られれば『彼』は引く。
『彼』にとってアイドルとはそういうものなのだから。

「ど、どうしたんですか、美嘉様?」
「なんでもない!なんでもないからね!」

問いかける亀に、多少赤くなりながら叫ぶ美嘉。
亀はそれ以上問い詰めることはせず、しかし、どこか考えこむように目を細めた。
これ以上詮索されるのか。
それは、気恥ずかしい。
なんとか亀の気を逸らそうとした瞬間、亀が語りかける。

「美嘉様……太郎様の主である貴女様に、一つ伝えたい事があるのです」
「な、なに?伝えたい事って」
「私のことです」
「? あ、名前とか?」

デフォルメ亀のことを常に亀と呼称していた美嘉。
言われてみれば、浦島太郎において亀の名前は出てこなかったし、ライダーも亀のことを亀吉と呼ぶだけだ。
『煙の後に鶴吉になっちまった』という言葉。
ここからして、ライダーにとって『亀吉』とはは単なる亀の呼称に過ぎないのだろう。

「貴女様に教えておきたいのです。
 太郎様には言えなかった、私の真名を」
「……え、ライダーも知らないの?」
「はい、私の名は――――」

その瞬間、煙が湧きでた。
煙でむせ返ることはない、ただ、美嘉の視界を封じるだけの煙だ。
驚きながらも、美嘉は待った。
煙が晴れるのが待ち、すると、そこには一人の美女が居た。
濡れ羽色の緩やかな長い髪。
ツリ目だが優しい母性を感じさせる目。
艶やかな厚ぼったい唇。
均整の取れた肉体に、後から付け足したように不自然な豊満な胸と尻。
その不自然さが、淫靡なものへと演出している。
カリスマギャルである美嘉が、思わず気おくれてしまうほどの美貌。
『絶世の美女』とは、まさしく目の前の存在なのだろう。

「太郎様の『宝具』として召喚に伴いました」

その美女は、ゆっくりと唇を開いた。
その様すら、もはや色気の塊であった。

「『龍神、水底より見上げし夜天(リュウグウノオトヒメ)』と申します」

そこから始まった、浦島太郎と竜宮の乙姫の出会い。
すなわち、亀の姿を取っていた、乙姫とっての運命を変えた日のこと。




あの方は私の初恋なのです。

私は、水底より眺めるここではない世界に憧れていました。
私にとって竜宮城は世界の全てであり、そして竜宮城の主である私は世界の全てを理解してしまったのです。
だから、外の世界への憧れを膨らませました。
憧れが大きくなり、大きくなり、大きくなり。
自分でも制御出来ないほどの大きさになってしまい。

世界から弾き出されないために、亀へと姿を変えて。
力の全てを竜宮城へと置いて。
耐え切れない好奇心を抱いて。

私は、世界の外へと飛び出したのです。

しかし、そこは私が思っていたほどに美しいものではありませんでした。
空気は淀んでいました。
人と人が存在すれば生じる、感情と感情の諍いなのでしょう。
そんな当たり前のものでも、竜宮城でしか暮らしていなかった私には耐え切れないものでした。

そして、目に映るものは、人が人を虐げるその姿。

なんて醜悪なのだろう。
弱き者がさらに弱き者を虐げるその様は、この世へ嫌悪させるに十分なものです。
嘔吐の感情を抑えながら、失望だけを抱いて竜宮城へと帰ることを決意しました。
ただ、少し遅かったのでしょうね。
のろのろと陸地を動く亀の姿をした私を少年たちが見つけ。
手に棒を持って私を囲んだのです。
当然、叩き出しました。
殺さないように、しかし、確かに叩き出しました。
なんと醜いことなのか。
こんなものが存在しても良いのか。
良いわけがない。


――――失望が憎悪へと変わるその瞬間でした。


「なーにやってんだお前ら!」


――――本当に、突然にあの方が現れたのです。



「亀吉をイジメてんじゃねえよ!
 ダッセ!ほんとダッセ!」
「げっ、タロー!」
「自分より弱い奴は守ってやれって母ちゃんから習わなかったのかよ!」

「さっさとどっか行け!」との言葉とともに悪童達を私から遠ざけるのです。
その際にも悪童を怪我させるようなこともなく、声で怒鳴りつけるだけで。
私は鈍く続く痛みとは別に、不思議な心の暖かさを覚えました。

「おう、大丈夫か、亀吉」

あの方が、手を伸ばしてくれました。
しかし、失望と憎悪で不思議な感情を覆っていた私は、あろうことか、その手を弱くではあるが噛んでみせたのです。

「っ痛てえ!?」

警戒に滲んだ目で睨みつける私を、痛みのあまりに地面に転がるあの方。
警戒していることがわかったのでしょう。
あの方は、ただ何も言わず、魚を放り投げました。

「ったく、しっかり食っとけよ。
 食わねえからあんなガキにイジメられるんだ」

その日、結局私は竜宮城に帰りませんでした。
あの方のことが、気になってしょうがなかったのです。

翌日、同じ場所に居た私に、何も言わずに魚を放り投げました。
その翌日も、また翌日も、何日でも。
餌としては多いものでもありませんでしたが、あの方は魚と言葉を残してくれました。
汚いと思った世界の中でも、あの方は純真で綺麗でした。
何も知らないままで綺麗なだけだった私。
憎悪を覚えて汚れてしまった私。
そんな私とは違う、綺麗な人でした。
私は、憎悪の他に、もう一つの感情を知りました。
それが、恋でした。

だから、あの方は私の初恋なのです。
竜宮城で遊び続けた日々は、信じられないほどの幸福で。
だから、あの方が帰ると言い出したことが信じられなくて。
竜宮城の美味と美酒を与えて、玉手箱で鶴となることで『世界の裏側』への行き方を与えれば。
あの方は、私のもとに戻ってきてくれると思ったのです。
浅はかな考え。
あの方は、私との将来を真剣に考えていてくれていたのに。




惚気、とはまさしくこのことなのだろう。
百戦錬磨の美女と呼ばれても納得してしまう外見をした乙姫は、その外見とは裏腹にまさしく乙女そのものの様子で語り続ける。

「内面もそうですが、やはりあの方は外見も素晴らしく……」
「えっ……チャラくない?」
「そんなことはありません!」

美嘉の反射じみた言葉に、乙姫は豊満な胸を揺らしながら即座に否定した。
そして、頬に赤みを刺した、恍惚とした表情で語りを続ける。

「鍛えぬかれた、しかし巨大すぎない肉体……男らしく日焼けした淫靡な身体……」
「チャラいよね」
「普段は不敵な笑みを浮かべるのに、楽しい時の笑みはまるで童のような無邪気さ……」
「チャラいよね」
「女性に対してにこやかに語りかける柔らかさと親しみやすさ……」
「チャラいよね」

全てが『チャラい』としか思えないライダーのポイントも、乙姫にとってはこの世に二つとない者に映るのだろう。
乙姫は、ライダーに心底惚れている。
それは、同じ女である美嘉は理解できた。

「私は、なんと愚かなことをしたのでしょう……
 浅ましい独占欲に唆されて、あの方に大きな傷を残してしまいました……」
「言うほど傷なのかなぁ、アレ……」

独占欲。
すなわち人でなくすということ。
逃げこむ場所は竜宮城しかないと思わせること。
鶴となった浦島太郎と、亀へと変化出来る乙姫が幸せに暮らすための、乙姫の策略。
それが、あまりにも単純すぎるライダーはそれを乙姫の悪意と受け取ってしまったのだ。

「美嘉様……私はどうすればよいのでしょうか……」
「いや、私に聞かれても……困る……」

正直なところ、天然気味なお嬢様と頭の中身の無いチャラ男の恋愛相談など、本当に困る。

「そんな!
 美嘉様のような、百もの攻略法を持つ『恋愛ますたぁー』であれば、何か良い手段の一つや二つ――――」
「ちょっと待った!」

自身にすがる乙姫に、美嘉はストップをかけた。

「え、何、その、え?何?」
「この書物に、『カリスマギャル・城ヶ崎美嘉が語る男を虜にする百の方法』というのが――――」
「それライターさんが書いたやつだから!」

むしろ自分も読んでいる、と付け加える勢いで否定する。
城ヶ崎美嘉は恋愛マスターなどではない。
恋愛などしたことがない。
本当に恋愛は楽しいことばかりなのか、それとも辛いことばかりなのか。
その事実すらも知らない。
乙姫が訝しげな目で見てくる。
そんな目で見られても知らないものは知らないのだ。
なのに乙姫は、ハッ、とした表情で唇を震わせる。

「……まさか!美嘉様も太郎様を一目惚れ――――」
「流石にその勘違いは令呪使っちゃうぞ、亀吉」

冷たい否定に、逆に乙姫が真顔になってしまう。
そんな時だった。

「戻ったよ~!」
「戻んな!」

不意に扉を開けてくるライダー。
その扉を思いっきり締め直す美嘉。
そして、その瞬間に乙姫が亀へと姿を帰る。
恋愛の攻略法などさっぱりわからないが、恋心は理解できる。

『乙姫は亀であることをライダーに伝えたくない』ということは、なんとなく理解できる。

再び、ライダーが扉を開けた。

「あれ、今、乙ちゃん居なかった?」
「居るわけ無いじゃん、まだ聖杯手に入れてないんだよ?」
「そうですよ、太郎様。乙姫様が居るわけありませんよ」
「そっか、そーだよなー!」

深く考えずにライダーは答え、マイクを握った。
頭が痛い。
城ヶ崎美嘉は思った。


――――何がどうなって、こんなことになってしまったのか。




【クラス】
ライダー

【真名】
浦島太郎

【出典】
御伽草子

【性別】

【属性】
混沌・善

【ステータス】
筋力:E 耐久:E 敏捷:E 魔力:E 幸運:EX 宝具:EX

【クラススキル】
対魔力:E
魔術に対する守り。
無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。

騎乗:EX
騎乗の才能。
ただの漁師であるため馬にも乗れない。船には乗れるが、ほとんど0に近い騎乗能力。
しかし、『龍神の娘/亀』と、『調子』。この二つに乗ることだけは他の追随を許さない。

【保有スキル】
支援呪術:B+
敵対者のステータスを1ランクダウンさせる。
龍神である乙姫による呪術支援。

女神の寵愛:EX
龍神である乙姫の寵愛。
本来は神霊ということで宝具としても召喚が難しい乙姫を宝具として召喚することが出来る。
乙姫は、普段、現世に訪れた時と同じ亀の姿で召喚されている。

最果ての加護:C
最果て、すなわち世界の裏側に関する加護。
竜宮城は常世、すなわち永久に変わらない神域である。
あの時代においても、既に世界から世界の裏側へと行っていた竜宮城。
浦島太郎はその竜宮城に招待され、本来は生きられるはずのない場所で七百年間生き続けた。
故に、浦島太郎は世界の裏側に耐性を所持し、また、死後の世界での経験から即死能力への耐性も持つ。


【宝具】
『おいでませ竜宮城、良いとこだよ竜宮城(レッツ・パーリィータイム)』
ランク:A 種別:対祭宝具 レンジ:1-10 最大補足:100
乙姫が浦島太郎に送った秘宝の一つ。
竜宮城と繋がった袋から無限に食料と飲料を取り出すことが出来る。
不老の食物であり、この世のものでは比べ物にならない美味を誇る。


『卵が割れる、夢が還る(グッバイ・パーリィータイム)』
ランク:A++ 種別:対時宝具 レンジ:1-10 最大補足:100
乙姫が浦島太郎に送った秘宝の一つ。
厳重に封を施された玉手箱であり、中身は竜宮城で過ごした時間を詰め込んだ『浦島太郎の時間』そのもの。
この扉を開けることで浦島太郎は歳を取り、老人となり、老衰を迎える。

――――が、乙姫の加護により、玉手箱は、同時に『鶴へと変化させる』能力を持つ。
すなわち、千年の時を生きる鶴へと変化することで、老衰を避けることが出来る。

端的に言えば、幻獣の力を持つ鶴へと変化し、対魔力も大きく上昇する。
乙姫の加護により、再び浦島太郎の時間を玉手箱へと戻して人間の姿に戻すことが出来る。


『龍神、水底より見上げし夜天(リュウグウノオトヒメ)』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:1-10 最大補足:100
常世である竜宮城の主、乙姫そのものの宝具。
龍神である乙姫を召喚し、その権能を振るわせて戦わせることが出来る。
普段は魔力の消費を抑えるために亀の姿をしている。
ライダーが騎乗できるほどの大きさから、人形のようなデフォルメされた手乗りサイズにまでなれる。

海は海神である乙姫のテリトリーであり、自由自在に暴威を振るうことが出来る。
また、竜種として空を飛ぶことも出来る。

【人物背景】
『漁師の浦島太郎は、子供達が亀をいじめているところに遭遇する。
 太郎が亀を助けると、亀は礼として太郎を竜宮城に連れて行く。
 竜宮城では乙姫(一説には東海竜王の娘:竜女)が太郎を歓待する。
 しばらくして太郎が帰る意思を伝えると、乙姫は「決して開けてはならない」としつつ玉手箱を渡す。
 太郎が亀に連れられ浜に帰ると、太郎が知っている人は誰もいない。
 太郎が玉手箱を開けると、中から煙が発生し、煙を浴びた太郎は老人の姿に変化する。
 浦島太郎が竜宮城で過ごした日々は数日だったが、地上では随分長い年月が経っていた』

という御伽話でお馴染みの浦島太郎。
大筋は間違っていないが、御伽話では分からない浦島太郎という男の実体はひたすらチャラい兄ちゃん。
チャラく、チャラく、チャラい。
また、労働意欲がないわけでもないが、働かずにひたすら遊び続けることが出来るという天性の才能を持っている。
普通ならば「いい加減働かなければいけないのでは?」「自分だけが遊び続けて、給仕の人たちに悪いのでは?」という考えが浮かばない。
ただ、遊んでいいと言われたら何処までも遊び続けることが出来る生粋の遊び人。
七百年後に家に帰ると言い出したのも、乙姫と結ばれるために両親に紹介したかったというだけのことである。


『他人の家で飲み食いし続けただけ』で英霊へと上り詰めた稀有な男である。


【特徴】
冬にもかかわらずアロハシャツを着て海パンを履き、脱色した髪と日焼けした肌はまさしく丘サーファーそのもの。
身長は高く、元漁師ということで筋肉もついている。


【マスター】
城ヶ崎美嘉@アイドルマスター シンデレラガールズ

【能力・技能】
秀でたダンススキルと歌唱スキル、ファッションセンス。

【人物背景】

「はじめまして★城ヶ崎美嘉だよー。
 アイドルだろうと何だろうと、どうせやるならオンリーワンよりナンバーワンになりたい!
 ってことで、一緒にトップアイドル、目指そうね!」

パッションタイプのレアアイドル。ゲーム内での性能は優秀な特技に恵まれた守備型。

通称:城ヶ崎姉、姉ヶ崎。
ゲーム内では双海真美、双海亜美以外では唯一の姉妹アイドルである。
容姿や服の着こなし方からしてギャル風だが、根は良い子。
日常会話中に妹(城ヶ崎莉嘉)とメールのやり取りをしてことから姉妹仲は良好で、妹のCDドラマからもその仲の良さは窺い知れる。
妹曰く、カッコよくて優しくてオシャレで、お菓子を買ってくれて着なくなった服もくれるとにかくすごい人。
ちなみに勝手に自分の服を着て出かけられたりすると怒るらしい。
あと虫嫌い(※妹のカブトムシネタの影響もあるが、大抵の女の子は嫌いです)

特訓後は制服からきわどい格好のアイドル服に衣装チェンジ。この格好だとお腹が冷えるらしい。


【マスターとしての願い】
今は思い浮かばない

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最終更新:2016年09月04日 11:05